タイトル | カーテン・コール |
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原作・漫画 | 吟野末矢 三原陽子 |
出版社 | 講談社 |
小柄でぽっちゃり体型、冴えない風貌の
松葉ぼたん。
しかし女優の血を引く彼女は、
演じることへの情熱で満ちており……。
一風変わった女の子を主人公に起用した、
正統派の感動的な舞台から、
予想外の展開まで、様々な魅力がある、
演劇もの作品の傑作です。
カーテン・コールのあらすじ紹介
女優を母に持ち、演劇を愛する、
平凡な少女松葉ぼたん。
元々は素人だったのですが、
歌を聞いていた川端老人の
猛レッスンを受けて、
新作ミュージカル「ドリーム」の
オーディションに参加した彼女は、
予想以上の大活躍。
本人の意気込みや期待以上の結果を、
母の思い出や日常の経験から
生み出していくことになります。
そして見事最終審査に残り、
そこでも評価されたぼたんは
セカンドキャストとして、
初舞台を踏むことになりますが、
そこに思わぬ落とし穴があったのでした。
カーテン・コールのネタバレと今後の展開は?
カラオケパブに勤める、
平凡な少女、松葉ぼたん。
小柄でぽっちゃりタイプ、
人目を引く容姿ではありませんが、
彼女は往年の女優、
吉野さくらを母に持ち、
何より演劇を愛する心と
「演じる」気持ちを持っていました。
そのためパブでも大人気で
彼女が歌うと客たちも
うっとりしてしまうほどでしたが、
ある日通い詰めていた客から、
新作ミュージカル「ドリーム」の
オーディションに出るよう言われます。
しかも費用も全部持つから、一月の間
レッスンしろという話で、
あからさまに怪しくはありましたが、
ある時その川端という男性は、
ミュージカル曲を素晴らしく歌い上げ、
ぼたんの心をぐっと惹きつけます。
しかし、ちょっと試してみるならと
乗り気になったぼたんに示された
「練習場」は、スタジオですらない、
ガード下の一角で、常に電車の音が
響いているような環境でした。
しかしぼたんはめげずに一月の間、
川端の猛レッスンを受けて
力を磨いていきますが、
「ドリーム」のオーディションに
参加する人の数は物凄く
早くも圧倒されてしまうのでした。
カーテン・コールの読んでみた感想・評価
異色色物系の演劇物語を
予想していましたが、
実に正統的で面白く、
しかも予想外な展開に
クスっとしてしまったりもする、
ジャンルの傑作と言えます。
演劇ものの作品だけに、
その魅力は「主演」である
人物の是非によるところが多いですが、
本作のぼたんさんは実に魅力的で
「いじり甲斐」がありますね。
「ガラスの仮面」の北島マヤちゃんは、
作中での扱いはともかく、
理想的に近いほどの美少女であり、
しかも物凄いポテンシャルをも
持っていましたが、ぼたんさんは
随分と違います。
小柄でぽっちゃり体型、
愛嬌は抜群ですが主演女優という
活躍を想像できないほどであり、
しかしその一方で、決して
他人には出し得ない魅力が
満載されているんですね。
とは言えぼたんさんは
冴えない風貌が示すように、
「天才」的な冴えは少なく、
また華がないために脚光は
どうしても浴びづらく
苦労することが多いんですね。
その過程で相手をただ単に
見返すのではなく、視野を広げ、
舞台全体を見られるようになるなど、
「ガラスの仮面」とはまた違う、
そして現実的な方法で芸を磨く、
ぼたんさんの姿は清々しいですね。
エッチな劇をウリにする団長と
同じベッドでドキドキといった、
お色気っぽいイベントでも、
単に嬉しいだけではなく、
一緒にハラハラしてしまうほど
感情移入してしまいましたね。
カーテン・コールはこんな方におすすめな作品!必見
小説を書く、漫画を書く、空想を語る……、
表現にも様々な種類がありますが、
中でもより「自己」の結びつきが強いのが、
「演じる」という分野でしょう。
間違いなく動いているのは自分自身なのに
演じているだけは確実に「別人」という
その凄みや面白さに惹かれるからか、
今でも部活の定番として存在しますし、
劇団員としてプロを目指す人も
実に多いですね。
また、創作世界においても、
形になりやすい利点があるために、
素晴らしい漫画作品も少なくなく、
特に「ガラスの仮面」は
歴史的名作として、
世に知られています。
しかし本作のぼたんは、
「ガラスの仮面」のマヤと同様、
演劇に心惹かれた女性ですが、
マヤが目立たない一方で
物凄い美少女なのとは異なり、
小柄でぽっちゃりタイプ。
明らかに「美人」とは呼べない、
しかも器用なタイプでもなく、
舞台映えする雰囲気もないですが、
だからこそ「潜在能力」をフルに
発揮した時の凄みは強烈で、
演劇の素晴らしさすら滲みます。
演者が担当するのは多くの場合、
「普通の人」であるわけだから、
必ずしも美男美女の必要はない、
そんな「理想論」を完璧に
漫画の中で体現した作品で、
演劇好きにはオススメできます。
また「ガラスの仮面」よりも
良くも悪くもクセのある
面白い人たちが多いので、
本作ならではの演目や
解釈が堪能できるのも
嬉しいところでしょう。