タイトル | リセット |
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原作・漫画 | 山本まゆり |
出版社 | ぶんか社 |
もう一度人生をやり直したい、
あの時に戻れれば……。
そんな多くの人が抱える望みを
「セーブポイント係」を自称する
アンリが叶えます。
TVゲームを起点に、
人生のリセットが展開される、
今流行の転生ものにも通じる
傑作漫画です。
リセットのあらすじ紹介
平凡な家庭である原口さん一家。
しかし最近は不景気で、
お父さんは職安通いだったり
少々生活は苦しい感じです。
娘のかおりにまで
「顔で選んだ」なんて話を
暴露されてしまい、
お父さんはやや意気消沈気味です。
そんなある日、隣の豪邸が
無事完成し、そこの住人、吉岡さんが
やってくることに。
挨拶にきた吉岡さんを見た
かおりたちはビックリ。
と言うのも、吉岡さんの妻子は
知人だった片桐さんだったからです。
原口さんの奥様にフラれて、
元気を失っていた吉岡さんを
慰めるうちにいい感じに、と、
結婚の経緯が語られます。
転校してきた千代美も
かおりの学校に転校して、
早速大人気となります。
もちろん、かおりたちにとって
面白い状況ではありません。
かおりの彼氏は千代美に夢中、
父親も職探しに挫折と、
冴えない日々が続きます。
そんな中、かおりたちは、
TVゲームでやる
「人生ゲーム」をプレイします。
そこでも納得がいかず、
思わずリセットすると、
見知らぬ少年が出現し……
(「人生ゲーム」より)
リセットのネタバレと今後の展開は?
美術の玉井先生に熱を上げる
女子高生、翠。
もっとも顔が良く人当たりが良い
先生を狙っているのは翠に限らず、
絵が上手いために「点数」を稼げる
翠は皆から羨ましがられる立場です。
しかし翠は、玉井先生と腕を組む
友達の由香を目撃。
彼女を問い詰めると、
実は玉井先生と交際している、
内緒にして欲しいと言われます。
悶々した気持ちのまま、
TVゲームを遊ぶ翠。
しかしそこでも良い結果が得られず、
リセットボタンを押すと、
人生のセーブポイント係である
アンリが登場し、リセットを
提案してきます。
玉井先生と良い仲になりたい、
そう考える翠は迷わずリセットし、
由香よりも先に美術室に向かいます。
しかし、翠が見たのは、
血相を変えた玉井先生の姿と、
翠と同学年の女子生徒の死体でした。
玉井先生は軽率な行動から、
彼女に恐喝されることになり、
結局衝動的に彼女を
殺害してしまったのでした。
恐ろしい事件に巻き込まれた翠は、
先生を助けるために、アリバイを作り、
少女の死体を解体し処理します。
事件のことは明るみに出ず、
玉井先生からは感謝されましたが、
もはや二人は共犯者であり、
決して恋人にはなれないことを
翠は痛感するのでした。
(「共犯者」より)
リセットの読んでみた感想・評価
いきなり嫌な過去を全部消せる
「リセット」もの作品。
それもホラー的な雰囲気ということで、
かなり心構えして読み始めましたが、
良い意味でホっとしました。
どんな悲惨な前提が、と思いましたが
アンリがリセットを勧める相手は、
ちょっとした悩みに過ぎなかったりと
割と楽な下地があったからです。
しかし、セーブポイントがあるのは、
すぐ先に難敵が待っているというのが
ゲームでの常識で、
割とサクサクリセットした彼らは、
意外なほどに苦しい、あるいは
悲惨な状況に追いやられていきました。
もっとも、アンリは救済措置を
用意してくれていたりもするので、
致命的にはならないことも多いですが、
しかし悲惨さを味わったという
記憶と経験は残るわけで、
リセットという夢の代価としては
かなり重いなとも感じました。
結局は平穏な日常が良いという
妥当な結論に至る感じですが、
時には自らが殺人をしたという
重過ぎる記憶と経験を持った中で
果たして本当に「日常」を
うまく過ごすことができるのか、
といった疑問も感じましたね。
また、やり直せる期間には
特に縛りはなく、
場合によっては予知能力者にも
天才にもなれることから、
いくらでもテクニカルな利用が
できそうですが、
頭脳戦にはならないことが多いのも、
作品の雰囲気を保つためには
良かったのではないでしょうか。
リセットはこんな方におすすめな作品!必見
もう一度やり直せればいいのに。
人生の中でこう思う機会は少なくないですし、
実際、作品に描かれることも多いですね。
特に最近はTVゲームの普及でリセットの
概念が一般化されたためか、
ファンタジー系でも「転生もの」や、
特殊な技術を使ってのやり直しを
テーマにした作品が特に全盛です。
本作「リセット」は、超科学的な
能力を介しての「やり直し」がテーマで、
発動条件も比較的緩いのが特徴です。
そのため、発動させるのに大金や寿命を
盛大に使ってしまい本末転倒に、的な
結果に陥ることは少ない感じですが、
どう転ぶのか分からないのが人生であり、
リセット前より悪い状況に
追い込まれてしまうこともあります。
もっとも、今や定番と化した作品を、
一流の非現実系ホラーに仕上げる
力量はとても特色あるものであり、
展開上どうしても物語が反復するのに、
まるで結末が読めなかったりと、
話として純粋に面白さがあります。
しかもただ怖いだけでなく、対象者に
じっくりと己を見直させ、良い選択を
チョイスさせようとしたりと、
決して単純な悪魔的存在として
見ることはできないアンリなど、
キャラクターも魅力的です。
リセットや転生が全盛の昨今では
「伝統的」とも言えるシリーズですが、
リセットを問題解決の手段にして
安易にクリアしていかない点など、
勉強になる部分も多いですね。