タイトル | シュガーズ |
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原作・漫画 | やまもり三香 |
出版社 | 集英社 |
かなわぬ恋に胸を焦がしていたり、
あるいは両思いだったり、
好きな人が先生だったり……、
大人の恋とはまた違う、
でも小さい頃の初恋よりも明確で、
深く胸に残る恋の数々の物語。
各人の表情や仕草まで
キラキラした感じでいっぱいの、
傑作学園ラブ短編集です。
シュガーズのあらすじ紹介
周りの男子たちから、
バシバシ告白をされるものの、
恋にはあまり興味がない、
シュガーレス系女子、麻美。
彼女は性格がクールですが、
スイートな雰囲気だけでなく
実際的に甘いお菓子も苦手で、
「温度が低い」感じを
友達に指摘され、「恋をしなければ」と
指南されたりもします。
そんなある日、クッキング部でもないのに
料理を作りにくるという後輩、
紅原太郎を目撃します。
パンケーキ作りにハマっている太郎は
飛び切り人懐っこいタイプの男子で、
麻美にとっては苦手な感じでしたが、
その後も太郎は何かと絡んできて、
いつしか麻美の態度に微妙な変化を
もたらしもするのでした。
(「無糖女子とバナナパンケーキ」)
シュガーズのネタバレと今後の展開は?
松添 黄恵、十八歳。
モテ系の友達に囲まれつつも、
なかなか恋愛に縁がない青春を
送っていました。
その原因は大きな弁当箱で、
二限終了の休みに本気食いをする、
気質にあるんじゃないか、的に、
友達の紫門にからかわれますが、
実は黄恵が好きなのは
その紫門でした。
しかしなかなか告白する
勇気が出ない黄恵に、
モテ系女子の麻美はプレゼントします。
それは何と「恋の媚薬入りキャンディー」、
寝る前に食べると、飴に含まれる
バラのフェロモンが作用し、
たちまちモテモテになるという、
魔法のようなキャンディーでした。
早速飴玉を使った翌日、黄恵は、
紫門と一緒に登校しますが
彼に目立った変化はありません。
しかし教室に入るや否や、
男子たちがやけに黄恵を気にしたり、
頬を染めてもじもじしたりと、
あからさまに普段とは違う態度を
取り始めるのでした。
その皆の変化は紫門も
気にかけるレベルでしたが、
肝心の彼が黄恵に対して、
不配慮なことを口走ってしまい、
傷ついた黄恵は思わず、
その場を去りかけます。
しかし紫門はそんな黄恵を
強く引き止めるとともに、
意外なことを口走るのでした。
(「秘密の★キャンディー大作戦!」)
シュガーズの読んでみた感想・評価
本作は高校生たちの恋愛を
テンポ良く描いた短編集ですが、
相手を見つける基準が、
「能力」でないのは意外に
斬新ですね。
多くの創作の世界でも、
また現実でも、付き合う相手を
選ぶ際には「力」が、
重視されることが多いですね。
社会人になってからは経済力、
学生時代はルックスやコミュ力と、
年齢などによって基準は違いますが、
そうした客観的要素に
答えを求めると、大多数は、
「正解」に走ってしまうものです。
しかし本作の場合は、まったく
女性っぽくない女の子や、
やたら空回りする男子など、
通常であれば結構、恋愛から
弾かれてしまうタイプの人に、
スポットライトを当てていますね。
皆ルックスが良く、仕草も可愛いので
失念してしまいがちですが、
全員容姿が良いということはつまり、
見かけで差がつかないわけですが、
本作は難有りでも関係なく、
ドキドキの恋物語が展開されます。
不器用というかちょっとズレていて、
だからこそ彼らの恋は真剣で、
読んでいても胸に染みましたし、
こんな学生時代を送りたかったとも
真剣に思ってしまいましたね。
ルックスや能力にとらわれず、
恋愛「することもできる」
若者の特権を、
フルに活かしているようでもあり、
この時期にしかできないタイプの恋を
楽しんでいるのも好感が持てました。
シュガーズはこんな方におすすめな作品!必見
甘いものは不健康の原因、とか、
世の中そう甘くない、とか、
何だか悪者にされることが多い「甘さ」。
しかし正直になって考えてみると、
やっぱり昔から「甘さ」は多くの人が、
好きだったりするもので、
それが飲食物ではなく恋の話であれば、
さらに「大好物」な人も
増えていくのではないでしょうか。
本作はそんな甘くてキラキラした
学生たちのコイバナな、
ぎゅっと詰まっています。
しかも単に平坦な「甘さ」でなく、
それを引き立たせるための
「苦味」や「アクセント」が、
時にはピシっと効いている、
テンポとメリハリもある
面白い恋愛を読みたいなら必見です。
いわゆるオムニバス、短編集なので、
どこから読んでも大丈夫という
側面が強いのもいいですし、
登場する女の子や男の子たちが
ルックスはもちろん表情なども
可愛らしいのも素晴らしいです。
また、各人ごとに違う仕草や
リアクションなどが、かなり
徹底されてもいるので、
不自然な感じがなくそれぞれの
恋愛を満喫できるのも、
見逃せない点と言えるでしょう。
王道定番な流れの中にも、
それぞれの個性と楽しさがある、
実に楽しくテンポも良い一作です。