タイトル | クイーンズ・クオリティ |
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原作・漫画 | 最富キョウスケ |
出版社 | 小学館 |
身一つで学校に転がり込み、
人の心に巣食う「ムシ」を
排除する掃除屋見習いとなった文。
しかし彼女には、大勢の人間を支配する
「女王」と呼ばれる特別な存在を
その身の中に有していて……。
伝奇ファンタジー的な恐ろしさと
日常的なドキドキ感の融合が絶妙な、
「お掃除」系アクション恋愛漫画です。
クイーンズ・クオリティのあらすじ紹介
家族も住む家もなく、学校に
転がり込んできた少女、西岡文。
様々な縁があって、人の心を
侵食する「ムシ」を駆除する
「掃除屋」一家の見習いとして、
働いていくことになる彼女ですが、
実は彼女には掃除屋のみならず、
人を自由自在に支配する
「女王」の素質があったのでした。
女王は恐るべきレベルで、
他者に影響力を行使でき、
そして純粋な正義ではなく、
黒くも白くもなる存在でした。
そのために文は悪意ある存在から
狙われることにも
なっていくのでした。
クイーンズ・クオリティのネタバレと今後の展開は?
家族から放り出されるような形で
学校に転がり込んできた西岡文。
縁があって人間の心に巣食う、
「ムシ」たちの排除をする
「掃除屋」の見習いとして、
お世話になっている彼女は、
ある日妙な訪問者から、
術をかけられます。
全身を鎖で縛られた上に、
大事にしてきた植物まで
燃やされそうになった文は、
激怒ともまた違った
感情の爆発のさせ方で、
彼の術から逃れ、代わりに、
彼を支配しにかかります。
実は彼の術は催眠術で、
その場は助けに入った
堀北玖太郎により収まりますが、
この一事は実は、
文の運命を左右する力の
証明でもあったのです。
実は文には、常識的でないほど
他者を支配することができる
「女王」の素質が宿っており、
それが悪用されれば、
恐るべきほどの人数が、
「ムシ」にやられてしまうとのこと。
だからこそ玖太郎たちは、
文を守り抜くという使命があり、
女王を欲している事情もありました。
自分を平凡な人間だと思っていた文は、
運命の重さに衝撃を受けますが、
しかしそれにはめげずに動き出します。
しかし、女王の卵である彼女に
のしかかる試練と悪意は
非常に巨大なものでもあったのでした。
クイーンズ・クオリティの読んでみた感想・評価
ここまで大きくハードな
物語になっていくのかと、
読み進めるうちに熱くなりました。
元々事情があって、学校に
転がり込んできたような文さんは、
辛い環境にもめげない強さと、
徹底して玉の輿を狙ってくるような
したたかな一面を持つ魅力的な
女の子だったわけですが、
まさか世の中を変えてしまうような
恐るべき力を持つ、
「女王」の素質があったとは。
それこそ本人さえも、まるで
気付かなかった衝撃の事実ですが、
しかし「覚醒」した時の力は本物。
ハード系の作品を読んでいると
認識している私も思わず、
唾を飲んでしまうような迫力でした。
そして、単に「掃除」という
実務だけでなく、伝統や
もっと大きな事情を抱える、
玖太郎たち一門や、
暗躍するムシ使い等々、
物語全体も非常に重厚でした。
そして本作はまだ未熟な若者たちと
実にデキる大人といった感じの
対比がある中で、結構大人組が
若者に対してシビアなのですが、
彼らの事情の重さからすれば
それも納得です。
「厳しさ」や「重さ」を前面に
出していこうとするあまり、
意味もなくハードな展開や、
キツいだけの上司や先輩が
登場する作品もあるだけに
本作の必然性は嬉しいですね。
また、個々の恋愛感情などの
日常的な部分が、厳しい
戦いの日々で消されることもなく、
その部分が「掃除」で人の
バランスを保つ本作のテーマと
同調しているのも良かったですね。
クイーンズ・クオリティはこんな方におすすめな作品!必見
現実ならぬ創作世界では、人間社会に
様々な方法で怪異が侵食してきますが、
そうした作品において大事なのは、
何と言っても「説得力」となります。
現代的な科学技術が進展し、
軍事力も強力なものとなった状況でも
太刀打ちができないような「何か」を、
提示できない限り、真の脅威として
リアルな存在にはなってきません。
しかし本作では、あくまで内面に干渉する
「ムシ」やその操作者たちを「悪」とし、
社会的に表沙汰にならないのではなく、
実際的にも見えない暗闘を
繰り広げているという形で、
怪異に説得力を持たせています。
そして影響力があれば、国すら
簡単に滅ぼせるかも知れない状況も
現実に考えられる中で、
多くの人を何の痕跡もなく操れる、
「女王」の存在はまさしく恐ろしく、
実感あるものに仕上がっています。
自身の内面に向き合う難しさや
それが身近な人に影響を与える怖さは、
本当に中身があり、人間社会とも
巧みに同調した怪異ものを
満喫したい方には最適の
一作になっていると言えます。
また、前シリーズ冒頭の「掃除」から、
人間界全体の脅威へとスライドしていく、
ダイナミックさにも関わらず、
まったく不自然さのない構成の妙や、
ムシたちのおどろおどろしさなど、
非常に輝く部分が多い作品です。
かなりタフな作品である一方、
恋愛描写などもしっかりしており、
重層的な仕上がりにもなっています。