タイトル | 日日(にちにち)べんとう |
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原作・漫画 | 佐野美央子 |
出版社 | 集英社 |
特別な日にしか食べられない、
高級な料理もおいしいですが、
やはり普段から食べている
手作りのお弁当が落ち着きますね。
デザイン事務所勤務の黄理子の
毎日のお弁当をアクセントに、
ちょっと複雑な人間模様と
心温まるやり取りを描く、
色々な意味でおいしい弁当漫画です。
日日(にちにち)べんとうのあらすじ紹介
デザイン事務所に勤める黄理子は
女優を母に持ってもいましたが、
その母紅子とは折り合いが悪く、
ようやく回ってきた大仕事が、
母親にもつながっていると知ると
断りを入れたりするほどでしたが、
一方で紅子がピンチとなれば
すぐに駆けつけて料理を作るほど
彼女を気にかけてもいました。
一方の紅子の方も、黄理子には
まだ水入らずとはいかないものの
特別な感情を抱いており、
黄理子の弟の青太郎も、
家族三人で楽しい食事が
将来の夢というほどに皆が大事でした。
一方これまで、奔放な紅子とは違い、
男性とは縁がなかった黄理子も
会社の上司である主任に
普段とは違う感情を持つなど、
変化の季節を迎えてもいました。
日日(にちにち)べんとうのネタバレと今後の展開は?
デザイン事務所に勤める
アラサー女子の谷黄理子。
まだ小さな仕事しか
任せられてはいないものの、
テキパキ真面目にこなす彼女に、
本の装丁デザインという大仕事が
回ってくることになりました。
その本は黄理子が愛読している
「山里だより」というもので、
装丁に不満を持っていた彼女は
思いを主任に語りますが、
それを原作とした話に
谷原紅子が主演することを知り、
仕事を断ろうとします。
実は紅子は黄理子の母親なのですが、
放って置かれた辛い経験が黄理子にあり、
今でも離れ離れの状況だったのです。
しかし結局取り組むことになり、
しかもコンペということで
さらに力を入れることになる一方、
弟の青太郎から紅子と自分に対する
思いを聞かされたりもします。
黄理子はずっと紅子のことを
母親らしくないと思っていましたが、
青太郎は画一的な「母親らしさ」は
そこまで大事だと思っておらず、
それよりも皆で笑って食事でも
できる状況を夢見ているのだと
ズバリと言い切ります。
弟の態度に一本取られたと
思いつつも黄理子は
コンペの結果を待つことになります。
日日(にちにち)べんとうの読んでみた感想・評価
ちょっとあり得なさそうな部分と
等身大な部分が絡まりあって
とてもいい塩梅を感じました。
本作のポイントは、何と言っても
主人公の黄理子さんですね。
クリエイティブな仕事を
サラっとこなすクールさと、
お弁当や料理に手をかける
家庭的な感じを両立させつつ、
メガネを外すととても美人。
まさにできる女性という感じですが、
お弁当へのこだわりのために、
主任からお小言を受けたり、
逆に主任にツッコミを入れたりと
憎めない部分もあります。
ただ彼女は女優であるお母さんに
無視されるように育った経緯があり、
複雑な感情を抱いていますが、
そこでドロドロの人間ドラマや
サスペンスのような感じにならず、
ゆっくりとわだかまりを超える彼らに、
良い意味での成熟を感じましたね。
また、いい母親とは言えない紅子や
いい社会人ではない青太郎にしても、
確固とした「自分」を持っており、
それぞれのやり方で頑張って、
社会を生き抜いているところも
好感が持てますし、
そうした登場人物たちを癒す
役割をお弁当が果たしているのも
安心感があって良かったですね。
日日(にちにち)べんとうはこんな方におすすめな作品!必見
色々な料理を主題とした作品の中でも、
背伸びをしたようなグルメではなく、
やはり普段食べる料理の方が
ほっとするということも多いですね。
では普段から食べるお料理は何かとなると、
やはりお弁当ということになってきます。
旅行や遠出の際に食べる駅弁も、
もちろん気分的にも嬉しくて
味もおいしいのですが、
もう少し地に足がついた本当に手作りの
お弁当はやはりほっとする感じがあり、
ともすれば複雑になりそうな本作の
メインに据えるにはぴったりの題材です。
料理人をうならせるような材料も、
目を見張るほどの技巧も出ませんが、
毎日食べても飽きないし安心できる、
そんな手作りのお弁当のある風景を
堪能したいのならば本作は最適です。
また人間ドラマとしても、
幼少時放って置かれた
黄理子とその母の紅子、
そして黄理子の弟青太郎の、
バラバラに思えるようで
実はどこかでつながっている
心温まる関係を満喫することもでき、
昨今多い「毒親」ものの漫画とは
また違う距離感が心地良さを
生み出してもいるようです。
そして、お弁当箱が進行役
という引いた目線で語られることで、
良い意味で暑苦しくない部分も
人間ドラマを示す漫画としては
非常に良い部分と言えるでしょう。