タイトル | 剣客商売 |
---|---|
原作・漫画 | 池波正太郎 さいとう・たかを、大島やすいち |
出版社 | リイド社 |
時は江戸時代
天下泰平の世に剣術を仕事とする
親子剣士の弱きを助け、
悪をくじく痛快時代剣劇。
無外流を極め剣のみを頼りにする息子と、
それを表裏から助ける父。
父子愛も同時に描かれている人情劇でもある
この二人の前にはばむ者は無し。
剣客商売のあらすじ紹介
無外流の達人、
秋山小兵衛は道場を息子・大治郎にゆずり、
己は鐘ヶ淵に家を建て隠居してしまう。
大治郎は剣の腕は立つが
世渡りの極意がまだ見に付いておらず、
弟子もいないありさま。
そんな彼が父の計らいで
御前試合へ出場の機会を得、
見事7人抜きの健闘を果たす。
その矢先、身なりは良いが怪しき御仁から
おかしな頼みを持ちかけられる。
「何も聞かずにある者の
両腕をへし折って欲しい。謝礼は弾む」と。
果たして誰を
何の目的で怪我を負わせたいのか?…
大治郎は訳の判らない頼みは聞けぬと断る。
翌日、一応
父・小兵衛に事と次第を報告すると
父は息子に意外な助言をする。
剣客商売のネタバレと今後の展開は?
原作が時代小説の巨匠、
池波正太郎氏が手がけた
昭和時代からの作品を漫画にしてあります。
小説を読まれている方は
おおむね展開が判ります。
あくまで、
小説ありきのストーリー構成ですから
事の結末も変わりません。
多少、さいとう氏と大島氏の脚色が
違う部分も見られるものの本筋には
全く手を加えられずに描かれています。
池波氏はすでにお亡くなりですので、
小説の方も当然完結しています。
基本、物語は1話完結で書かれていますが、
長編小説が主体となっています。
一つ当たり100ページ前後からなる物語を
絵に起こす作業になりますから、
おのずと1話分の量も多くなります。
よって1巻あたり
4話程のエピソードになります。
シリーズは
文庫本で18巻位発行されていますから
エピソードの数もかなりの量です。
それをさいとう氏は劇画調タッチで
バイオレンス風に…
大島氏は少年漫画よりのタッチで
さわやかな感じに…
それぞれの持ち味で描かれています。
原作は同じでも違った印象になっています。
剣客商売の読んでみた感想・評価
池波正太郎氏の小説の世界観を壊すこと無く
上手く仕上がっていると思います。
秋山小兵衛のとらえどころのない物腰から、
殺陣(たて)シーンの研ぎ澄まされた緊張感へ
…描写のめりはりが絶妙でした。
息子・大治郎のまだうぶな武芸者の感じが
よく出ています。
さいとう氏の方では無骨な所が強調され、
大島氏の方は
初々しさが前面に出ている感じです。
双方とも大治郎の剣術では
鮮やかな剣さばきを披露されていて、
見応え充分になっています。
それにしても
秋山小兵衛ほどの達人をもってしても
若い女性の魅力には敵いません。
下女のおはるについ手をつけてしまい、
バツが悪そうに息子に報告する…。
その場面を描写すると
こんな感じなんだな
と思え、どちらも笑えます。
この二人にかかると中途半端な腕の浪人が
どれだけ束になって襲いかかろうと、
あっという間に倒してしまいます。
その凄さは本当に痛快です。
女剣士のエピソードでも存分に
その実力を発揮されています。
本物の達人とは小兵衛のような人で、
大治郎の方はどちらかといえば
剣豪と呼ぶに相応しいと思います。
剣客商売はこんな方におすすめな作品!必見
時代小説ファンや時代劇ファンには
ぜひ読んでもらいたい作品です。
特に池波ファンには
間違いなく満足していただけるはずです。
もし時代劇ファンでなくとも、
いわゆるチャンバラは好きという方なども、
きっと読んでもらえれば楽しめるはずです。
普段、時代小説しか読まない方にも、
たまに小説を元にした漫画を読むと、
また違った趣を楽しめると思います。
想像の中で思い描いた人物像を
この作画者が描かれるとこうなるのか…
そんな答え合わせの気分で読むのも
楽しみ方の一つではないでしょうか。
また、時代劇ファンはすでにドラマで
ご覧になられているはずですから、
抵抗なく読めます。
演じていた俳優さんに
漫画のキャラが似ているかどうか
確かめていただきたいところです。
そしてもし、時代物に全く興味が無い方には
入口にするのに程よい作品だと思います。
決して堅苦しくなく、ちょっとした謎解きや、
ラストの方での剣劇…
話しの内容がバラエティーに富んでおり、
愉快な登場人物も豊富に登場します。
父子の会話の真面目かつ
力の抜けた二人のうまく噛み合わない感じに
つい惹き付けられてしまいます。