タイトル | 特殊秘密部隊セクションD |
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原作・漫画 | 神江里見 |
出版社 | ビーグリー |
かつて伝説の日本人がいた。
棒術を使い、世界中で商社マンたちを
守るなど無数の武勇伝を作った男、
榊 安次郎が。
今はもう老人になった榊は、
旧知の会長の危機を知り再び戦い始める。
棒術を操る格好良い老人の
アクションと、重厚な設定が
冴えるアクション作品です。
特殊秘密部隊セクションDのあらすじ紹介
暴力団を一つ壊滅させた榊老人。
彼にとってはヤクザの相手などまさに
朝飯前でしかありませんでしたが、
辰巳商事にとっての危機はその程度の
ものではありませんでした。
役員とその家族を惨殺し続け、凶行を
止めるための要求として十トンもの
金塊を要求するという殺人鬼、
アンノウン・ソルジャーと対峙して
いたのです。
そして、腕利きの秘書たちを攻撃に
用いなかったのは、ソルジャーとの
力量が開き過ぎていると会長が
判断したからでした。
当然黒冬にとっては面白くもありませんが、
恐るべきソルジャーの魔手は
着々と迫っていました。
特殊秘密部隊セクションDのネタバレと今後の展開は?
巨大企業辰巳商事の中でも、
通常業務以外の「技術」を持つ
男性秘書たち。
その中でも恐るべき技を持っている
黒冬ですが、「任務」でヘリに
乗っている間中、彼はずっと
不機嫌でした。
と言うのも、会長が、熊を棒で一撃必殺
できる凄腕がいるようだと新聞記事から
アタリをつけ、その「伝説の男」を
連れてこいという曖昧な命令を
下したことに納得がいかず、
嫌々の態度を表に出していたのでした。
そして、いきなり現れては自分たちの
酒を拝借しだしたその伝説の男、
「榊 安次郎」は、どう見ても
酒に目がない単なる老人でした。
黒冬たちが殺気を放っても
「悪さ」をしても一向に力の片鱗すら
見せようとしない彼に、黒冬はますます
疑念を強めていきます。
かつては情報に不確かな点も多く、
不正確な話には当然尾ひれも
つきやすいもの。
また、日本人に手を出すと大変な
目に遭うという噂が流れた方が、
仕事がしやすい面もあり、あえて
デマを打ち消すことはしなかったのだと
黒冬は確信していました。
しかし、榊と再会した辰巳会長は
完全に彼に信頼を置いており、会長に
ついてきた黒冬のイライラは
限界に達してしまいます。
そしてついに黒冬は、自決するとまで
口走ってしまうのでした。
特殊秘密部隊セクションDの読んでみた感想・評価
戦後の混乱期、世界を股にかけ
仕事をしてきた商社マンたちを
救い続けた伝説の日本人がいた、
という導入からして熱いものが
ありましたが、それから数十年後、
未だに衰えを知らない伝説が
旧知の経営者を助けにいくという
展開、若い腕自慢の秘書との
ぶつかり合い、理不尽な惨殺を
繰り返す「アンノウン・ファイター」との
暗く激しい戦い等々、極めて
熱度の高い物語が延々と
続いてくるのにはかなり痺れました。
そんな榊老人が扱うのは、主人公が
扱うものとしてはかなりマイナーな
棒ですが、彼の棒は日本刀よりも
切れ味があり、しかも銃刀とは違い
どこにでも怪しまれずに
持ち込める長所を持っています。
技の応酬のような殺陣には
なかなかなりませんが、それだけに
技の凄まじさが良く表現されて
いるような感じです。
真面目で勝気な秘書黒冬や、
破滅的なまでの襲撃と要求を
繰り返すアンノウン・ソルジャーなど、
異彩を放ちつつもインパクト溢れる
脇役が多いのも特徴ですね。
特殊秘密部隊セクションDはこんな方におすすめな作品!必見
企業や国家の暗闘を描いた漫画は
少なくありませんが、本作は
バブル期よりももっと前、日本が
安定的な成長を続けていた頃を
舞台にしています。
まだ共産圏が世界中に
存続しており、その実態が
分からなかった頃のことだけに、
その陰謀にはかえって
説得力があります。
さて、様々な作品に登場する、強い、
あるいは賢い老人たちが好きだという方は
多いかと思います。
私もそうですが、長年の経験に
裏打ちされた実力や精神力で
ブレることなく主人公サイドを
目標に導いてくれるその安心感や
信頼感は絶大なものがありますが、
本作の主人公、榊 安次郎もまた、
ズバ抜けた棒術の腕を有した老人で、
しかも底抜けの酒好きだったりして、
人間的魅力もタップリです。
口が軽くトボけた態度を常に
取り続けるタイプなのに、
いざという時には誰よりも
頼りになる榊老人と、やや堅物で
融通が効かないものの、命を
懸けるほどの意地を見せ続ける
黒冬さんの組み合わせはまさしく
名コンビといったところ。
無差別殺戮犯と考えられていた敵方も
重い背景と深刻な事情を抱えていたりと、
単なるエンタメで終わらないだけの
深みを持っているところがいいですね。
本作でキッチリ完結している感じですが、
実写やアニメなどでも見てみたい
作品の一つですね。