タイトル | ましろのおと |
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原作・漫画 | 羅川真里茂 |
出版社 | 講談社 |
伝説の名人だった祖父、
松五郎の津軽三味線を聞いて
育った澤村雪。
なぜ祖父は引き続けたのか。
自分はどうして
津軽三味線を弾くのか。
祖父のものではない、
自分だけの音とはなにか。
祖父の死後、自分の音を見失った雪が、
上京、高校入学を経て
初めてともに弾く仲間と出会い、
自分の音を求めて成長していく物語。
ましろのおとのあらすじ紹介
祖父松五郎の津軽三味線とともに
育った澤村雪は祖父の死後、
自分の音を見失ってしまう。
喪失感を抱えたまま上京し、
そこでグラビアアイドルを目指す
ユナと出会った。
ユナの彼氏でバンドヴォーカルの
タケトとも知り合い、
共演することによって雪は、
自分の弾きたいもののきっかけを掴む。
その後、とある事情により
再び高校に通い始めた雪は、
そこで津軽三味線同好会の唯一の
メンバーだった前田朱里利に誘われる。
始めは乗り気ではなかった雪だが、
そこで初めて仲間と一緒に弾くという
経験をする。
ともに演奏する仲間、
同じように津軽三味線が好きで
引き続けているライバルそ存在に、
それまで祖父と兄しか知らなかった
雪の世界が大きく変わっていく。
それは同時に、
雪の中の音の変化でもあった。
ましろのおとのネタバレと今後の展開は?
たった一人の同好会メンバー前田朱利が
津軽三味線を始めようとしたのは、
祖母が昔聞いたという曲をもう一度
聞かせてあげたいと思ったからだった。
それは雪の祖父が弾いた
「春暁」という曲だった。
それは祖父が生涯をかけて完成させた
曲であり、雪には自分に弾けるとは
とても思えないものだった。
雪は朱里に頼まれ、
正直自信などなかったが、
彼女の祖母の前で「春暁」を弾く。
自分ではまだまだ祖父の追い付かない
ことはわかっていたが、
自分なりの「春暁」を弾いた。
祖父を思い出したがら弾いた
「春暁」は朱利の祖母に喜ばれる。
雪はそこで自分の音のイメージを
少し掴んだような気がした。
雪の津軽三味線同好会はなんとか
メンバーをそろえ、
全国大会に出場する。
そこでは九州や関西の同じような
チームが出場し、雪はそこで
自分以外の同年代の演奏者と初めて出会う。
津軽三味線全国大会は残念ながら
団体優勝はできなかったけれど、
そこで今まで興味のなかった大会に
出ることで雪に変化が現れる。
人に評価されることに
興味はなかったが、
それでも自分の音を聞いてもらえることに、
意味を見出していく。
もっとたくさんの人に
津軽三味線を聞いてほしい。
そう思った雪は、その思いを
かなえるために学校を辞めて、
津軽三味線だけで生きていこうと決意する。
ましろのおとの読んでみた感想・評価
雪くんが、口下手だけど
ほんのりと優しくて、デリカシーがなくて、
天然たらしで、行く先々の女性と
いい雰囲気になります
(でもそれ以上は進みません)
なんとかじっちゃん(松五郎)のように
弾きたい、もっともっと自分の音を
弾きたいとひたすら道を追求する
雪の姿はとても、切なくて一途です。
その反面、周りはとても賑やかで、
雪の母である梅子をはじめとして
とにかく騒がしい。
雪の立場も安穏というわけではなく、
当然のように、当代一の人気実力者
神木清流に目をつけられたり、
同年代の圧倒的な実力者田村聡一に
一方的にお友達認定されたり、
聡一の妹の舞には一方的に
ライバル視されたり、
本人のその気は全くないのに
いろんな人に
ちょっかいをかけられます。
かといって振り回されている
わけでもなく、どちらかといえば
雪が人を振り回す方かもしれません。
頑固です。
たくさん登場人物はいるのですが、
悪い人はいません。
みんな一生懸命に自分の音を求めて
正直に進んでいるという印象です。
けして性格のいいひとばかりでは
ありませんが。
なかなか結果が出なくて、
もどかしい気持ちで、
あがいてもがいているところは
誰にでもあるのではないでしょうか。
それでも雪が心から演奏するところを
読むと、まるでその曲が
聞こえてきそうな気がします。
そしてそのたびに雪は、
何かを掴んで成長してくのです。
ましろのおとはこんな方におすすめな作品!必見
津軽三味線に興味がある、
民謡に興味がある方には
いいと思います。
津軽三味線の大会だけではなく、
伴奏者として、民謡の大会に出る
ところなども描かれています。
また中で民謡を謡うシーンも
あるのでなじみのあるかたには
よいのではないでしょうか。
また音楽がモチーフになっている
漫画が好きな方ならぜひとも
おすすめしたいです。
優劣を決める話ではないので、
ひとりひとりの思いが
そのまま表現につながっているので、
人物描写が丁寧な話を読みたい方。
さらにこれから音楽一本で
生きていこうという若者の話にも
なっていくので、
若干サクセスストーリーの
雰囲気も出てきました。
そういうところが
好きな人にもおすすめ。
あと、方言好きな方。
青森出身者がたくさん出てくるので
青森の言葉の応酬が多いです。
さらに各地出身の民謡歌手の方も
でてくるので、時々各地の方言が
飛び出します。
邦楽つながりなら
「この音とまれ」などもおすすめです。
また同時期に同じ月刊少年マガジンで
恋愛していた「四月はきみの嘘」が
好きな方にも勧めたいです。
こまやかな人物表現、
演奏シーンの広がりのある描写は
どちらもとても素敵だったので
ぜひ読んでみてほしいです。