タイトル | 涙弾 |
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原作・漫画 | 小池一夫 伊賀和洋 |
出版社 | 集英社 |
抜群の推理力と行動力で難事件を
次々と解決する刑事・切葉弾。
パリで出会い恋に落ちた女性は
国際テロリスト。
彼女を追い弾はフランスから日本へ飛び、
やがて彼女を自らの手で葬ってしまう。
その時から目に哀しみが溢れるように
なった弾は、夢など持てない人生を
送ることを覚悟する。
世界を舞台にした緻密なストーリーで
展開する本格派刑事ドラマ。
涙弾のあらすじ紹介
特捜刑事・切葉弾(きりは・だん)は、
若いながらも人の心理を深く読み取ったり、
巧妙なトリックも見破るなどして、
その優秀さにやっかむ者も出る程。
フランスに留学していた頃の弾は、
クリスチーヌという女性と愛しあう
関係にあった。
しかし、彼女の正体は
国際テロリストであり、忽然と
弾の前から行方をくらませてしまう。
クリスチーヌを追うことを目的に
フランスの警察機関に属することにした
弾は、彼女の日本潜入を知り、
祖国へと向かう。
クリスチーヌは罪にまみれた自分を
止めたいが為に弾の周囲の人物を
殺害し、弾を挑発する。
そして、二人だけで対峙する場で
クリスチーヌは死を望み、
弾はそれに応える。
その後、警視庁に転任した弾は、
様々な事件を解決していき、やがて
特捜の責任者を任せられる。
新しい女性部下・日和(ひより)の
奔放さに困惑していた弾は次第に
その日和に癒しを感じるようになる。
その弾の前にカルロスという
男が現れる。
No.1テロリストとして名を馳せる
カルロスはクリスチーヌの兄であった。
日和を巻き込むことになり古式に
則った決闘を申し込んできた
カルロスを弾は辛くも倒す。
一時訪れた安息の中、日和に
愛を明かす弾だったが、カルロスが
仕込んでいた爆弾により
日和を死なせてしまう。
“No.1のカルロスを倒した男”と
なってしまった弾。
数々の国際テロリスト達が我が名を
轟かせることを目的に
その弾を狙おうとする。
弾は自分の周囲に害が及ぶことを
避けるべく警視庁を退職。
身を隠す為に渡米した後は
ニューヨークのホームレスの群れに紛れる。
現地警察と望まぬ関わりを持ってしまった
弾は分署長に見込まれて捜査の
手伝いをするハメに。
コンビを組む女性警官・クリスに
少しずつ想いを寄せるようになる弾は、
NYで活躍するホームレス刑事として
話題の人となる。
その噂を聞きつけた米国政府関係者は
半ば強制的にモスクワでの
任務を弾に押し付ける。
自分の所在が明るみになれば
愛しあようになったクリスをはじめ
分署に塁を及ぼすことになる。
弾が最も怖れていることを
政府関係者は巧みに突いていたのだ。
しかし、ロシアの空港で会うはずだった
エージェントは殺されており、その
容疑が到着したばかりの弾に降りかかる。
涙弾のネタバレと今後の展開は?
ロシアでの任務を終えた弾は、
クリスとともに別人としてアメリカで
生活できることを条件に
アンダーカバーの任に着く。
カリフォルニアで暗躍する日系人
組織壊滅の任務を終えた弾は、
映画の地・ハリウッドでの
臓器密売を疑い、クリスらとともに
その捜査に乗り出す。
事件の真相に迫り重要人物を
追い詰められる手前となった弾だったが、
彼とクリスの前にNY時代に因縁を
持ってしまった男・キンガムが
立ちはだかる。
厚遇の身分を弾によって失っていた
キンガムは弾に憎悪を抱えたまま
対決してくるが、弾はキンガムの
身柄確保に成功する。
しかし、キンガムの護送中、
西海岸に大地震が発生。
キンガムは混乱に乗じて姿を消す。
キンガムが資金を調達する為に
日本で大規模な麻薬取引を行おうとする
情報を入手した弾はクリスを伴って
米国政府特別捜査官として祖国の地に立つ。
日本の警察と共同してキンガムの
周辺人物を逮捕できたものの、
キンガムはなおも逃亡。
しかも、クリスを人質に取られてしまう。
クリスを守る為に弾は必死の追跡に入り、
キンガムを追い詰める。
キンガムの運転する車で気を
失っていたクリスに弾が呼びかける。
彼の声が届いたクリスがキンガムに
抵抗、その直後に弾の放った一撃が
キンガムを捉えた。
危機を免れた弾とクリス。
生還を喜び、抱きしめあう
二人の目には涙があった。
涙弾の読んでみた感想・評価
涙弾(るいだん)は、週刊プレイボーイに
連載されていた作品です。
かなり古い作品で紙媒体としては
中古品での入手になるかも
知れませんが、電子書籍での
閲覧は可能です。
この作品の最大の見所は
主人公・切葉弾のかっこよさに
あると思います。
フランスを皮切りに日本へ、そして
アメリカに渡り、旧ソ連から変わって
間もないロシアへ。
再びアメリカに戻り、最終的には日本へ。
彼の活躍はまさに世界を股にかけています。
何十年経った今でもその緻密な設定は
充分通用するのではと思えるほどの
ストーリーで、特に読み応えのあるものは、
日本での上司・花山が警察組織の
闇を暴こうとした矢先に殺害された
事件を追う弾が、逆に警察組織と
暴力団に狙われる身となり和歌山から
東京へと逃避行する姿を描いた
『刑事(デカ)の遺産』。
強制的にモスクワに送り込まれた
弾がほぼ謎だらけの状況で巨悪と
対決する過程において、
国際政治のVIPだった人物達や、
“第三次世界大戦の引き金”に
なるやも知れなかった国際緊張と
“一定の年齢以上のアメリカ人なら
その瞬間にどこで何をしていたか
明確に記憶している”とも言われる
暗殺事件など、実在する
人物・事案が語られる
『狙撃鬼手(スナイパー)』を挙げます。
これら2編だけでも涙弾の魅力を
大いに感じることができるでしょう。
一点だけ敢えて申し上げたいことがあって、
単行本第1巻序盤の数話の切葉弾は、
全くの別人と解釈して良いかと
思うのです。
見た目がチャラ男と言いますか、
バブル期の象徴のような男なのです。
クリスチーヌとのエピソードに移ると
徐々にバードボイルドな空気が
色濃くなり弾の外見も本来のものに
変わっていきます。
制作過程で何らかの方針変更が
その当時になされたのではとも
思えますが、顔、服装、行動は
とにかく様変わりしていてその
変貌振りさえも是非楽しんで
いただきたいです。
涙弾はこんな方におすすめな作品!必見
リアルな刑事モノのファンだと言う人には
特にオススメです。
小池一夫氏の作ですが、オールドな
方なら『子連れ狼』、最近なら、
と言っても2001年公開ですが
『修羅雪姫』。
これらもこの人の作が
基になっていると言えば納得して
いただけるかと思う、ハードな
ストーリーに定評のある方です。
テレビドラマの刑事モノは現在なら
対警察組織をテーマにした作品も
多くありますが、涙弾も先述した
『刑事(デカ)の遺産』は警察に潜む
闇の存在とそれを裏から操る政治家が
弾の敵となり、死んだ花山の娘の
協力を得ながら弾が巨悪に
立ち向かう話です。
対犯罪者という刑事モノの定番話も
あればこのように組織との対決も
描いており、昔の作品とは言え、
今、映像化に漕ぎつけることにも
遜色の無い劇画です。
なお、プレイボーイ連載だったという
だけあって大人の恋愛も豊富に
盛り込まれています。
また、伊賀和洋氏の細かな画が
表現するアクションは劇画の域として
高質なので、こういった点からも
大人向け作品を望む方に
読んでいただければと思います。