タイトル | あした輝く |
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原作・漫画 | 里中満智子 |
出版社 | 講談社 |
第二次世界大戦の終わり頃、当時
満州と呼ばれていた中国の地で
裕福に暮らしていた少女と青年が
メインとなる物語ですが、戦後
子供たちの成長や恋愛についても
描かれている作品です。
戦争下での哀しい出来事や、子供の
一人は死んだ恩師の娘であることからの
親子関係についてもふれています。
あした輝くのあらすじ紹介
満州で育った今日子は、病院の娘である
ことから、当時満州に駐留していた
衛生兵の速水香と出会います。
二人が恋をする過程で香の上司の
横やりが入ったりする中、日本が
負けて終戦を迎えます。
香の子を妊娠している今日子は、
戦後の日本へ帰る混乱の中、香と
離れ離れになります。
数年後香が帰ってきて、未来が
生まれ幸せな4人家族となります。
時代は移り変わって、物語の中心は
明日香の人生になります。
そこで描かれる明日香の苦悩などが
後半の見どころです。
あした輝くのネタバレと今後の展開は?
今日子は香の子を妊娠していましたが、
帰りの船で流産してしまいます。
一緒に日本へ帰る予定だった
恩師緑川は、船の上で子供を産みますが、
ここまでの苦労があり、出産後
亡くなります。
香と生まれてくる予定だった子に、
つけようとした名前明日香と名付け、
戦後の混乱している日本で育てます。
後半の主流は、この出征の秘密を
知った明日香の人生を縦軸に
書かれて行きます。
学校の先生同士の子供である
明日香はとても成績が良く、妹の未来は
少し勉強が苦手な女の子に成長します。
そのため、未来は姉へのコンプレックスから
わがままで反抗的になってしまいます。
明日香は自分がこの家の子供ではない
ことを知っているので、普通の姉であれば、
厳しく妹に接するところですが、
明日香にはそれが出来ません。
未来のわがままは、恋をすることで、
恋した相手にたしなめられて
だんだんと素敵な女性に成長します。
遠慮することばかりの明日香も、
自分の人生の中で大切な人を見つけ、
前に向かっていくところで終わります。
あした輝くの読んでみた感想・評価
この作品は、国語が好きな人には
嬉しい作品です。
里中満智子先生はのちに万葉集の時代の
額田王などの話を漫画化していますが、
明日香の本当の母親である緑川先生と
夫の恋のやり取りは万葉集の和歌を
使ったモノだったりします。
そして今日子と香の出会いも、まるで
島崎藤村の詩集から初恋の場面を
思い出させるシーンもあって、国語が
好きな人にも、知識を得たい人にも
いいのではとも思います。
もちろん、満州と言う存在、終戦後の
人々の暮らしなどが少女漫画で書ける
レベルで書かれていて、あの時代は、
どんな感じだったのかを知るための
一つの参考資料としても
いいのではないかと考えます。
この作品自体は1970年代に書かれた
作品なので、若干の古さはありますが、
時代背景が戦後なので、
そんなものだろうと受け入れやすいのでは
ないかと思います。
またこの時代の漫画にはよくあるパターンの
わかりやすい悪役も出て来て、それに
耐える主人公というのも時代を
感じさせる点です。
あした輝くはこんな方におすすめな作品!必見
戦争を舞台に哀しい人生を背負ってしまう
人を描いているので、戦争がどれほど
人の人生に重い荷物を背負わせて
しまうのかを、知って欲しいので
多くの人に読んでほしいです。
そして主人公今日子は、今日よりも
あした、輝こうという作品のテーマ通りに
明るく前向きに生きています。
何か悩んで辛いとき、この漫画に
出てくる前向きな今日子と、何かに
気を使って自分を主張できずにいる
明日香の姿から、何かが学べるのでは
ないかと思います。
二人の女性を対比しながらでも
いいですし、それぞれの女性の
あり方について学ぶのもいい
材料ではないかと思います。
この作品は浅田美代子さんが
今日子役で映画化されています。
あの時代をなつかしく思う人にも
うれしい作品です。
朝ドラ、花子とアンなど終戦後の
女性の生き方などが好きな人にも
いいと思います。
花子とアンは、漫画化もされているので、
漫画で読みたい人にはこちらも
おすすめです。
また里中満智子先生は積乱雲という
マンガで、特攻隊についても
描いていますのでそちらを
読んでみるのもいいかもしれません。