タイトル | 真夏のエデン |
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原作・漫画 | 北川みゆき |
出版社 | 小学館 |
十三歳の夏に、運命の出会いを
した少女水夏と冬麻は、
社会人になって偶然再会し、
意気投合し交際を開始することに。
しかし冬麻には双子の兄がおり、
実は水夏の運命の相手かも知れず……。
王道展開な出会いと「双子」という
現実にもありえそうな要素を重ね、
「ミステリー」的状況を描く、
新感覚ラブストーリーです。
真夏のエデンのあらすじ紹介
肺が弱めな水夏は十三歳の夏、
おばあちゃんの実家で静養を
することを試みますが、
そこで親切な美少年冬麻と
出会うことになります。
少し奇妙ながらも心温まる
出会いを経験した彼女は
社会人になってから偶然、
冬麻と再会し交際を開始しますが、
実は冬麻には双子の兄がいました。
水夏の思い出の相手かも知れない、
冬麻とはまるで性格が違う秋也は、
社長として厳しい態度を取る一方、
かつての思い出にこだわるような
微妙な態度を出したりと
水夏にも関心を示していきました。
真夏のエデンのネタバレと今後の展開は?
芦田水夏は十三歳の夏、
長い休みをおばあちゃんの田舎で
過ごすことにしました。
快活な性格で一見元気な彼女ですが、
呼吸器系に持病があるため、
他の子たちと思う存分遊べず、
そのことがずっと引け目に
なっていましたが、
田舎でも距離を置かれていました。
そのため、一人で遊んでいたところ
木から降りられなくなり、
かなり困ったところで、
木の下から少年が声をかけてきて、
水夏を助けてくれました。
幽霊かとも思いましたが、
その少年、紺野冬麻は、
別の日も水夏を待ってくれていて、
水夏は初めて滝に案内されます。
しかしその途中冬麻が怪我をし、
流血を見て混乱した水夏は、
発作状態に入ってしまいます。
きつい状態の水夏を抱きしめ、
夏祭りに一緒に行こうと、
冬麻は誘ってくれましたが、
当日現れた彼は何故だか無言で、
しかし妙に優しく、
さらに途中でいなくなるなど、
理解不能な行動を繰り返し、
水夏を困惑させます。
その後も熱の入った再会の
約束をした割に、
まるで姿を見せなかったりと、
理解できない態度を取る冬麻ですが、
水夏が社会人になってから偶然、
会社の親睦会で再会します。
そして付き合うことになった
冬麻と水夏ですが、冬麻は、
実は自分には兄がいると言い出し、
顔を合わせる形になりますが、
その兄は双子であり、
冬麻と同じ顔をしているのでした。
そのため水夏は、どちらと
出会いがあったのかと
混乱してしまうことになります。
真夏のエデンの読んでみた感想・評価
王道系の青春恋愛ものと思いきや
衝撃の展開にビックリしました。
あるいは現実でもそういうところが
あるのかも知れませんが、
物語上「運命の出会い」をした、
お似合いの二人というものは、
特に理由もなく他の人に
目移りすることは少ないです。
だからこその一途さが
読む人の心を惹きつけますが、
その際に問題になってくるのは、
「再会した相手が本人か?」
という部分です。
無論、一般人なら成りすましや
詐欺などの材料にはならず、
整形や化粧で「化ける」ことも、
通常は有り得ないわけですが、
「双子」ということが
現実にも有り得るんですね。
本来混乱は起きないところですが、
「出会い」だけが生まれたために
肝心の水夏には情報が入っておらず、
その「分からなさ」が本作の
肝になってくるのですから、
正直ビックリしてしまいました。
やはり会話の一端にでも、
双子の兄や弟がいる場合
情報を入れておいた方が、
後々問題にはならないと
思わず「活きた知識」が
得られた気分でもあります。
物語自体が王道かつ定番なだけに
「誰を好きになったのか」が、
他の要素に邪魔されず大事になる、
本作の基本的構図は画期的で、
思わぬシビアさが滲んでいました。
真夏のエデンはこんな方におすすめな作品!必見
まだ大人になり切っていない段階の
少年と少女が運命的な出会いを遂げる、
ボーイ・ミーツ・ガールの物語は、
鮮烈なほどの思い出を描写する
非常に王道かつ定番のものであり、
説得力のあるものです。
そうして生まれた出会いですから、
絶対に間違いないと言いたくなるもの。
しかし、人の記憶とは曖昧なもので、
細かな部分に違いがあるのも常ですが、
本作は、名作「溺れるナイフ」のような、
田舎に来てのインパクトある出会いですが、
実はその相手が「双子」だったらしく、
思い出の相手自体に疑念が出る展開です。
ミステリー作品でも「実は双子」は
なかなかないのが現実ですが、本作は、
ごく普通に挟み込んできており、
とにかく先が読めない展開が
好きな方にはたまらない作品に
仕上がっている感じでした。
しかも確かに言われて見れば、
付き合う時間が一定以上なければ
「自分は双子なんです!」と、
周りに宣言したりはしないもので、
あると言えば有りうる話で、
斬新かつリアリティを感じました。
双子ながら性格がまるで違ったり、
しかし職場などの距離は近かったり、
双子ならではの微妙な関係を、
嘘っぽくなくしっかりと
描いていることにも
好感が持てましたね。