タイトル | 婚渇女子 |
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原作・漫画 | 小林拓己 |
出版社 | 少年画報社 |
コツコツと漫画家を続ける小夏と、
イケてる編集者として活躍する芽衣子。
正反対の親友二人は、三十歳を前に、
結婚ができないという現実と
ぶつかることになってしまい……。
男性から見ても魅力的な女性たちの
しかし根拠のある非モテ描写と
奮闘ぶりを楽しむことができる、
新感覚婚活漫画です。
婚渇女子のあらすじ紹介
漫画家生活を十年も続け、
オシャレはまったく気にせず、
画業一筋を貫く小夏と、
キャリア系の雑誌編集者として、
お金と美貌を武器に男性を
手玉に取っていく芽衣子。
そんな正反対の生き方をする
親友二人は突如として、
「結婚できない」という、
共通の大きな壁に
ぶつかっていくことになるのでした。
元々ルックスもスタイルも良く、
社会的な立場もある芽衣子たちですが、
それだけにちょっとした努力や就業では、
状況を抜本改善することはできず、
結婚に至る道のりは、
そう簡単には開けなかったのです。
婚渇女子のネタバレと今後の展開は?
呼ばれた友達の結婚式。
一生に一度を予感させる渾身の晴れ舞台で、
漫画家の小夏と編集者の芽衣子は、
「結婚なんて興味ないし」と、
周りが引くような会話を繰り返していました。
しかし実際のところ小夏には、結婚式場でも
ぐずる子供の面倒に忙殺されていたり、
夫の目を気にして早々に退席したり、
はたまた姑への愚痴を漏らす周囲の姿に
「幸せ」を感じられず、漫画一筋の
生活を続けていました。
もっとも小夏は売れない漫画家で、
二十九歳にして「新人十年選手」という
長いキャリアを持ってはいるものの、
オシャレもせず、住居に関しては
芽衣子のところに「居候」という
冴えない状態でもありました。
とは言え小夏も、担当編集に
持っていった原稿を絶賛されるなど、
仕事的には順調であり、
さらには新連載のネームも
担当の山県に絶賛されて、
今までにない追い風の予感がありました。
小夏はノリノリ状態になり、
知り合いのカフェ店員三条にも、
強烈な手応えをアピールするなど、
もの凄い上機嫌の最中にありましたが、
そんな中ふいに山県が、若い女性作家優と
会っているところを目撃します。
山県は悪びれずにこやかに、優を先輩の
小夏に紹介しますが、優の方は、
無邪気に小夏を傷つけてきて、
小夏の方としても学生の趣味半分で
漫画を描いているような優に
反感と嫉妬を覚えていきます。
しかも優と入れ替わるように
戻ってきた山県によって、
連載の話が消えたと知らされた小夏は、
泣くほどの悔しさを味わい、
髪をばっさり切った上で、
山県との決別を宣言するのでした。
婚渇女子の読んでみた感想・評価
冴えない男性、あるいは女性が
社会人になってからの「一発逆転」を
全力で狙っていったりするのが、
いわゆる「婚活もの」の定番であり
醍醐味とも言える部分ですが、
本作はかなり趣きが違いますね。
小夏は売れないとは言うものの、
まだ二十代でありながら、
十年選手の漫画家をやっており、
芽衣子に至っては、ファッション誌の
編集をしながら高級ブランドに
身を包むキャリア女性です。
しかも二人ともルックスが良く、
体型も崩れていないのですから、
見た目からして美しく、
結婚相手を探すにも苦労しないと
思われつつも実は、なかなか
相手がいない状況です。
創作世界ではたまにいる、
容姿抜群なのに不思議と
恋には縁がない「非モテ系」の
キャラにリアルさを肉付けした、
そんな感じの描写とも言えますが、
その肉付けのスゴさが本作の特徴です。
いかにも漫画的な感じで、ヤバい
性格設定などの明確さが一切ないのに、
物語を読み進めてから、改めて、
冒頭を読み返したりしてみると、
「ああっ、なるほど」と
思ってしまえる絶妙さなんですね。
しかし二人はそれぞれ
自分の「持ち場」の中で生きているので、
そうそう自分を変えられないなど、
考えれば考えるほどリアルに、
状況から脱出できなくなっているのが
分かるのが面白いところです。
リアルな非モテ感に加えて、
「こんなにスゴい女性がフリーならな」と
思わず抱いてしまう願望まで加わった、
魅力溢れるキャラ造形などもあいまって、
独特のクオリティを感じました。
婚渇女子はこんな方におすすめな作品!必見
結婚をしたいと考えている人は多く、
結婚よりも仕事を考えているという人も
また多いというのが現代の状況ですが、
しかし一方の現実として、
「したい」と「できる」はかなり違うのも
また認めざるを得ません。
そうした中多くの作品で、昔ながらの
お見合いや「伝統的な」合コンとも違う
「婚活」がテーマになりつつありますが、
多くは本当に「デキない感じ」だったり、
逆に魅力的過ぎたりして、リアル感や
読者からの「欲」が薄いのが難点でした。
しかし本作の小夏と芽衣子は、
それぞれタイプは違うもののルックスも
スタイルも良く自分のフィールドを持つ、
完璧な「デキる女」でありながら、
リアルな「ズレた感」も滲んでおり、
読者としては実に納得いく感じです。
単に何らかの要素が「不足」した
そんな感じだけではない、読者が
モノにしたいたくなってくるような、
ちょっと危うい魅力のある二人の
「奮闘」ぶりを楽しみたい方には
極めてオススメできる一作です。
また、いかにも女性向けっぽい
題材ではあるのですが、小夏たちの
容姿だけではない微妙な部分に、
非常に「男好き」する要素が
多数盛り込まれているため、
男性向けとして成立しています。
究極的にはモテない女性を
題材にさざるを得ない状況で、
こうした効果を生んでいるのは、
画力や細かい仕草が凄いからで、
そうした部分だけでも一見の
価値は十分にあるとも言えます。
いわゆる「非モテ」系を
テーマにした今時系作品かと思いきや、
ヒロインたちは相当にデキる女性で、
しかし様々な些細な部分に、確かに
非モテの理由が滲んでいるような
絶妙な描写が光っています。