タイトル | 新クロサギ |
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原作・漫画 | 夏原武 黒丸 |
出版社 | 小学館 |
様々な背景を背負い、
一般人を標的にする「シロサギ」や、
異性対象の「アカサギ」を、
逆に騙す「クロサギ」となった黒崎。
その容赦なくシャープなやり口は、
新シリーズでも健在
詐欺師以上の黒崎の頭脳が冴える、
読むと詐欺の手口に詳しくなれる、
社会派ダークヒーローものの傑作です。
新クロサギのあらすじ紹介
一般人をカモにする「シロサギ」や、
異性を相手にする「アカサギ」を、
狩る専門家である「クロサギ」。
まだ二十代前半の黒崎も、
そんな「クロサギ」として
情報を貰っては仕事していました。
ある日黒崎は銀行で、
オレオレ詐欺に引っかかった
年配の婦人を発見、
一応注意はしたものの、彼女は
いわゆる「多重詐欺」の標的と
詐欺師から見なされており、
矢継ぎ早にかかってくる電話に
完璧に翻弄され、次々と大金を
支払うことになってしまいました。
しかし女性は詐欺に気付かず、
弁護士を名乗る男と
お店で会う約束をしますが、
そこにいたのは弁護士や詐欺師ではなく、
ラフな格好をした黒崎でした。
新クロサギのネタバレと今後の展開は?
一般人を狙っていく「シロサギ」、
異性の感情を利用する「アカサギ」、
詐欺師にも様々な種類がありますが、
シロサギやアカサギを専門に狙う、
「クロサギ」と呼ばれる男が
存在していました。
ある背景から「クロサギ」を続ける
黒崎 高志郎は、「運送詐欺」という
手口の詐欺を耳にします。
元々は「ガッチャン」と呼ばれる
ヤクザの「仕事」であり、
壊れかけた物を運ばせ、
運送中に壊れたら弁償として
大金をせしめるという手口で
古典的な方法ではありますが、
今回標的となったのは有田焼、
割ってしまったのはプロの
運送業者であり、
本来破損が起こるはずがない
安全な状況での事故でした。
その話を聞いた黒崎は、
割れた有田焼が贋作とみて
「仕事」を開始します。
事件の犯人は、元ヤクザの宗田と、
美術商の河野という男たちで、
彼らが会社を「道具」に使い、
大掛かりな詐欺を働いたことが
明らかになってきます。
黒崎は多くの古物がある家の
息子という設定で河野と接触、
信用させ、様々な方法で
シロサギを罠に追い込んでいきます。
新クロサギの読んでみた感想・評価
相変わらずのシャープさに
思わず痺れてしまいました。
古典的かつ典型的な
オレオレ詐欺に騙された
おばあさんの前に颯爽と現れ、
自分の詐欺師という正体を
あえて明らかにしつつ、
若い詐欺師たちを逆に
カモり返したりと、
職業柄からすれば明らかに
不利益になりそうなことでも
黒崎はきっちり動いて、
任務を遂行していくわけです。
これで失敗したら単なる
甘い詐欺師になってしまいますが、
一点の曇りもなく、素早く確実に
お金の回収を成功させてくるから、
たまらなく格好良いんですよね。
とは言え黒崎は詐欺師からとは言え金を
だまし取る人間であり、
しかも詐欺師が持つ大金は、結局
騙した人たちのお金なのですから、
決して「善」とはならず、
その「悪」の部分をも明確に
描き抜いているのが本作の
魅力と言える部分だと言えます。
全編において現実的な詐欺の
ハードかつ容赦ない話が連続し、
面白く読んでいく間に、
詐欺の手口に対する知識と
「免疫」が身につく感じなのも、
読者としては嬉しいところでした。
今では毎日のように巨額詐欺の話が、
様々なジャンルでなされていますが、
それだけに本作のような作品が
有意義かつ重要になっていると
改めて思いますね。
新クロサギはこんな方におすすめな作品!必見
相手の裏をかき上回る知略戦や、
格好良い「騙し」の世界を描く作品は
今までにいくつもありましたが、
それらの良作たちは、現実のえげつない
「詐欺」の世界とは開きがあり、
リアリティの部分で弱みがありましたが、
徹底して現実的な手口の提示と
そうした犯罪を行ってくるワルたちを
彼ら以上の知力と機転で叩きのめすのが、
ドラマや映画にもなった「クロサギ」の
面白さでありパワフルなところですが、
新シリーズの本作でも作風は健在、
巷に巣食う悪党たちを、黒崎が
一刀両断にする痛快さと、
うっかり誰でも引っかかりそうな
詐欺の手口のリアルな怖さは、
まさしく「クロサギ」的であり、
悪質なオレオレ詐欺や
悪徳商法が流行る今だからこそ、
社会の要請に合ったものであり、
娯楽的な面でも教養的にも
老若男女多くの方に
読んで頂ければと思うものがあります。
また物語の本筋としても、
色々な背景を持つために詐欺師になり、
非道を斬り続ける黒崎と、
そんな黒崎を追う人々、
対峙する強敵たちという形で、
単なる一話完結型の
詐欺師のお話で終わらないだけの
軸の強さがありますね。