タイトル | 武装錬金 |
---|---|
原作・漫画 | 和月伸宏 |
出版社 | 集英社 |
2003年~2005年まで
週刊少年ジャンプで連載された
和月伸宏の作品です。
人喰いの化け物ホムンクルスと
正義感の熱い少年武藤カズキとの
戦いを描いた王道少年漫画。
連載は打ち切られたものの
二度の完結編という異例の形で
赤マルジャンプに続きが掲載されました。
類まれな大団円を迎えたことで
当時話題になりました。
武装錬金あらすじ紹介
ごく普通の高校生だった「武藤カズキ」。
ある夜、化け物に襲われそうになった
少女を助けようとして
心臓を貫かれて死亡します。
しかし彼は錬金術の粋を集めて
作られた「核鉄」を心臓がわりに
移植されることによって蘇生。
それを移植した少女
「津村斗貴子」と共に、
人に仇成すホムンクルスとの
戦いに身を投じることに。
周囲の級友や妹たちを守り、
自分のような犠牲者を
もう二度と出さないために―ー!
当初こそ「核鉄」の戦闘形態である
「武装錬金」を使いこなせず
ただ振り回すだけのカズキでした。
しかし先輩戦士である斗貴子の
指導もあって成長しました。
しかしその代償に、
斗貴子はホムンクルスの胎児に
寄生されます。
残り一週間で胎児を除去しなければ
ホムンクルスと成り果ててしまうことに。
そんな困難もありましたが、
成し遂げたこともあります。
カズキたちはホムンクルスを
創造していた「創造主」の正体を
突き止め追い詰めることに成功します。
「創造主」はカズキの通う
私立銀成学園高校の留年していた
3年生「蝶野攻爵」。
彼は元々学園始まって以来の
天才であり地元の名家の長男でした。
しかし不治の病に
冒されてから人生は暗転。
跡継ぎとして期待を寄せられていた
周囲からは見離されます。
クラスメイトからは忘れられ、
孤立と孤高を味わうことに。
そんな彼が実家の倉から
見つけた先祖の研究が「錬金術」。
錬金術によって蝶野は
自らの病に冒された
身体を脱ぎ捨てます。
超人ホムンクルスへと
生まれ変わることが目標です。
数々の一般人を犠牲にした
実験と研究を重ねていたのでした。
配下のホムンクルスを全て下し、
蝶野を説得しようとするカズキ。
にべもなく拒否され、さらに
蝶野の家族の横槍もあって
追い詰められた蝶野。
超人ホムンクルスへの
無理矢理の変態を試みます。
その結果は成功し、
超人に覚醒します。
始めに自らの家族を
食らい尽くします。
その後に自分を忘れ
必要としなかったこの町を
焼き尽くすことを宣言します。
カズキは蝶野との最後の戦いに
決着をつけました。
しかし斗貴子の命を救うためには
蝶野が胃袋に飲み込んだ解毒剤を取り出す。
=蝶野にトドメを刺すことを強要されます。
敵とはいえ、ただ生き延びたかった
だけの蝶野を殺すことを
ためらったカズキ。
しかし決断します。
「すまない、蝶野攻爵」
(ああー―俺の名前……)
「謝るなよ、偽善者」
解毒剤を手に入れたカズキは、
しかしそこで力尽き倒れることにー―。
武装錬金ネタバレ・今後の展開
駆けつけた錬金戦団の
戦士長の手により、斗貴子は
解毒剤を渡され一命を取りとめました。
そしてトドメを刺したかと思った蝶野ーー
否、超人パピヨンもまた同じ。
彼の先祖「蝶野爆爵」が束ねる
人型ホムンクルス集団
「LXE(超常選民同盟)」に
救出されていました。
未だ事態は決着はついていません。
しかし偽善者と詰られ
誰一人救えなかった自らの未熟さを
思い知り涙を流すカズキ。
そんな彼を戦士長は
錬金の戦士としてスカウトし、
戦いの継続を促します。
「善でも悪でも最後まで貫き続けた
信念に偽りなどは何ひとつない!
もし君が自分を偽善と疑うのなら
戦い続けろ武藤カズキ!」
その言葉に励まされ、
カズキは立ち上がりホムンクルスとの
激闘に再び身を投じます。
LXEはホムンクルスにして
武装錬金を扱う錬金術の粋を
集めた超人たち。
そんな彼らの中には
複雑な事情で身を寄せる
人々もいます。
人の身でありながら人の心を
捨てようとする者とも対峙します。
しかし、事情がどうあろうと
カズキは目の前で倒れようとする命を
必死に救い続けます。
そして、そんな戦いを続けるうちに
錬金戦団はLXEのアジトを突き止めます。
遂に二つの組織は決着をつける
最後の戦いに挑みます。
しかし、それはLXEの
仕組んだ罠でした。
放棄したアジトをエサとして
錬金の戦士たちを釘づけにします。
その間にカズキの通う
銀成学園高校の生徒たちを
食い尽くすのがLXEの作戦だったのです。
戦士長はカズキと斗貴子だけを
学園に向かわせます。
自分一人でアジトの残存戦力である
ムーンフェイスとの対決を試みます。
一方学園の救出に
間に合ったカズキたち。
しかしその死闘の果てに
LXEの最終目的ーー
「究極のホムンクルスの復活」が
果たされてしまいます。
満身創痍のカズキは、
級友たちや大切な人々を守るために
究極のホムンクルスに立ち向かうのですが……
武装錬金読んでみた感想・評価
正に王道少年漫画といった作品――
と言いたいところですが、
この作品の魅力は
「主人公は超王道な少年漫画気質」。
なのに「異常にアクの強い敵キャラ」と
「人間性の狂気、負の側面も描写する」
という相反する要素があります。
その妙で味のある敵キャラたちは
ファンからは「変態」と称され愛されます。
「殺人の贖罪」という
重いテーマを扱った
るろうに剣心の作者です。
少年漫画としてはギリギリの描写で
描かれています。
正に渾然一体のカオス、
シリアスもギャグも
1話1話が異常に濃い漫画です。
とくに早坂姉弟の過去エピソードは
連載終了から10年経た現在でも
語り草になっています。
「児童虐待」
「見て見ぬフリをする周囲」
「死体に蠅が集り崩れる」
「鎖と錠前でがんじがらめにされたドア」
という数々の強烈なシーンが
描かれています。
これらの凄まじい描写や
異常な濃さは理由があります。
「漫画家人生最後の作品と
なるかもしれない」
という作者の強烈な覚悟の下に
行われた結果らしいです。
とにかくやり残しがないように、
が理由だった模様。
しかしそれだけ黒い描写が
ありながらも主人公のカズキの熱さ、
まっすぐさ、善良さはブレません。
一貫し続けた結果そんな
どうしようもない人間性、狂気を
最終的に全てカズキが救ってくれる――
そんな幻想を抱かせてくれます。
もちろん、たかが一人の男子高校生に
そんなものを背負わせるのは
大間違いです。
カズキもまた一人の
弱い少年でしかないことも
矛盾なく描かれているのです。
全10巻という短い巻数でありながら
何一つ取りこぼしなく
綺麗に完結した名作。
連載終了から10年経過した今でも、
そう和月ファンからは
強く愛され続けています。