タイトル | ドーリィ♪カノン |
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原作・漫画 | やぶうち優 |
出版社 | 小学館 |
有名なピアニストを母に持ち
作詞作曲が趣味の心音が、
カラオケ店で聴いた素敵な歌声は、
密かに憧れている同級生の
奏四のものであり……、
動画サイト経由での投稿等々、
最新技術を活かした今時の
音楽活動の実情も分かる、
明るく楽しく元気になれる、
若者へのエールのような、
ワイワイ系音楽漫画です。
ドーリィ♪カノンのあらすじ紹介
中学に入ったばかりながらも、
作詞作曲が趣味という、音楽好きの心音。
彼女は自分が憧れていた奏四が、
理想の「萌え声」をしていることを
あるきっかけから発見してしまいます。
しかもその音源を、店のバイトに
勝手にアップされたことで、
奏四は思わぬ形で評判になり、
同時に心音が絶対音感を持ち
歌唱力も優れていることが、
奏四にも伝わります。
しかし、急に動画が削除され、
しかもプロから呼びかけられたために、
悪評が出回るようにもなってしまい、
その評判を払拭するべく
心音と奏四は本気で
自作の動画をアップするのでした。
ドーリィ♪カノンのネタバレと今後の展開は?
4月に中学に入ったばかりの宍戸心音は、
作詞作曲を趣味にしている、
音楽系にセンスがある少女で、
特に最近は同級生の奥田奏四を
うっとりと眺めることで、
創作意欲をかき立てていました。
しかし「実家」であるカラオケビルで
ある日少女的ながら、完璧な出来栄えの
歌声を耳にします。
本人ではないかと思ったところで、
同じ学校の制服を見たため、
我慢できなくなった心音が扉を開けると、
そこには自分が憧れている奏四が
マイクを握っていました。
一方、少女アイドルの歌を
熱唱していることがバレて、
まずいと思ったのは奏四です。
お互いにカラオケ通いという「悪」を
やっているかと思いきや、
心音は実家ということで弱みはなく、
そこで「付き合ってくれ」と
条件を持ち出しました。
すると心音は奏四に、
なんと女装をさせてきて、
心音は「男の娘」になった奏四の
歌唱を満喫することになります。
こうして二人は「秘密」を
守ることになったかに見えましたが、
その歌をカラオケ店のバイトである
幸田さんが勝手にネットに上げたため、
奏四は大騒動に巻き込まれるのでした。
ドーリィ♪カノンの読んでみた感想・評価
技術の進歩は色々なものを
もたらしてきましたが、
その中でも音楽表現には、
十数年前とはとても大きな
違いを見ることができます。
少し昔であれば、プロを目指し
真剣に活動するか、有名な
作家の方に弟子入りしなければ、
なかなか「楽曲」や歌詞を
多くの人に伝えることは
難しい現状がありました。
しかし本作の心音ちゃんや
奏四君は、動画サイトへの
投稿という最新の手法で、
ネット上で評判になり、
プロにもその存在を
知られるようになっていきます。
つまり「発表」に至るまでに
従来では必須だった「修行」を
経験したりはしておらず、
アマチュア的なワクワク感を
前面に出したままの状態で、
結果を出ることができたのです。
そのためか心音ちゃんの姿勢も、
眉間をしかめて必死にやる、という
従来的なプロ像とはまるで違い、
とにかくカッコイイ、楽しい、
ドキドキする、といったような
感情を純粋に出せているんですね。
だからこそ読み手の側としても、
ある意味原始的な熱さを直に
感じ取ることができましたね。
心音ちゃんたちと同年代の
青少年の方にはもちろん、
大人たちにとっても彼らの
グイグイ行く姿は
エネルギーになると思います。
変に厳しいことや「業界の現実」を
前に押し出し過ぎず、やるぞという
気持ちを削いでいないのもいいですね。
考えてみれば、大人目線での「現実」も
あと十年もすればまるで違う状況に
なっている可能性が高く、
それこそ本作のネット技術のような
発明が問題を解決している、
かも知れないわけです。
であればとにかく前へな姿勢が
正しいということになりますし、
心音ちゃんたちの純粋な情熱こそ、
将来を切り開くために必要な
唯一無二なものとも言えるわけですね。
そうした若者目線で応援する姿勢が
完全に明らかだからこそ、大人が読んでも
素直に熱くなれるのかも知れません。
ドーリィ♪カノンはこんな方におすすめな作品!必見
「芸能界」と言うと何やら大仰な
雰囲気になってしまいがちですが、
歌を聴いたことで感動を得たりすることは、
誰にでもあり得ることです。
だから趣味で作詞や作曲などをしたり
歌ってみたりしたりもしますが、
デビューするのは簡単ではありません。
しかし今の時代であれば、有名な
作家さんのお弟子にならなくても、
動画サイトなどを経由して自分の曲を
全世界に公開できる機会があり、
その変わりようは漫画や小説の
世界をもしのぐレベルかも知れません。
本作はそうした最新の音楽表現の
面白さや素晴らしさを、
未成年の少年や少女を軸にして、
存分に示し抜いています。
資産家の家に生まれ
強烈な音楽的素養を持ち、
しかも自由自在に自分の世界を
音楽にできる心音ちゃんという
大天才が主人公だからこそ、
楽しさを集中して味わえます。
完璧なルックスを持つ奏四君も
非凡なセンスを持っていて、
本作は明らかに音楽活動の
「良い部分」を前面に出して
動いていくという意思が
伝わってきますね。
これは現実感がないのではなく、
むしろ背負うものが少ない
少年や少女のうちに、
全力で楽しみ抜いていってこそ
結果も出てくるという
本作流のエールだと思います。
とかく若者に対しては
「厳しさ」を前面に出して
話をしてしまうことが多い中で、
全力で気持ちを応援してくれる
本作はとても希少で、貴重な
一作だと言えるでしょう。
心音ちゃんたちの可愛らしさや
ガシガシ前に進む爽快感、
そして作中楽曲の説得力など、
作品としてのレベルも極めて高く、
大人が読んでも納得な、
素晴らしい仕上がりでもあります。