タイトル | あとかたの街 |
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原作・漫画 | おざわゆき |
出版社 | 講談社 |
昭和19年太平洋戦争末期。
物資入手困難、食糧不足、家族離散、
国家総動員…。
そして空襲が激化した戦争末期の日本を、
名古屋に生まれた12才の
少女 あいはどう生き抜くのか。
第44回日本漫画家協会賞
大賞受賞の名作。
あとかたの街のあらすじ紹介
昭和19年太平洋戦争末期。
名古屋の一般家庭に生まれ育った
少女 あいの平凡な日常にも、
戦争の足音は確実に忍び寄っていたーーー。
戦況の激化と言っても、
いまいちピンとこないまま
日々を暮らしていた主人公あいを
戦火が容赦なく襲う。
学童疎開、軍事教練、大地震、
そして空襲…たった12才の少女にとって、
戦争とは一体何だったのか。
友や恋人を亡くし家族と離れ
家は焼け出され…、それでも生き残った
あいの、終戦への思いとは。
実際の名古屋大空襲の体験談を元に
描かれた小市民にとっての戦争の真実。
あとかたの街のネタバレと今後の展開は?
舞台は昭和19年太平洋戦争末期の日本、
愛知県名古屋市。
主人公 木村あいは
国民学校高等科に通う12才。
ごく平凡な一般家庭に生まれ、
4姉妹の次女としてマイペースで
妹思いな女の子に育っていた。
国家総動員で戦争に取り組む中、
小市民であるあいの一家は、
物資が貧しいながらも生活を工夫し、
ご近所と協力しさまざまなものを
のりしろに日々を繋いでいく。
厳しい軍事教練や食料困難、
工場爆撃、かつての友人は
軍国主義に傾倒し、
大事な妹は学童疎開先で
劣悪な環境に置かれ…。
少女あいの平凡な日常も
だんだんと戦争の色に染まって行った。
そんな中あいは近所の未亡人・
波多野さんの甥である、
猿渡洋三(中学2年生)と出会う。
洋三は自分の置かれた状況を
理解しながら、貴重な男手として
自分に出来る事を懸命にこなし、
明るく逞しく笑顔で生きていた。
戦争の激化に加え東南海地震まで
起こり、厳しい状況の続く名古屋で
あいは洋三と共に過ごし、
二人は戦争が終わった未来に
結婚の約束をする。
そして名古屋大空襲の夜。
戦火から逃げ惑う道中で
焼夷弾に体を貫かれ、
洋三はあいの目の前で亡くなる。
なんとか空襲を生き延びたあい
だったが、家は焼け、
あたり一面焼け野原となり、
もう名古屋にはいられない。
一家は岐阜の遠い親戚を訪ね、
そこで終戦を迎えることになる…。
あとかたの街の読んでみた感想・評価
戦争の悲惨さに否応なく巻き込まれて行く
ひとりの少女の苦しみは、
平和な現代に生きる自分には
想像もできません。
しかしこの作品で名古屋大空襲の戦火を
生き残った主人公あいは
作者のおざわゆきさんのお母様が
実際のモデルという事で、
一般市民にとっての戦争が
どんなものであったか、
戦争が前提にある日常とは
どんなものかを主人公の目を通して
私たちも体験しているかのように
感じられるリアルな作品です。
残酷な戦闘シーンや命の尊さを説くような
派手な表現はなく、たとえどんな状況でも
家族という単位で日常を続け、
その中で運悪く爆撃に巻き込まれれば
死ぬ、大事な人を亡くし発狂しても
それは周りに溢れている
沢山の叫びの中の一つに過ぎない…。
もし自分の家族や好きな人を亡くしたら
数ヶ月は立ち直れないであろう
現代人の私にとっては、
死が身近にあった時代の命の温度の
違いが印象的でした。
親には常に敬語で
お父さんの言うことは絶対。
親に何でもかんでも
質問できるわけではない、そんな、
現代では考えられないような親子関係も、
昭和の時代を感じさせます。
あとかたの街はこんな方におすすめな作品!必見
戦争物が好きな方には勿論、
小中学生の平和教育にも
推薦できる作品です。
12歳という若年の少女を主人公に
描かれているため、もしも今
この国が戦争をすることになれば、
自分たち一般市民は
どんな日常を送ることになるのか、
私たちの曾祖父母はあの頃
どんな生活を送っていたのかを
具体的に知ることができます。
派手な戦闘シーンはないものの、
当時の庶民の生活事情が細かく
描写されており、
他作品にはなりますが
「この世界の片隅に」を楽しめた方には
特にオススメです。
当時の服装や身の回りの小道具、
子供達の遊び道具ひとつ取っても
史料に忠実であり、
絵で現されているため文字で
説明されるよりも分かり易いです。
4巻丸々一冊を使って描かれた
名古屋大空襲は本当に鬼気迫る状況の中、
炎に巻かれながら命からがら何とか
生き延びた、作者のお母様の実体験が
リアルに描かれていて
読んでいるこちらも思わず
息を止め手に力が入ってしまう臨場感です。
あとかたの街は、作者おざわゆきさんの
お母様の戦争体験を元に
描かれたお話ですが、
おざわさんのお父様もまた
シベリア抑留から生還された
戦争体験者であり、
そちらの壮絶な体験を綴った
「凍りの掌」も大変な傑作です。