タイトル | マラソンマン |
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原作・漫画 | 井上 正治 |
出版社 | 講談社 |
かつて競技の道を断念した勝馬が、
息子、一馬に、父親として
「背中」をみせるため、
再びマラソン競技に復帰していく。
親子二代の奮闘と苦闘を描いた、
物語的にも技術解説も重厚な、
部活ものとはまた違う、
マラソン漫画の傑作です。
マラソンマンのあらすじ紹介
陸上競技で期待されていながら挫折し、
自堕落な日々を送る、高木 勝馬。
ギャンブルにハマり深酒をし、
息子の授業参観すら忘れるような
ひどい生活を続けていましたが、
真剣裁判を起こされそうだと知る中で、
かつて選手だった頃の記事を
抱いて眠る息子、一馬の姿に、
選手としての復帰を決意します。
しかし、年齢的ハンデに加え、
なまり切った肉体では
復帰は決して簡単ではありませんが、
まだ幼い一馬の献身的な協力もあり、
徐々に昔の走りを取り戻し、
競技への参加にこぎつけるのでした。
マラソンマンのネタバレと今後の展開は?
かつて、日本陸上界期待の
長距離ランナーだった
高木 勝馬。
しかし今は走りとは無縁の
人生を送っており、
しかも父子家庭でありながら、
生活態度は非常に自堕落、
タクシー運転手なのにも関わらず
普段から深酒を続け、
ギャンブルにハマり借金を作り、
子供の授業参観の日まで
飲んだくれている始末です。
息子の一馬も、そんな父親を
持っているがために
学校でなじられてしまいました。
一馬の担任にまで、自らの態度を
叱られてしまった勝馬でしたが、
勤務中に偶然、元妻の美也子を
客として乗せることになります。
勝馬が運転しているとは知らず、
裁判を起こして一馬を引き取ると
宣言してみせる美也子。
それを聞いた勝馬は、
余裕のない生活が嫌で
息子を置いて逃げたお前が
何を今更と激しく反発しますが、
現実的に考えれば、
勝馬が不利なのは明白でした。
落胆し帰宅した勝馬でしたが、
そこで一馬が、勝馬が選手だった頃の
記事を抱きながら、
泣いた痕跡を残して寝ているのを発見し、
息子に自分の背中を見せるべく
競技を再開することを決めるのでした。
マラソンマンの読んでみた感想・評価
あらゆる競技のスポ根ものを
今まで読んできましたが、
本作の立ち位置は非常に独特でした。
まず、引退状態の中年男性が
自分と子供のために再起する展開は、
部活ものでは見られない流れですし、
父親がなまった肉体を戻していく、
子供が校内行事で勝ちたいといった
「部活以前」の段階から、
箱根駅伝に出場したい、
世界選手権を目指すという
最高峰のレベルに至るまで、
全ての状況をじっくりと丁寧に
そして説得力を含めて
描写しているというのは、
他の作品にはなかなかない
希少かつ貴重な立ち位置です。
また、一度夢に挫折して
ヤケになってしまった勝馬の
アスリート的ではない描写も、
大人になってから改めて読むと、
かなりリアルな雰囲気があり、
だからこそ感情移入ができます。
父親のために必死で頑張ってきた
無邪気な少年だった一馬が、
予想外の成長を遂げていた点も、
リアルさを追求した結果とすれば
むしろ納得できます。
味方と敵といった描き分けが明確で、
玉虫色のキャラが少ない部分も、
勝負をテーマにした漫画としては
良い意味でのシンプルさで、
好感が持てましたね。
マラソンマンはこんな方におすすめな作品!必見
親子鷹という言葉があります。
特にスポーツの世界で、親が子をコーチし、
自分以上の存在へと育てるといった関係に、
こうした単語が使われることが多いですね。
さて、実際の世界でも親子で世界を、的な
関係は非常に多いのですが、創作世界では、
近年、親子鷹的な作品は少ないですね。
親に管理されるのが嫌だとか、様々な
理由が考えられますが、親が
現役を退いている関係上、
結果的には「言うだけの人」になって、
その姿に説得力がないというのも
原因の一つかも知れません。
しかし、本作における勝馬と一馬は、
父一人子一人で育つ関係ですが、
発奮した勝馬に一馬が寄り添う、
むしろ一馬がコーチ的に勝馬を
鍛え上げていくという構図があり、
高圧的な親という関係性に至る懸念は
まったくなく、絆や爽やかさを
純粋に楽しむことができます。
また、親子二代での挑戦という、
非常に腰の入った展望で
作られている物語だけに、
物語の本筋はもちろんのこと、
技術的な部分でも
基礎から東洋的見地まで、
あらゆる方面からマラソンを
突き詰めているこだわりがあり、
選手になるわけではなくても
ちょっとジョギングをしてみたい、
運動会や校内行事で走るという人に、
非常に参考になる知識の数々が
盛り込まれているため、
実用性の点でも非常に有用です。