タイトル | ラブやん |
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原作・漫画 | 田丸浩史 |
出版社 | 講談社 |
ラブ時空からやってきたキューピッド、
ラブやんとロリ、オタ、プーの属性を
併せ持つカブフサが出会い、
彼女作りに奔走するものの……。
前途は多難にして難攻不落。
どう転ぶか分からない
下ネタコミコミのダメ人間ギャグが
炸裂する一作。
ラブやんのあらすじ紹介
ロリ、オタ、プーという属性てんこ盛りの
状態で二十五歳を迎えた
大森 カズフサは、片思いの波長を
キャッチしてきたラブ時空の住人、
ラブやんとの出会いを果たします。
しかし、カズフサが狙っているのは
まだ小学生の青木 萌ちゃん。
いくら何でもヤバ過ぎる相手で、
しかもそのきっかけは、カズフサが
購入したヤバいエロ本を、
それとは知らずに拾ってくれたことに
そそられた、という最悪に近い話でした。
キツ過ぎる条件に難色を示しかける
ラブやんですが、プロのキューピッド
としてのプライドもあって協力することに。
しかしカズフサのトークセンスは
強烈かつズレまくりで、明らかに
前途は多難でした……。
ラブやんのネタバレと今後の展開は?
なかなか彼女ができず、人生的にも
開花できずといった状況ながら、
のんびり生活を営むラブやんとカズフサ。
そんなある日カズフサがラブやんに
告白します。
俺の男性器からエビの匂いがする、と。
種族的にあり得なそうな話を聞いた
ラブやんは、もちろん一笑に付します。
しかし、挑発され嗅いでみたところ、
彼の下半身は確かにエビ臭が
漂っており、ラブやんは食べていた
エビラーメンを吐き出してしまいます。
そんな「成果」を得たカズフサは、
料理人であるジャモジさんのもとに赴き
相談しますが、するとジャモジさんは
ダシを取るべくカズフサの局部を
煮ようとします。
それではヤバいということでヌルい
お湯の中に入ってダシを
取ることにしたカズフサ。
結果を出すためにジャモジさんや
ラブやんも一緒です。
ヘロヘロになるまで風呂に入り、その
湯を煮詰めた結果、見たことがない
「塩」が完成しました。
ジャモジさんはその塩を使って料理を作ると
手頃な「標的」に試食させることに……
ラブやんの読んでみた感想・評価
書店で一巻を見つけて購入した時は、
とてつもないインパクトを感じました。
主人公がガッチガチのロリコンな
上に全面的にダメというキャラは
「幕張」の奈良以来だったもので
完全に度肝を抜かれましたね。
しかもカズフサはいい歳して
完全無職で性格的にも色々と
キツい点が多数あり、「ラブ時空」から
ここに派遣されたラブやんの大苦戦も
読めば納得極まるといったところです。
しかし、物語を読み進めていく中で
意外だったのは、ダメ人間ギャグに
終始していたはずの本作で、
徐々にカズフサが成長していった、
ということです。
もっともその進み具合は世間一般に
比べれば極めてゆっくりなものでしかなく、
周りからの評価も低いものでしたが、
それでも自在にマッチョ化できるように
なったり、幼馴染との関係に内心で
決着をつけたり、親元から離れて
みたりと、その歩みは着実でした。
急な変化がなかったのはカズフサの
生活を支える家族に重大事が
発生しなかったことでもあるわけで、
やはり何よりも健康が大事、という
結論にもなっていくわけですが、
あんまりなほどのダメ人間感と
下ネタの連発に笑い転げていく中でも、
各人の人間ドラマを感じられるところが
本作ならではで、一巻だけを
抜き出してももちろん面白いですが、
最初からラストまで通して読み進めれば、
また違った感慨が得られるのでは
と思います。
ラブやんはこんな方におすすめな作品!必見
今でこそオタク系の人を主人公にした
作品も多くありますが、かつてはなかなか
物語の中心としては扱われませんでした。
漫画でのオタク像は運動神経が悪く
ルックスも気にせず、空気が読めない
等々のネガティブな要素を多く抱えて
いるように描かれていたため、
なかなか主人公にはなれなかったんですね。
しかし、本作の主人公、カズフサは、
ロリ、オタ、そしてプーという三拍子揃った
イタさが全開であり、メインになれない的な
「お約束」を全力で吹き飛ばすかのごとく
欲望を爆発させ続けています。
何しろ、出会った小学生に下心込みで
ベタ惚れといった、イマドキ、じゃなくっても
まずいキャラ付けで、本来敏腕であるはずの
ラブやんもお手上げなダメさ加減が
満載されてもいます。
ただ、その割には不快感がなく、時折
男らしさや人格者な面を垣間見せながら、
とてもゆっくりしたペースであるものの
成長して、徐々に一人の人間としての
実力やら強さを身につけていくところが
見所です。
長期間の連載の中で十二分な時間が
取れなければあり得なかっただろう読後感が
全編を通じた後で味わえる、非常に
独自性のある一作だと言えるでしょう。