タイトル | 少女終末旅行 |
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原作・漫画 | つくみず |
出版社 | 新潮社 |
文明が滅亡し、死滅していく終末世界に
二人だけ残ってしまった
二人の少女──チトとユーリ。
ケッテンクラートに乗って、
終わり逝く世界を歩んでいく.
当てのない、目的も無い、
ただ終末へと歩んでいく二人の旅の物語。
これは、そんな世界を前向きに
生きる少女の終末旅行である。
少女終末旅行あらすじ紹介
崩落しかけたトンネル内を進んでいく、
一台の乗り物があった。
前輪はタイヤで走り、
後部はキャタピラの付いた
荷台が備え付けられた乗り物。
半装軌車とも呼ばれる、
かつては「ケッテンクラート」と
大きな戦争に使用されたことのある乗り物.
崩落しかけのトンネル内を、
ただ道なりに進んでいた。
灯りも無く、今が夜か昼か、
それとも朝を迎えたのか、
夕暮れなのかもわからない、
時間の流れが止まってしまっていた。
時間から取り残された、
そんなトンネルを進んでいた
「ケッテンクラート」を
運転していたのは、一人の少女。
名前はチトと、荷台で退屈そうにしていた、
もう一人の少女ユーリにそう呼ばれていた。
二人が何で、こんな薄暗い地下を
進んでいたのか、それはユーリの何気ない
一言が始まりだった。
あの穴に入ってみようと、
崩れた扉の中に興味を持ったユーリ。
こうなってしまえば入るまで
気が済まない彼女を納得させるために、
地下へと入ってしまったチト。
当の本人はそんなことも忘れ、
退屈と嘆くばかり。
……これは、終末を迎えた世界を旅する
少女二人の日常を綴った、
最後の人類の物語である。
少女終末旅行ネタバレ・今後の展開
自分の欲望と食欲に忠実で、
マイペースな日々を送る少女ユーリ。
そんな彼女に振り回されるも、
ほっておけないしっかり者な
チトの二人が歩む、終末世界。
ふと立ち寄ったトンネルの中を
進んでいく二人。
出口は無く、光もケッテンクラートの
ライトのみと、真っ暗闇の中を
ひたすらに進んでいきます。
が、その当事者でもあるユーリは、
退屈だと騒ぎだします。
チトは手慣れたように
お前が入りたいから
入ったんだろうと、返します。
でもユーリは、マイペースに
「穴があったら入りたい」
って言うじゃんと言います。
そんな意味の言葉だったかなと、
首をかしげるチト。
今はとにかく出口を探さなければと、
運転に集中し直します。
出口は無く、ただ深く暗いトンネル内。
これからの自分達の先行きを
連想させる様な深い暗闇に、
不安を抱いてしまいます。
これからも生きていく分だけの
食料が手に入るのか、
自分たち以外の人に出会えるのかと、
悩みが付きません。
これからどうなるんだろうと、
不安を紛らわすようにチトは
ユーリに話しかけます。
彼女はお気楽に寝息をたてていました。
溜息をつき、ケッテンクラートを停めて、
チトは私も寝ようと、ユーリに
布団をかけて荷台に横になります。
空腹を紛らわせながら眠りにつく彼女。
寝てからしばらくしてもちゃもちゃと、
右手に伝わる変な感触で
目を覚ましてしまいます。
ユーリに手をしゃぶられ
ヨダレまみれにされてしまった
右手を眺めていると、
風が吹く感触が右手を撫でてきます。
ユーリを起こし、風が吹く場所を
進んでいくと、二人はやっと
外に出る事ができました。
でも、外は夜でしたが、
星々と月明かりで照らされ輝いていました。
ずっと暗がりのトンネルの穴の中を
進んでいたせいで、
明かりに敏感になっている二人。
眩しい夜空に感動しながら、
無事に出られた記念に
スープを飲む事にします。
最後の一缶でしたが、
記念だからと言うことで
飲むことにした二人。
温めたスープの味にホッとしながらも、
世界はいつものように静かで、
廃墟だけが並ぶ。
打ち捨てられた武器と兵器だけが
転がる世界が続いていました。
そんな終末の世界を、
彼女達は前向きに生きていく。
これはそんな物語です。
少女終末旅行読んでみた感想・評価
残酷なまでに人類が死に絶えていく
終末の世界を描いている「少女終末旅行」
つくみず先生描く、
可愛らしくあどけない少女のチトとユーリ。
二人が織り成す、死にゆく世界に
微かな希望を感じられると、
生きる事に温かみを感じられる、
そんな作品でもあります。
彼女達がいる世界は、
大きな戦争が起こってしまい、
結果として人類は滅亡へと進んでいく。
生き残ったごくわずかな人々が、
それぞれに終末と向き合い、
ただ前向きに生きていく日々。
それをありのままに
描いている作品とも言えます。
戦争によって壊された建物や、
廃墟と化した街々。
そして打ち捨てられた兵器に、
かつての文明を支えた機械などが遺る。
誰もいなくなってしまった世界。
当てもなくに、食べ物を探し、
役に立つものを拾い、
ひたすらに進んでいく二人。
今日を生きる事を前提にし、
明日も解ら無い世界に絶望を抱く事なく、
ただマイペースに今を生きていくチトとユーリ。
そんな変わらない生き様に、
どことなく力強さを感じてしまえるような、
可愛らしい少女。
にもかかわらず、逞しく、強く、タフネスな、
人間が持つ単純な程の生き様が、
この作品の魅力とも言えます。
もし自分がこんな状況だったのならと、
こんな二人みたくに生きられるのか。
終末世界に動じることなくに、
新しい発見を純粋に感じながら
滅びた世界に感動を覚えていく。
彼女達の純粋な直向きさは、
幸せを感じる事の出来る、
その素直さで満ちています。
この物語の中で息づく二人は、
純粋な気持ちで終末の世界を楽しむ。
その果ての先に向かって進んでいく、
人類の最後の物語で演出されていることが、
この作品の最大の魅力とも言えます。
この二人の旅路の果てに、
どんな結末が待っているのか?
そんな物語の終わりを見ていきたいと思える、
そんな漫画作品です。
ただ純粋に終末世界を生きようとする少女を描いた作品
生きる事の強さを知りたい時に、
また生きる感動を覚えた時。
そして生きる直向きさを知りたい、
そんな生への希望に満ち溢れた作品を
読んでみたい人に進めたいのが、
この「少女終末旅行」です。
世界の終末を題材にした作品は、
これまでに沢山ありました。
しかしその作品の多くには、
絶望や足掻き等があり、
救いへの希望は微かなものでしかない。
結末によっては絶望のままに
終えてしまう物語もあります。
が、この作品の中には、終わり逝く世界に希望を持ち、
感動を覚え、ただ純粋に
生きようとする力強さが、
この作品には描かれています。
戦争で失われた文明と、
滅びゆく世界にも関わらず、
見る事や知る事に感動を覚えます。
微かな食事や
一時のゆとりなどに満足な幸せを感じる。
ただ悲しみに暮れるのではなく、
終末の日常を生きていく少女のチトとユーリ。
彼女達は世界に何かを求めているのではなく、
ただ生きて進んでいくのだ。
平和な日常とは何も変わらない、
終末の世界をありのままに受け入れ、
前向きに進んでいく。
そんな終末世界に生きる二人が、
輝かしく眩く見えてしまう。
生への希望に満ちているのが、
儚くとも悲しくとも、
結末が解っていながらも、
この二人ならと希望が持てる。
そんな暗がりに見える、
微かな光に満ちている彼女達の日常が、
面白いのが最大の魅力とも言えます。
自分の日常に希望を持ちたいと迷う人。
チトとユーリの微かな希望を見てみれば、
自分の人生も捨てたもんじゃないと思えるような、
そんな作品とも言えます。