タイトル | イシュタルの娘~小野於通伝~ |
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原作・漫画 | 大和和紀 |
出版社 | 講談社 |
あさきゆめみしで、源氏物語の世界を華麗に
描いた大和和紀先生による戦国時代から
江戸時代を生きた小野於通の物語です。
実在の人物で詩歌・書画などの芸事に
秀でた女性です。
戦国時代の混乱から江戸時代にかけて人を
見抜く力をもち、権力者たちにも重宝された
人生を恋愛要素も含めて描いた作品です。
イシュタルの娘~小野於通伝~のあらすじ紹介
幼い頃に父や兄が本能寺の変に巻き込まれて
亡くなり、母も早くに亡くした小野於通伝は
九条家に引き取られます。
そこで於通は、彼女の才能の一つである
書画や礼儀作法などを学びます。
のちに夫婦の形をとる近衛信尹とも
この時代に知り合い愛を深めます。
一度は、家の為に別の男の元に
嫁ぎますが、おつきの忍者や於通の
才覚により、処女のまま離縁します。
九条家に戻り、好きな書画を書ける
生活に戻ります。
この物語での於通は、人の未来が見える
目を持っています。
信長・秀吉・家康とそれぞれに見えるものが
ありました。
特に秀吉はまぶしい光が見えていました。
秀吉が千利休を死に追いやったころから
その光が弱まり、豊臣家の衰退などが
彼女の眼を通して描かれています。
イシュタルの娘~小野於通伝~のネタバレと今後の展開は?
戦国時代の有名な武将たちがたくさん
でてくるのですが、於通の生きる道で
出会う人たちと言う形です。
物語は、歴史に添って進んでいきます。
戦で命を落とす人、成功する人が
於通には見えてしまうのです。
だからと言って必ずしも勝馬に
乗るわけでもなく、心が信じる人に
寄り添う於通です。
結婚に関しても、
相手に愛人や子供のいるひどい結婚生活
でした。
けれど、その愛人の子供をを教育し、
愛人やその周りの女たちに
武家の嫁として躾けをします。
そうした働きによって、表向きは
子供が出来ずに追い出された形を
取りましたが円満に離婚しました。
離婚されたのち、自分の愛する
近衛信尹と結ばれ、二人の間には
子供もできます。
母となっても於通は、多くの
権力者たちの周りに侍る女性の
躾け係として、重宝されます。
その中で、歴史の波に飲み込まれ
消えて行かなければならない人
との関係性もきちんと書かれています。
歴史物語としての形をとって
いますが、大和和紀の解釈による
歴史感で描かれている部分もあります。
時代が江戸時代に移っているので
そろそろクライマックスを迎える
この作品です。
イシュタルの娘~小野於通伝~の読んでみた感想・評価
大河ドラマもそうですが、人を魅力的に
描く為にフィクションも多用されています。
中でも淀君の産んだ秀頼は、秀吉の種では
ないなど、読んだ人の心が興味を
持つ方向へといざなってくれます。
近年の大河ドラマ「真田丸」にも
わずかなシーンですが出てきたりする人物
です。
歴史の中で単なる教育係の女性であっても
こんなに波乱万丈な中に生きてきた
そんな面白さを感じました。
歴史の中でちっぽけな存在であっても
於通の人生は、壮大な絵巻物にも
負けない深みもあると思わせてくれます。
戦国時代の歴史は、特に男性中心で
描かれていますが、この作品では女たちにも
光が当たっています。
そのため、女性の恋愛観、思想、嫉妬心
など様々な要素があるので、歴史を
知らなくても読みやすいです。
歴史と言うものは、のちに史実が
変わったり、明確な正解と言うものが
決まっていません。
ですから、許される範囲での
フィクション部分も歴史を知る人にも
楽しめる作品だと思います。
イシュタルの娘~小野於通伝~はこんな方におすすめな作品!必見
この作品の作者、大和和紀は、
いろいろな時代に生きる女性を描いて
います。
2017年に再映画化された
「はいからさんが通る」は大正時代
日露戦争・関東大震災が描かれています。
ヨコハマ物語は、明治時代を生きる
二人の女性がアクティブに描かれて
います。
この2作品は、少女向け作品として
書かれているので、於通の物語や
あさきゆめみしよりも読みやすいです。
現代の世界で、自分たちが当たり前に
感じている価値観や恋愛観があるように
時代ごとの感覚を知ることができます。
っ一人の女性の人生を読んでいくうちに
知らず知らずのうちに、歴史上の
人物の名前を憶えて行けます。
もちろん、フィクションの部分もあるので
深くその時代を知りたいと言う人には
今の定説を調べるといいと思います。
女性誌に連載されている作品ですが
中学生くらいから、読んでも問題はないと
思います。
受験対策としてではなく、歴史の中で
教科書に載っているような人たちも
いろんな恋や結婚をしたと知って欲しいです。