タイトル | 妖しのセレス |
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原作・漫画 | 渡瀬悠宇 |
出版社 | 小学館 |
普通のどこにでもいる女子高生だった
少女・妖が、ある日突然一族の敵として
命を狙われることに。
妖の身体に蘇った天女・セレスと共に
羽衣を求めた壮大な戦いが始まります。
何の力も持たない少女だった妖が
宿命と向き合い心身ともに成長する姿、
そしてこの作品のテーマである男と女、
命、愛について考えさせられます。
妖しのセレスのあらすじ紹介
普通の女子高生である御影妖。
しかし彼女の運命は16歳の
誕生日を迎えてから激変する。
御影家の祖先は天女を
妻としたのだという。
そして非業の死を遂げた天女
は御影家の娘が16歳を迎えた時に
その肉体に蘇る。
天女は羽衣を夫に奪われたため
天に還ることが出来ないのだという。
妖は彼女と結託し、羽衣を何とか
天女に取り戻させ一族を憎しみから
滅ぼそうとすることから
手を引かせようとする。
天女の持つ未知なるエネルギーを
利用しようとする者、
妖以外にも存在する覚醒した
天女の子孫の少女たち。
古代から幾重にも絡まってきた
愛と憎しみの宿命を妖は
生き抜くことができるのか。
妖しのセレスのネタバレと今後の展開は?
御影家は天女の遺伝子を用いることで、
天女の子孫である女性たちを
人工的に覚醒させ、
優秀な人類を産み出す
母体とするプログラムを進める。
妖を支えてきた天女として覚醒した
友人たちも次々と熾烈な
戦いの中命を落とす。
御影家の始祖は
妖の双子の兄の身体に蘇り、
昔の妻である天女・セレスを求める。
妖の身体に蘇った天女・セレスは
無理やり御影家の始祖たるミカギに
妻にされたと説明されていた妖だが、
それは偽りだった。
「天女」とは一体何者なのか。
その真相は、いかなる姿にも変化し
未知のパワーを引き出す遺伝子を持つ、
雌のみの生き物。
羽衣は本当の名を「マナ」といい、
天女はこのマナと一体化することで
完全体となる。
そして天女の目的とは
「優秀な子孫を残すこと」。
そのため、羽衣が選出した
優秀な遺伝子を持つ人間の
男の子どもを産む。
セレスを愛するあまり天に還ることを
恐れたミカギは羽衣を
隠してしまったのだった。
そして妖の恋人であり、天女の力を
無効化し手から剣を取り出すといった
謎の存在であった十夜の正体。
それはミカギがセレスから奪い
海の底へと沈めたマナが、
遠い月日を重ねて進化した姿だった。
十夜は自分が長く生きることが
出来なくなることを覚悟して、
己からマナを取り出しセレスへと返す。
完全体の天女となったセレスは
ミカギと己を完全に
この世から消し去った。
余命わずかとなった十夜は、
妖と二人の間に宿った新しい命と共に、
壮大な戦いのすべてを背負って
これからも生きていく。
妖しのセレスの読んでみた感想・評価
昔から日本に伝わってきた
「羽衣伝説」を天女=宇宙人という
大胆な解釈には驚かされた。
ごく普通の女子高生だった妖が
親族から命を狙われ、
自分の肉体を天女と呼ばれる
謎の存在と主導権を奪い合い、
数々の仲間や友人を失い
怒涛の運命に翻弄されていく。
少女漫画でもなかなかこれほど
登場人物の命が次々と奪われ、
異能力で戦う描写がある作品は
そうないと思う。
特に中盤からは作品のテーマの
一つでもある「男と女」が、
濃密な心理描写と共に描かれる。
妻であるセレスを愛するあまり、
狂っていき妄執にとりつかれるミカギ。
この夫婦の始まりは純粋な愛だったが、
セレスは人間ではなかったがために
愛というものを理解できず、
二人はすれ違ってしまう。
これが現代の妖に至るまで
一族の悲劇を産み出すきっかけと
なってしまうのがなんとも切なかった。
最期消える前に、ミカギに自分を
本当に愛していたのかと問うセレスに、
お前は分からなかったのかと返したミカギ。
異種間である二人が分かりあうまでに
太古よりこんなにも
時間がかかってしまった。
主人公である妖とその恋人十夜も
結果としては異種間の恋愛だった。
それでも彼らが互いの愛を
信じることが出来た違いは何か。
それはやはり純粋に愛情というものを
知っている妖と、天女という生き物として
本能でのみ男を求めてきたセレス。
異能な力を持ちつつもそれを
妖を守ることに決めた十夜と、
得た力をセレスを自分のもとへと
縛り付けることに使ったミカギ。
ここなのではないかと思う。
妖しのセレスはこんな方におすすめな作品!必見
妖しのセレスは主にテーマとして
「男と女」、「愛」、「命」
なのではないかと思う。
作中でも何度も妖やセレスといった
登場人物たちはこのことで葛藤する。
ミカギは愛というものは
幻想にしかすぎず、男が女を欲するのは
本能だからという。
そんな彼をあざ笑うかのように
天女という生き物そのものが、
雌として種を存続させるために
優秀な遺伝子を持つ男を求めるという皮肉。
しかし、本能に支配され、
苦しめられていた二人の真実は
愛の存在だった。
愛と本能の境目は何だろう?
命が紡がれていくということに
一体どんな意味があるのだろう?
読者は読み進めていくことに
妖たちと共にその答えを探すことになる。
男女や時代も問わない
普遍的なテーマなのだと思う。
また、「羽衣伝説」について
日本全国に実在するあらゆる
天女に関する民話が
ストーリーに絡んでくるので
民俗学に興味がある方に
とっても面白い題材だと思う。
日本に限らず海外にも似た
人間でない女性が、男性の妻となる
物語も絡めて作者がSFとして
話を展開しているのも
たいへん興味深いのでおすすめ。