タイトル | 死刑執行中脱獄進行中 |
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原作・漫画 | 荒木飛呂彦 |
出版社 | 集英社 |
未成年の女性を殺害し、死刑判決を受けた
己の罪悪に悔いる事なき死刑囚──
「囚人27号」は、殺意の罠に満ちた
一室へと閉じ込められる!
一瞬、少しでも気を抜けばそれが
即死へと繋がる恐るべき処刑室!
あがきもがく囚人27号の運命は如何に!
死刑執行中脱獄進行中あらすじ紹介
未成年の女性を灰皿で殴打し
殺害した囚人番号27号は、
死刑判決を受けた。
彼は無実だと大嘘を叫ぶも、
その声は届くことは無い。
また彼も、女性を殺した贖罪や
罪悪を感じる事も無く、逆に自身が殺めた
女性に対しての恨み言を呟く。
投獄された牢獄内を見回すと、
そこには灯りはなく、
ただ暗がりが広がっていた。
広く、奥行きのある牢獄。
彼が何気に見回すと、
天井には電灯がある。
また牢獄にスイッチがある、
変な造りをしていた。
奇妙な牢獄だと、灯りを着けようと
スイッチに手を伸ばした矢先。
スイッチの傍には蜂が巣をつくり、
手を伸ばした彼を
容赦なく突き刺してくる。
腫れあがる手の痛みに悲鳴を上げ、
看守を呼ぶも声は届かず、
ただ静寂だけが牢獄を沈めていた。
不気味な牢獄に怯えながらも、
彼は灯りがついた牢獄内を見て驚く。
高級なソファーに、
造りがしっかりとしたテーブル。
眠りやすそうなベットに、テレビと風呂と
ウォシュレット付きのトイレ。
まるで高級なホテルを
連想させる牢獄の内装。
なんでこんな部屋にと、看守を呼ぶも、
返事はかえって来ず。
イラつきは増す一方だった。
そんな中、テーブルに置かれた
魚のフライとスープにパンに目をやる。
味はまあまあ、腹が空いていた事もあり、
とりあえず食事を始める。
スープをすくうスプーンは穴だらけ、
先端は曲がり、とても使えた代物ではない。
仕方なしに、魚のフライを
手づかみで食べようとするが……
それは、この部屋に
仕掛けられた罠だったのだ。
噛み付いた魚のフライの骨が
囚人27号の頬を突き刺し、
痛みでのけぞった瞬間に、
椅子が音を起てて崩れてしまう。
わざと切り目が入れられた
椅子の破片が突き刺さり、
激痛にのたうち回る。
この部屋が、自分を死刑へと導く
罠で満たされた部屋であることを……
死刑は既に執行されている事を
彼は知らない!
死刑執行中脱獄進行中ネタバレ・今後の展開
今作は荒木飛呂彦先生の読み切り漫画。
「死刑執行中脱獄進行中」を始め、
「ドルチ ?ダイ・ハード・ザ・キャット?」
「岸辺露伴は動かない
?エピソード16:懺悔室?」
「デッドマンズQ」などの名作読み切りが
満載な作品集となっています。
死刑囚として放り込まれた監獄は、
死刑の為の罠だったと気づく囚人27号。
迫りくる死刑の罠から逃れようと
もがき苦しむことになります。
崩れた壁から脱出できると思いきや、
その壁の中にはミンチマシーン
が仕込まれていた。
床には衣服を引っかける釘の罠と
皮膚を妬けただらせる酸の罠と、
じわりじわりと囚人27号を
追い詰めていきます。
必死に逃げる囚人27号。
彼が慌てて飛び乗ったソファーも、
この部屋の罠の一部だったのです。
崩れたソファーに拘束され、
電気コードが全身に絡む。
コードの先にはスイッチがあり、
紐が巻き付けられていました。
その紐の先には「干し肉」がくくられ、
ネズミ達が干し肉へと
群がり引っ張っていきます。
スイッチが入れば、
電流で殺されてしまう。
慌てて逃げ出しますが、
絡まるコードから抜けだす事は出来ません。
はたして囚人27号の運命は如何に。
また次なる作品である
「ドルチ ?ダイ・ハード・ザ・キャット?」は、
転覆してしまったヨットが舞台。
一匹の猫「ドルチ」と飼い主である
「愛子雅吾(あやし・まさご)」が
生き残りを懸けて戦う、サスペンスアクション。
そして次なる作品は
「ジョジョの奇妙な冒険
第4部 ダイヤモンドは砕けない」
でお馴染みの漫画家
岸辺露伴(きしべ・ろはん)を主人公にした
「岸辺露伴は動かない ?エピソード16:懺悔室?」
そして、あの
「ジョジョの奇妙な冒険
第4部 ダイヤモンドは砕けない」
に登場した殺人鬼──
「吉良吉影(きら・よしかげ)」
のその後をテーマにした
「デッドマンズQ」など、
読み応えのある作品が目白押しです!
死刑執行中脱獄進行中読んでみた感想・評価
今回の漫画作品である
「死刑執行中脱獄進行中」。
荒木飛呂彦短編集と銘を打つ様に、
荒木飛呂彦先生の世界観を詰め込んだ、
荒木ファンには魅惑の作品となっています。
この作品の最大の見どころは、
様々な運命と向き合うこと。
対峙する登場人物達の、
運命に挑む物語の帰結に、
今作の最大の見所があります。
死刑を求刑されながらも、
自身の罪とは向き合わず。
迫りくるべき死を回避しようとあがく
囚人27号の「死刑執行中脱獄進行中」。
狭い空間で織り成す、
舞台のような演出が見物です。
さらに囚人27号以外には誰も登場せず、
死刑の罠が張り巡らされた部屋で、
一人あがき苦しむ。
それでも生きようとする
男の生へのあがき等が、
心理の深層へと追い込まれる。
死をあがこうとする人間の生き様が
最大の見所になっています。
またこの作品は荒木飛呂彦先生の作品の中で
舞台作品ともなった作品でもあります。
主演・森山未來氏で演じられるなど、
独特の世界観と演出が
認められた作品とも言えます。
さて、そんな今作において
もっとも注目すべき短編は、
やはり「デッドマンズQ」でしょう。
この作品はあの
吉良吉影(きら・よしかげ)の
その後が描かれています。
荒木飛呂彦先生作品の中では、
悪役を主人公にした物語で
構成されています。
仗助達との死闘の果てに
死んでしまった吉良。
しかし彼はあの世へとはいけず、
現世で殺し屋として日々を過ごして居ました。
幽霊ゆえに不便な生活を送る事となり、
自由に本を読むことも、
好きな音楽を聴く事も出来ない
不自由な人生を送る。
生きがいを見つける為に、悪人を殺す為に
前向きに生きている等と、
どこか物悲しく、それでいて魅入ってしまう。
彼の死後の生活の日常は、
死んだらこうなるかもと思わせるような、
そんな引き込む作品に仕上がっています。
短編ながらも荒木飛呂彦先生の
作品のテイストが十分に込められた
内容となっています。
自分の生き方を考えさせられるサスペンス・ホラー作品集
荒木飛呂彦先生の作品にハマっている読者を、
さらに荒木飛呂彦先生の世界へと
送り込んでくれる魅惑の作品集。
それがこの「死刑執行中脱獄進行中」です。
短編ながらも長編のように
読み応えのある構成と
展開の仕上がった内容。
サスペンス・ホラーを追求する荒木先生の
深淵を覗ける逸品とも言える今作。
荒木先生のさらなる深き人間の個性や
運命の在り方を学びたい人に
おススメな作品集とも言えます!
また今作は、あの吉良のその後も描かれた
「デッドマンズQ」が
最大の見所でもあります。
彼の死後の生活を知りたい人に
是非見てもらいたい作品でもあります。
人を殺さずにはいられない性を持ち、
罪なき人を殺し続けた彼。
運命の悪戯か、生前の記憶を失い、
この世に彷徨い続ける彼。
死後の人間が歩む道を、
現実感のある内容で描き、
普段なら当たり前のような感じられる幸せ。
何一つ味わうことができずに、
生きがいもない。
あの世にもいく事も出来ずに、
死んだ自分の生きがいを探し求めて、
死んでなおも平穏を望んでいる。
そんな彼の姿が哀愁を漂わせるも、
どこか哲学めいた持論に、
自分の生き方を考え直させてくれる。
深い内容であり、生き方を考えたいと、
そのきっかけを作ってくれる。
自分の生き方を考えたい人に
おススメな作品です。