タイトル | デストロイ アンド レボリューション |
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原作・漫画 | 森恒二 |
出版社 | 集英社 |
平凡な高校生、マコト。
彼には「力」があった。
それも世間を揺るがすほどの
とてつもない「力」が。
超能力に目覚めた少年と
世界を変えようとする少年が、
変革のための破壊を行う。
しかしそれは愛する国を
そして人々の暮らしを
危険に晒すものだった。
殺伐とした世界観の中、
超常能力が世界を揺るがす、
新感覚サイキック漫画です。
デストロイ アンド レボリューションのあらすじ紹介
平凡な高校生であるマコトは、
自分と同じ留年組であるユウキの
純粋さと視野の大きさに気付きます。
ユウキは平和な日本に存在する、
いくつもの矛盾に耐えられず、
もっとも破壊的な行為で問うことを
マコトに提案します。
そしてマコトには事を起こせる
超常的な「力」がありました。
また、自らも現実の不条理を
散々に味わってきたマコトは、
ユウキとともに強烈な破壊を
行っていくことになります。
しかし、ユウキは急進的で、
かつ目的のための犠牲を、
気にする人でもありません。
純粋であるが故に危険な、
ユウキとその仲間たちと、
マコトの価値観は、
事が大きくなるにつれ
段々と離れていくのでした。
デストロイ アンド レボリューションのネタバレと今後の展開は?
高校を留年している田中 マコト。
父の工場が潰れ母がいなくなり、
生活保護を受ける祖母と同居する、
厳しい背景を抱える彼は、
ただ一つ常人とは違う、
「能力」を持っていました。
「一体になる」ことで、
遠くの物体でも掴み取れるのです。
マコトは自身と同じく留年組で、
強烈なカリスマ性を持つユウキと
仲良くなっていく中で、
ユウキが持つ「計画」を聞きます。
日本を愛しているからこそ強烈な、
誰もが目を引く手段を使って
「分からせる」のが必要と言う彼。
その言葉は、不条理を強いられてきた
マコトにとっても魅力的なものでした。
動揺し、思案に思案を重ね、
ついにマコトは、
地元の川を削り続けている企業の
施設に向けて「力」を使い、
超常現象的な破壊を行います。
その後もユウキは「目標」のため
次々と破壊行為を主導していき、
彼らの非道とも言える攻撃は、
日本政府をも大いに脅かすことに。
市民もマスコミも大いに注目する中、
ワンネスは世界をさらに動かします。
デストロイ アンド レボリューションの読んでみた感想・評価
「ホーリーランド」にハマった身としては、
森氏の作品は外せないという感じでしたが、
本作には色々とビックリしましたね。
まさか「無差別破壊」をテーマに、
現代社会と向き合う作品とは。
それも、いわゆる超能力という、
従来作とはかなり違う「武器」を
前面に出してくるとは……。
しかも、自分たちが正義で
権力が敵でといった単純な構図ではなく、
むしろ、ユウキの掲げる「正義」に
マコトが疑問を呈していくという感じで、
色々と考えさせられるものがありました。
特に、純粋に正義にこだわり続けた、
カリスマ性のあるユウキが、
いつしか完璧な「悪」となり、
自分と対立する相手からだけでなく
愛しているはずの日本全体をも
深刻極まる事態に追いやるなど、
単純に楽しむにはキツい展開もあり、
そこが作品全体の厚みとなっています。
また、話が進んでいくにつれて
どんどん拡張してくる超能力自体が、
話全体のキーになったりと、
簡単には予想できない展開も
興味深いものがありました。
「ホーリーランド」とは違い、
直接拳を交えない分、
痛いというかきつい状況もあり、
今までの森作品とはかなり違う、
しかしどこか共通する閉塞もある、
社会的な作品と言えるでしょう。
デストロイ アンド レボリューションはこんな方におすすめな作品!必見
思春期ならではのドロドロとした不満、
感受性が豊かな人が感じてしまう不条理、
世の中の深刻な矛盾……。
こうした様々な問題に対して、
何をするのかというのが、
青春を扱った作品の核にはあります。
本作の田中 マコトとユウキは、
そうした不満に対して、
「破壊」という選択肢を取りました。
その救いようのなさは、
同じく森氏によって描かれた
「ホーリーランド」とは異なるもので、
また、取り返しがつかない点も異質です。
ユウキは様々な理由を立てて事を煽り、
マコトは実行していきます。
しかし彼らの「正義」には、
もっとも大切なはずの人の命が
含まれてはいません。
平和な社会に潜む悪意や不条理、
その強烈な犠牲者だったマコト、
急進的な革命を目指すユウキ。
しかし、仲間だったはずの二人は
いつしか別の道を行き、
ユウキはどんどん強烈になります。
世界中の都市を、軍備を破壊し、
日本を米軍の爆撃に遭わせ、
多くの人を殺傷していく……。
果たしてこれがユウキの、
目指していた世界だったのか、
これだけの混乱から世界は、
どう回復していくのか。
問題意識を持っていた人が、
「問題」そのものになった
悲しいエピソードであり、
騒ぎを起こすほどに、
人の関心はそちらに向かい、
結局問題は解決しないという
現実の縮図を示している、
しかも残念な現実を示す
作品でもありました。