タイトル | ヤカンヒコウ~Vampire Knight~ |
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原作・漫画 | 高宮智 |
出版社 | 小学館 |
美しいメイドたちに囲まれた
お城のような豪華な館。
しかしそこに暮らす結と華には
惨劇の記憶があった。
様々な能力を持つ結が、
「妹」とともに探る相手は……?
吸血鬼の悲哀や耽美さが
現代的な舞台で堪能できる、
良作幻想物語です。
ヤカンヒコウ~Vampire Knight~のあらすじ紹介
血はつながっていないものの、
仲の良い兄妹である、
結と華。
両親の愛を知らない結にとっても
華とその両親たちからの愛情は
かけがえのないものでしたが、
その幸せは一人の通り魔によって
粉々に壊されてしまいます。
ある夜結が戻ると、顔を隠した
刃物を持った通り魔が、
館の人間を抹殺していたのです。
恐るべき襲撃者に抵抗できず
絶体絶命だった結は、
事件現場に乱入した
吸血鬼によって、
自らも吸血鬼にされてしまい
人間離れした能力と、
様々な制約を持つことになるのでした。
ヤカンヒコウ~Vampire Knight~のネタバレと今後の展開は?
上流階級に属し、
学校にも通っている
兎藤 華ですが、
彼女には頼れる「兄」が
常に一緒にいました。
その「兄」である結は、
両親の愛を受けられず、
引き取られた先でも
ひどい目に遭って、
ようやく華のいる家に
引き取られることになりました。
たくさんの使用人がいる
お城のような大きな家で、
いつも自由にしている華を、
結は当初煙たく思っていましたが、
華の温かい態度により、
絆を見出すことができました。
しかし、誕生日、バイトから
家に戻った結は、
家族も使用人も皆通り魔に
惨殺された現場に出くわします。
そして結も華も抵抗できずに
殺されかけたその時、目の前に
吸血鬼が現れました。
結は選択肢に従い、吸血鬼に
変化することで華を助け、
華たちは通り魔たちに復讐すべく
人生を歩んでいくことになります。
しかし、悲劇にも関わらず外に出て、
動き続ける華を結は必死に守りますが、
彼らの前には通り魔が多く、
中には自我を失っている者もおり、
華は執拗につけ狙われていきます。
ヤカンヒコウ~Vampire Knight~の読んでみた感想・評価
現代的ではあるものの
作品の軸は王道で
安定感がありましたね。
多くの作品の場合、
吸血鬼側はたとえ主人公でも、
「無益な殺し」などの悪徳を、
重ねていることが多く、
感情移入が難しい場合も
少なくありませんでしたが、
本作の場合は、吸血鬼である結は、
吸血鬼になったのがかなり遅く
、
しかもそれからあまり時間が
経過していないということもあり、
不必要な「業」を背負っていないため、
彼に悪感情を抱かず、
読み進めることができました。
また、家族を惨殺され、
乱入者に結を吸血鬼にされた華も、
強烈な背景を背負っていながらも、
人間的には歪んでおらず、
むしろ苦労を見せないとろおがあり、
応援できる人柄でもありました。
また、随所に挟まれるコメディ描写や
結たちの脇を固める関係者など、
ちょっとトボけた感のある人たちが、
ともすれば重くなりがちになる
作品の息抜きとなっているのが
ホッとできて良かったですね。
また、無益な殺生はしないという
かなり紳士的な結たちだけに、
他者の命を弄ぶ通り魔たちや
他の吸血鬼たちの
恐ろしさや憎々しさを
いっそう強く感じました。
ヤカンヒコウ~Vampire Knight~はこんな方におすすめな作品!必見
人と同じ形をしていながらも、決して人と
「同じように」生きられない宿命を背負う
吸血鬼たち。
多くの物語上において、他には言えない
「業」を背負っている彼らですが、
本作の結もまた、自分の弱さから、
家族や華を守れなかったという引け目と
吸血鬼という強力な制約を持ったという、
重い経歴を持っています。
そして復讐のために生きる一方で、
自らの人間らしい生活は
完璧になげうち、唯一残された
家族である華を守ろうと
全力を傾けるその姿勢は、
無機質ですらありながらも
人間的であり、
悪と戦う正義のヒーローの
雰囲気すら被ります。
得体の知れない妖魔と言うよりも
現実の通り魔や襲撃者などの
「人間」の恐ろしさに
「説得力」を感じる方には、
本作の全体像は
フィットするのではと思います。
また、吸血鬼である結が
かなり理性的であり、
無関係な人や無実の者に
迷惑をかける心配がないのも、
安心できるポイントだと言えます。
また、「食」という部分を前面に
吸血鬼の苦しみを描写するなど
分かりやすいのも良い点ですね。