タイトル | 新黒沢 最強伝説 |
---|---|
原作・漫画 | 福本伸行 |
出版社 | 講談社 |
かつてホームレスを守るため、
暴走族と「伝説」の戦いをした
中年男、黒沢。
彼は戦闘の後遺症で長らく
寝たきりかつ無意識でしたが、
女性のいない天国に嫌気がさし、
どうにか意識を回復させますが……
前シリーズよりもさらにきつい中、
必死でもがく黒沢が印象的な
笑えて共感できる作品です。
新黒沢 最強伝説のあらすじ紹介
かつて平凡な中年でありながら、
ホームレスを襲う暴走族を撃破した、
「伝説」の男黒沢。
死力を尽くした戦いのために
植物状態になり、以来八年、
彼はかつての敵、御木に
治療される形で生きていました。
居心地が良いが女性が皆無な、
しかも実は全員自分という
天国を拒否した黒沢は、
奇跡的に意識を回復するものの、
なかなかすぐに元通りとはいかず、
手は動くが足は動かない、
言葉もうまく喋れない状態でした。
しかし、見舞いも減ったある日、
御木が女子大生と合コンすると知り、
奇跡的な力を発揮。
言葉と歩行を回復させただけでなく、
合コンに参加したいと言い始め……
新黒沢 最強伝説のネタバレと今後の展開は?
あの「伝説」から八年、
かつての敵、御木が院長の病院で
寝たきりだった黒沢は、
生きることを選んで目覚めたものの
体は動かず言葉も満足に喋れない状況。
超長期にわたって臥せっていたとは言え
これでは何もできないですが、
御木のヤバい治療から逃れ、かつ、
一時的にチヤホヤされることに成功。
しかし、調子に乗った黒沢は、
看護師にセクハラをかましては
ぶん殴られたりとどうにも冴えません。
そんなある日黒沢は、御木が
イケメンの後輩と一緒に
合コンに行こうとしているのを目撃。
冗談じゃないと死力を振り絞り、
御木の奥さんに密告するために
言葉を復活させると、
さらには女子大生との合コンに
同行するためだけに立ち上がり、
歩行を回復させてみせます。
とてつもない回復力に御木もOKを出し、
いざ合コンというところで台風が直撃、
しかし黒沢はまるで諦めず、
あらゆる点でギャップのある
合コンに参加するのでした。
しかし、そんな必死の思いで
参加した合コンでも空回りで……
新黒沢 最強伝説の読んでみた感想・評価
まさか、そう来るか、と思いましたね。
特に私は前シリーズのラストで
大いに感動したので、
あれだけの死に様を見せた黒沢さんが
実は生きていて八年越しの復活、
なんて予想もできませんでした。
しかも密告と合コン目当てで
会話能力と歩行能力を回復と、
斜め下の規格外さを発揮し、
会いにきた後輩の姿に
勝手に早とちりをして
病院を出て行ってしまうなど
何とも冴えず、しかも滑稽なのは
前作とまったく同じです。
しかし、寝たきりで八年過ごし
五十代半ば、定職なし住居なしと
きつさは以前よりもはるかに
明確なのに、何故か笑えるのが
素直に凄いです。
そして行き場のなくなった
黒沢さんと出会い、絡んでいく人々も、
多くは人生にうまくいかず、
しかし決して諦めたりはしない、
何とも「味」のある人たちです。
社会的には無名で地位もない分、
「素」の凄みが強調されています。
優秀なキャラや成功談を描くより
難しいであろう仕事をやっている、
そのあたりが本作が心に染みる秘訣、
なのかも知れませんね。
新黒沢 最強伝説はこんな方におすすめな作品!必見
冴えない男が一つのきっかけで伝説を作る。
そうした事例は少なくありませんし、
物語的にも割と定番な部類です。
では、伝説を成し遂げた後どうなるのか。
格闘技やスポーツならまだしも、
「仕事」にはならない喧嘩の場合は?
金や名誉を得られなかったなら、
一体「彼」はどこに行くのでしょうか?
……という問いに、本作は極めて本気で
しかもボカシ一切なしで応じています。
そのリアリティが他作品とは違うのも、
冒頭を読んだだけで理解できます。
まさか「あの」黒沢が、長い間
病院のベッドで寝たきり、
しかもかつて襲撃してきた
暴走族の御木が院長をしている
病院で治療を受けているなんて。
しかも文字通り命懸けで助けた
沢山の人々の助けも得ずに
一人寂しく旅立ってしまうとは。
確かに、正しいのかも知れません。
十年近く前のローカルな「伝説」に
「価値」などありません。
寝たきりの分体力も落ち、
随分歳を取った黒沢さんには、
現場での働きも期待は難しく、
もう一度本当の意味で
「社会復帰」するのは
なかなか大変でしょう。
しかし、大体のお話なら、
何らかのビッグな救済措置を
用意しておくところですが、
本作はそれこそ徹底的に
リアルに、しかもそれを
笑える形に仕上げています。
実際、五十代半ばの中年が
前置き一切なしで、
女子大生との合コンをするために
寝たきりから回復し、
しかも大撃沈したりなのですから、
文句なく笑える面白さが満載です。
しかし、笑えるのも生きていればこそ。
黒沢さんの強烈過ぎる必死さには、
生きることそのものへの
熱く爽やかなエールのようなものが
込められているように思いましたね。