タイトル | この世を花にするために |
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原作・漫画 | 松本ドリル研究所 |
出版社 | 日本文芸社 |
とある過疎の村で自由奔放に生きてきた
ロボット好きの少年・良太郎が
出会った美少女は、
憧れのロボットパイロットだった!
その樹の下で出会った2人は
結ばれるという伝説をもつ荘厳桜、
そこで最悪の出会いをした2人は
東京で偶然再会するが、
そこで正体不明の異生物との
戦闘に巻き込まれる。
純粋無垢な少年と
ツンデレ美少女が織りなす
恋と戦いの物語が、
桜舞うなかで今開始される!
この世を花にするためにのあらすじ紹介
過疎の村に暮らす浅野良太郎は、
両親代わりの姉たちに囲まれて
自由奔放に生きてきた。
周囲が呆れるぐらいのロボット好きで、
村の公民館広場にロボットが
来ているという話を聞くやいなや、
夕暮れが迫りつつあるなかも、
かまわず家を飛び出す。
その場所は、
荘厳桜という村の名所のそばであり、
ついでに桜の様子をみてくるように
姉から言いつけられた良太郎は
桜のふもとに立ち寄る。
マスコミに取り上げられて
人が押し寄せるようになり、
樹木保護のために
周囲に紅白幕を設置し
立ち入りを
制限するようになった
荘厳桜だが、
良太郎には
切ない思い出があった。
一年前、
幼馴染の美少女・千鶴から
突然の告白を受けた場所。
始めて女の子を意識した千鶴は
良太郎の返事を聞くことなく、
東京へ出て行ってしまった。
自分も東京へ出ることを決め、
千鶴のことを思いながら
紅白幕の状況を
確認して歩いていたが……。
その際にうっかり「事故」を
起こしてしまった良太郎は、
そこで栗色の髪をした
美少女・森野うさぎと
「最悪の出会い」をすることになる。
うさぎと、
そのそばにたたずむ
ロボット……
バイペットトルーパー「タヂカラオ」に
目を奪われる良太郎。
桜舞い散るなか出会った2人、
荘厳桜には伝説があり、
この樹下で
忘れられない出会いをした男女は
必ず再会し、添い遂げるという……。
そして、
高校進学のため
上京した良太郎は、
ひょんなことから
巻き込まれた上野での花見の席で
うさぎと再会する。
が、宴の席を壊すように、
黒い球状の毒性空間
「マクスウェル空間」を発する
謎の石柱「ピラー」と
人類の敵である
異生物「アスラ」が出現。
うさぎは単身タヂカラオで迎撃するが、
その力の前に圧倒され負傷してしまう。
危機的状態に陥るうさぎだが、
コクピットに同乗した良太郎が
操縦を代わりアスラと戦う。
しかし、
ソーマと呼ばれるエネルギーが
流れる生体兵器であるタヂカラオの
操縦には対応装備が必要だった。
それをつけていなかった良太郎は
アスラへの一撃と引き換えに
ソーマの逆流を受け
瀕死の状態に陥ってしまう。
目を覚ましたうさぎは、
死に瀕した良太郎を救い出すため、
身体を張った「接触」を強行。
消えかけてた
命の灯を再びともすことに成功し、
同時にアスラを撃破した。
翌朝、
姉から申し付けられていた
東京での下宿先「双葉寮」に
ついた良太郎は、
そこがバイペットトルーパーを運用する
警察の女子寮だったことを知り……。
この世を花にするためにのネタバレと今後の展開は?
バイペットトルーパーは
EDFという地球防衛組織から
各国警察機関に貸与され
運用するという形をとっている。
日本では
警察庁の機動隊に配備・運用されており、
うさぎはその新人パイロット。
また、一年前に上京していた千鶴も
この部隊に配属されており、
双葉寮で良太郎と再会することになる。
この世界では
バイペットトルーパーに対する
適正検査(血液検査)が
14歳の少年少女すべてに行われ、
15歳になった合格者に
通知されるようになっているが、
良太郎は不合格だったうえ
その実態を全く知らなかった。
にもかかわらず、
故郷で目の当たりにした
タヂカラオの姿に感銘し、
そのパイロットになることを
目標にしていたため、
そのことを親友である
希矢雄から告げられ、
一時は茫然自失となる。
しかし、姉たちから
東京での下宿先に指定されたのは、
そのパイロットが集う
女子寮である「双葉寮」。
男子なのに「寮母」として
パイロットたちの世話をする傍らで、
タヂカラオのパイロットとしての
能力を徐々に開花させていくことになる。
一方、
何故姉が下宿先として
双葉寮を指定したのか、
また、
良太郎とアスラ、
そして
失踪したとされる父・長政との関係が
次第に明らかにされていく。
この世を花にするためにの読んでみた感想・評価
これでもか!
というぐらいに
様々な要素が盛り込まれた、
いい意味での
「過剰サービス」的な作品である。
基本は「美少女+ロボット」であるが、
「SF」要素はもちろんのこと、
「ボーイミーツガール」要素、
「ツンデレ」要素、
「鬱展開」要素、
さらに「エロ」要素に至るまで、
あらゆるニーズに
応える物語が展開されている。
これが「美少女+ロボット」系に
強い(と思われる)、
KADOKAWA系ならともかく、
「任侠」「グルメ」
「大人のハードな絡み」を中心とする
「ゴラク」を擁する日本文芸社が
取り上げているというのは、
ある面驚きもある。
作者である松本ドリル研究所氏が
あとがきでも書いているが、
他誌では相手にされなかった
この作品の企画について、
日本文芸社の編集さんは
即断でOKを出してくれたという。
ただ、「エロ」要素に関しては、
確かに「ゴラク」で扱う
レベルの高さが見て取れる。
他では(特に少年誌系)では
こうはいかないだろう。
それでいて、
それ自体も物語の歯車の一つとして
ちゃんと機能しているのが
すごいところである。
SF系要素も思った以上に
ちゃんと設定が練られており、
張り巡らされた伏線は
謎解き要素も加味されており、
来るべき最終回に向けて
楽しみなところの一つでもある。
また、さらに注目すべき点は、
過去発表されたあらゆるジャンルの
作品に対する「リスペクト」がすごい、
ということである。
そして、それらがちゃんと
物語の要素として機能していることに
この作品の力量のようなものを感じる。
この世を花にするためにはこんな方におすすめな作品!必見
ロボットものが
好きな人は言うまでもない。
しかしこの作品は
それ以外の意外と幅広いジャンルの
愛好者に対してお勧めできると思う。
いろいろな作品の「リスペクト」要素が
かなり強く物語に出ているが、
それらは単に
素材としてちょっと使った、
というレベルではなく、
きちんと作品の中で
昇華されている。
例えば、
主人公たちの所属する部隊は
「パトレイバー」シリーズ、
良太郎とうさぎの
キャラクター及び行動パターンなどは
「エヴァンゲリオン」、
さらに細かいところを追及していくと
数限りない作品と
邂逅できる可能性を秘めているので、
それらを探りながら、
またどのように
リスペクトしているのかを
確認しながら読み進めていくのも
面白いかもしれない。
ところどころにあえて、
過去のアニメのキャラなどが
突如登場させているのはご愛嬌。
それもこの作品の楽しみであると思う。
少しエッチなものをみたい、
という人には
かなりのサービスをしていると思う。
その点はさすが
「ゴラク」系連載だと感心する。
また、SF要素に関しては
アニメやコミック以外に、
「マブラヴ オルタナティブ」を
想起させるようなところもあり、
ゲーム原作や
それに関連する作品が好き、
というような人にも
お勧めできるかもしれない。