タイトル | 江戸の検屍官 |
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原作・漫画 | 高瀬理恵 川田弥一郎 |
出版社 | 小学館 |
江戸の町
北町奉行所の同心
北沢彦太郎。
死亡事件の検屍においては
随一の技術と推理で
数々の難事件を解決へと導いていく。
江戸時代に既に確立されていた
検屍による事件捜査を
題材とした時代劇ミステリー。
物言わぬ屍に
真実を語らせるべく
彼は今日も事件現場へと向かう・・・。
江戸の検屍官のあらすじ紹介
北町奉行所に勤める
同心の北沢彦太郎は
廃寺の井戸の遺体調査へと向かう。
当時「無冤録述」という書物が
検屍における教典とされ
様々な検屍の心得が記されていた。
その書物の基本に基づいて
今回の井戸の死体も
まずは自殺事件とみなされた。
ともに検屍にあたる医者の
玄海も同意見であった。
女の身元を調べるために
屍から生前の姿を生き写しに描ける
女絵師のお月が人相書きを描く。
そして身元の決め手になりそうな
義歯を遺体から抜き取ると
市中の聞き込みへと向かうのだった・・・。
江戸の検屍官のネタバレと今後の展開は?
遺体から抜き取った
義歯の調査から女の身元は
水茶屋「相生屋」のお半であろうと判明。
遺体の姿は醜く変り果てていたが
遺族も人相書きと服装から
お半であると確認した。
そしてお半の男であった
為次郎との浮気喧嘩の末に
井戸へと身投げしたと思われた。
しかし医師の玄海は遺体の口から
髪の毛を採取。
何者かによって
水面に顔を押さえつけられ
溺死の際に飲み込んだのでは?
他殺の線もあるとした北沢は
自殺と他殺の両面の可能性で
調書を仕上げて上役へと提出した。
果たして事件の真相は
どちらなのだろうか?
翌日に上役の判断があり
為次郎が下手人として
奉行所に捕らわれていた。
余りにも性急な動きに
不信感を抱き始めた北沢は
独自に再調査を進めることに。
やがてお月の協力から
死亡現場は湯屋ではないかとの
推理へと行き着く。
そして湯屋への聞き込みで
明らかになっていくのは
身内の同心による殺害事件!?
身内の犯行を確認した北沢は
湯屋での張り込みから
乱暴をはたらく同僚を捕縛する。
しかし事件は身内の犯行の為
世間に明らかにはされず
秘かに処分が行われた。
不満気な北沢ではあったが
為次郎の冤罪を晴らし
彼の命を救ったのも事実。
そうして北沢は
これからも死者の残した叫びを
聞き取っていく決意をするのだった。
江戸の検屍官の読んでみた感想・評価
江戸時代の事件捜査というと
現場での証拠品や目撃などに頼った
限定的な捜査を想像してしまいます。
しかし既に昔から
検屍という捜査は行われており
学術的技術として定着していた様子です。
世界最古の法医学書は。
十三世紀の中国にて成立しており。
その書を元に日本語で綴られた
「無冤録述」という書物が
江戸時代の検屍の経典になっています。
死体の向きによる
自殺や他殺との基礎判断。
口内に銀の棒を入れることで
その変色によった
毒物による死亡判断など。
現代でも扱われそうな
基礎的な技術は
既に確立されていたようです。
そうした技術を身につけて
遺体現場に挑む
主人公の同心である北沢。
物言わぬ遺体からのメッセージを
検屍という技術から読みとれるからこそ
様々な事件の真相が見えてきます。
科学的技術の未熟な当時において
真相が見え過ぎる彼の目は
内外に敵を作る原因にもなるのでしょう。
そんな信念と現実との狭間で悩みながらも
人々を救うためにと
江戸の検屍官は捜査を続けていくのです。
江戸の検屍官はこんな方におすすめな作品!必見
江戸の検屍官を題材にした
時代ミステリーな作品として物語中で
様々な江戸の風情も垣間見られる本作。
同心や岡っ引き
吟味方などにおける
奉行所の実務の様子や日常。
医者や絵師なども引き連れつつ
事件現場で検屍を行う
江戸時代の遺体捜査の進め方。
事件捜査の手掛かりにもなる
当時の義歯治療などのあらまし。
江戸庶民が通う水茶屋の風情や
役人たちによる普段とは異なる
湯屋の使われ方など。
事件捜査を通して
様々な江戸文化の在り様なども
知ることが出来ます。
また現代とも変わらない
組織に仕える者としての苦悩などに
共感を覚える場面も多いです。
江戸の風情や役人の日常などが
楽しめるその他の作品としては
『鬼平犯科帳』などもオススメ。
火付盗賊改めのお頭として
同心たちを取りまとめ指揮を執る
役人の長谷川平蔵。
その腕っぷしの強さからも
「鬼の平蔵」と呼ばれ怖れられた男を
主人公にした時代劇の代表作です。
どちらの作品も役人たちによる
江戸市中での活躍を本格的に楽しめる
時代劇としての魅力にあふれた作品です。