タイトル | おしゃべりなアマデウス |
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原作・漫画 | 竹内昌美 |
出版社 | 小学館 |
幼少の頃、事故で両親を失った
碧川理緒。
母の親友である実穂子の家で、
我が子同様に育てられてきましたが、
幼友達の羽宗の帰国をきっかけに、
理緒のバイオリンは習い事のレベルから
本格的な演奏へと変わっていき……。
演奏者のモチベーションや環境など
演奏の出来を左右する要素を
余すところなく描いてみせた、
意外な展開も面白い、
本作音楽漫画です。
おしゃべりなアマデウスのあらすじ紹介
有名音楽家の両親を持ち、
自らも非凡なセンスを見せていた
碧川理緒。
不幸な事故で両親を亡くしてからは
母の親友だった実穂子の家で
我が子同然に育てられましたが、
理緒が帰国した実穂子お息子
羽宗の勧めもあり音楽科受験を決めると、
「母娘」の関係は一変します。
以前とは別人のようになった実穂子は
「娘」の活躍を喜ぶどころか
事あるごとに妨害すらしますが、
理緒は高い集中力でそれらを乗り切り、
また実穂子を恨むようなことは
一切なかったのでした。
おしゃべりなアマデウスのネタバレと今後の展開は?
かねてから同門だった、
碧川千明と緒方実穂子。
ずっと後になっても親友としての
付き合いを続けている二人は、
碧川夫妻がヨーロッパの演奏団に
選ばれたことの祝いの席でも、
顔を合わせていました。
一方、千明の娘である理緒は、
その宴席の中で、
まるでおしゃべりしているような
モーツァルトのアマデウスを
幼いながらも披露してみて、
集まった大人たちを喜ばせます。
しかしその喜ばしい日の帰り、
理緒たちは事故に遭ってしまい、
碧川夫妻は娘を残して、
亡くなってしまいました。
その状況と痛みに苦悶する
理緒に手を差し伸べたのが
実穂子とその息子、羽宗でした。
実穂子は理緒を我が子同然に養育し、
羽宗と理緒は一緒にバイオリンを習い、
平和な日常を過ごしていきますが、
アメリカから帰ってきた羽宗は、
理緒が音楽高校に進まないと知り
激しく動揺し、声を荒らげます。
とは言え、元々単なる
習い事のつもりで弾いてきた理緒と
そんな理緒を音楽科に進ませるのに、
賛成しない実穂子でしたから、
意見の一致がある感じでした。
しかし理緒は羽宗の一言で、
受験してみようと内心思い、
下見に来た沢村学院で、
演奏のリクエストを受け、
演奏してみることに。
元々「本気」ではない理緒の演奏は
「町の教室の発表会なら」という
そこそこのレベルでしたが、
羽宗のアドバイスで状況が一変、
素晴らしい演奏を披露し、
周囲を騒然とさせます。
しかし実穂子は受験に大反対で、
以前とは違うソリの悪い日々が
続くことにもなってしまうのでした。
おしゃべりなアマデウスの読んでみた感想・評価
平和なオープニングから
いきなりの悲劇、そして日常の
急変と、変化の要素が豊富でしたね。
音楽家の娘に生まれ、幸せな
一生を過ごす思われながら、
大事故で両親を亡くし、
しかし母の親友である実穂子さんを
育ての母としてすくすく育つ理緒。
ぱっと見の家庭環境では、
理緒は悲しみを乗り越え成長する
元気な少女にしか見えませんが、
羽宗すら気付かないところで、
実を結んでいた悪意には
正直背筋が冷たくなりました。
そしてその悪意が、
天才である理緒の
音楽家としての芽を、
完璧に潰しかける手前だった、
怖すぎる事実に負けないほど
実感がこもっていたんですね。
また、様々なことを味わいつつも
成長していく理緒の音と、音楽に
向き合っていく姿勢が、
どんどん良くなっていくという
本作の見所が絵だけでも分かる
説得力があったのも良かったです。
心理的な裏切りが多々あったりと
展開は同種の作品と比べても
かなりハードなものなのですが、
「音楽」に関する部分だけは
とにかくストイックで集中しており、
その部分にも惹かれました。
一見クールなものの、強烈な
自信とそれを裏付ける努力を
続ける羽宗など、
主要キャラの魅力がある部分も
熱さを感じることができました。
おしゃべりなアマデウスはこんな方におすすめな作品!必見
どんなジャンルにせよ才能は重要ですが、
特に努力ではどうにもならない部分を
非常に多く持っているのが、音楽、
特にクラシック系の音楽だと
考えられていますね。
また、同じ「センスがある」としても
その中にも非常に多くのグレードがあり、
どうしてもほとんどの人が途中で、
プロの道を諦めるのがクラシックです。
本作でもまた、才能の発揮の有無が
とても多くの比重を占めていますが、
単に弾いてみたらできたではなく、
力を出し切るには環境や思い、
そして教える側のモチベーションも、
重要としている独自性があります。
例えば、主人公の理緒の場合は、
演奏家の娘で幼少からバイオリンを
弾きこなしていた素養がありつつも、
演奏家にさせたくない実穂子さんの
意向が働いていた時はお稽古事レベル。
しかし羽宗たちのプロ意識に触れ、
さらに集中し切った時は
プロ志望者の中でも抜群と、
極めてはっきりした形で、演奏に
最も大切な精神面での違いを
描写しているんですね。
極端な感じにも見えますが、
実際に音楽をしたことがあったり、
創作に情熱を傾けた方なら、
確かにその通りだと思える描写が多く、
経験者にも向いた一作だと
読んでいて印象を受けました。
また、それと同時に、様々な
ショッキングが出来事が起こったり、
キャラの表情も豊かなので、
未経験者でも存分に音楽の面白さを
体感できる仕上がりだとも思います。