タイトル | どうせもう逃げられない |
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原作・漫画 | 一井かずみ |
出版社 | 小学館 |
就職までのつなぎとして
バイトに入った事務所の社長は、
目の前で修羅場を演じていた、
超身勝手系男子で……。
社長と社員というオフィスラブの
定番を描きつつも、リアルな企業の
「黒さ」にも踏み込んでいる、
新感覚の企業恋愛漫画です。
どうせもう逃げられないのあらすじ紹介
就職試験に受からず、
派遣とバイトで食いつなぎ、
夢はOLと言い切るなほは、
本決まりになるはずの
就職までのつなぎとして
デザイン事務所のバイトとして
働き始めます。
しかしそこの社長向坂は、
相手の気持ちをまるで考えず、
毒舌を使ってくるような
厄介な性格でした。
もっとも夢のOLが
間近になっているなほは、
辞めずに働き続けますが、
同じ受験生である島津に
騙されたために
就職の話が流れてしまいます。
そんな経緯から正式に
デザイン事務所の一員として
働き始めたなほでしたが、
向坂たちがやる仕事の
レベルは非常に高く、
一筋縄ではいきませんでした。
どうせもう逃げられないのネタバレと今後の展開は?
24歳の野田蔵なほの夢は、
「OLになる」こと。
なかなか波に乗れずに就職できず、
派遣で食いつないできましたが、
契約の関係で仕事がなくなり、
デザイン事務所の短期バイトに
応募したのでした。
面接の一時間前に現場到着、
しかもリクルートスーツ着用と、
強力な気合いを見せるなほの前で、
いきなり男女の修羅場が
始まってしまいます。
自分を裏切り、携帯にも出ないという
男性を前にして、女性は
感情を爆発させますが、
男性は「誘ったのは向こうだ」と、
あまりにも不配慮な対応。
しかも近くにいたなほを見るや、
「俺はこの娘と付き合う」と、
抱き寄せてきました。
これには女性は完全にキれてしまい、
持っていたカバンで殴りかかります。
その一撃からなほをかばった男性は、
代わりに顔を腫らせてしまいました。
守って貰ったなほですが、男性の
身勝手な態度には我慢できず
感情をぶつけてしまいますが、
実はその男性こそ、
バイト志願先の社長の向坂でした。
採用自体はすぐに決まり、
その日から経理担当として
働き始めたなほですが、
向坂はからかう癖があり毒舌で、
なほが夢見るOL像にも
否定的な態度を取りました。
そんな中なほは街角で、
同じ入社試験を受けている
島津に会います。
島津は面接の日取りが
変更になったと告げますが、
向坂はそれを嘘だと言います。
なほは本気で怒り、向坂に
謝罪させますが、後日
かかってきた電話によって、
自分が島津に騙されて、
採用試験に落ちたことを
知ることになるのでした。
どうせもう逃げられないの読んでみた感想・評価
社長と従業員のラブという、
定番ジャンルでありつつも、
リアルなブラック企業の実像など、
キツい部分も見えるのが斬新でした。
第一に言えるのは、主人公のなほが
本当に素晴らしいということですね。
色々と社会人として未熟で
至らない部分はありつつも、
電話を暗記できる能力など、
地味ながらも嬉しいスキルを有する上、
何より人柄が素晴らしいです。
時に素直で優し過ぎる面があり、
そのために色々騙されたりと
辛い思いもすることがありますが、
そんな彼女だからこそ、
不器用でへそ曲がりな向坂さんも
心を開いていったのでしょう。
しかし、この世知辛い世の中、
純粋過ぎるなほが生きるには
なかなか大変な部分もあります。
試験の日程に関して、
平気で騙しを入れてくる受験仲間や、
明らかに異様だと分かるはずなのに
試験を打ち切ってしまう企業、
街頭でのキャッチセールス等々。
とにかく自分さえ良ければ
万事OKじゃないか的な、、
ブラック企業の論理で動く人が
本作には実に多く出てきます。
そんな彼女を「守る」立場の
向坂さんにしても、
相当ブラックです。
デザイン事務所の社長なのに、
イラストの仕事を振った社員を
問答無用でクビにするという
超強烈な俺ルールを持っています。
他にも採用記念の名刺で、
なほの名前をからかったりと
訴えられたら多分、
余裕で惨敗してしまいそうな
リアルな嫌さを展開しています。
しかしそんなブラック面を持つ
大人たちもいつも厳しいわけでなく、
だからこそなほに優しく接し、
逆になほの優しい心で
頑なな態度が軟化したりもします。
そうしたリアルな部分があるからこそ、
なほを応援したい気持ちもまた
強まっていきましたね。
どうせもう逃げられないはこんな方におすすめな作品!必見
中学を出て進学して、やがて一般企業に
就職する、というのは、女性にとって、
かつてはOLとして憧れられましたが、
高学歴化が進んだ今となっては
至って普通の選択肢ではあります。
とは言えちょっと受験に失敗したり、
タイミングが悪かったりすると
なかなかルートに乗るのは難しく、
本作の主人公、なほも、
夢は正社員という状況でした。
しかし、対外的にはバイトでも、
有名な事務所で役割をこなすことは
結構あるもので、
バイトから正社員になることも
決して少なくありません。
本作で見られる「逆転劇」は
非常にリアルだと言っていいでしょう。
また、就職先の社長である向坂は、
人に気持ちに寄り添うタイプではなく、
暴言は吐かないもののかなり平気で
パワハラ的対応をしてくる人であり、
今時系のオラオラ系社長として
とても説得力があります。
一方、向坂がしょっちゅう女性に
ぶっ飛ばされていたり、
採用試験で仲良くなった受験生が、
完璧にいい人ななほを
陥れてきたりと、フィクション的な
強烈な展開も満載。
この「あるある」と「まさか」の
絶妙なバランスが、独特の
存在感になっているんですね。
必然性のある圧力型の社長や、
守ってあげたくなるタイプである
なほの活躍を満喫したい方には、
非常に優れた一作だと言えます。
特に対外的には真面目な上司の、
妙なところでの気難しさなど、
オフィスの「困った系」の部分を
赤裸々に描いているのは
漫画として面白かったですね。