タイトル | 禁忌 |
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原作・漫画 | 矢樹純 加藤山羊 |
出版社 | ビーグリー |
○○してはいけない、という世の中に
無数にある禁忌。
ほんの些細なことにも思えることでも、
それをやることによって、
とてつもない不幸に
見舞われることも……。
クラシックな怪談と現在的な要素を
うまく盛り込んだホラー短編集です。
禁忌のあらすじ紹介
幽霊が見えると皆に話をして回っている
少女、里内 絵美。
周りから煙たがられていましたが、
同じように霊が見えると話してきた
ことがきっかけで、高坂 菜々と
仲良くなり始めました。
互いに霊の話で盛り上がる二人、
しかし、本当は絵美は霊感などなく、
人に注目されるための出まかせを
言っていたに過ぎず、絵美の話に
ついていけなくなり謝罪することに。
菜々は絵美を許し、二人は
本当に意味で仲良くなります。
しかし、何の取り柄もないと
言っていた菜々が学年トップの
成績だということを知った絵美は、
奈々の転校の理由について
とんでもない出まかせを
口走ってしまいます
(「嘘をついてはいけない」)。
禁忌のネタバレと今後の展開は?
親に借金をしてバイクを買った青年。
彼はバイトをたくさん入れることで
お金を返そうとしていましたが、
そんな中、彼は峠で
妙なライダーに会います。
スポーツ用ではなく、ボロボロに
古びたバイクにまたがる、
子供かと思うほどに
小さな男のような姿。
その時点で相当奇妙ですが、
追いつくと少しでも早く漕ごうと
するかのように状態をガクガクと
震わせてきました。
しかも腕が伸びたようにも感じました。
青年は気味が悪くなりすぐに
走り去ったわけですが、友達に
その話をすると、河童ではないかという
答えが返ってきました。
もっとも、そうした不確かな話に
惑わされて家にこもったりなど
できるはずがなく、今日も
愛車を駆っていきます。
しかし、混んでいる道で河童の乗る
バイクを見つけてしまいました。
道の流れの関係でどうしても
追い抜かなければといった
形になってしまい、やむなく
前にでると、河童は青年のバイクの
荷台を掴み、追いかけてきました。
追い詰められていってしまう青年ですが、
河童と他の車両が激突し、どうにか
その場を離れることに成功します。
しかし、河童はトラックの荷台に
張り付き青年を追いかけて
いたのでした
(「追い抜いてはいけない」)。
禁忌の読んでみた感想・評価
シンプルに怖く、嫌さがある作品群で、
夏に読むのはうってつけかな、
と思いました。
一つ一つには基本的に連続性がない
エピソードが並びますが、
一挙に読んでみると
「鏡の前で自分に語りかけてはいけない」、
「河童に追い抜きをかけてはいけない」、
「寝言に返事をしてはいけない」等々、
非常に禁忌とされる行為が多く、
それを破った代償も大きいことが
分かるので、全編を通じて
読むと怖さ二倍といった感じです。
呪いのかかったような絵を見せてくれた
先輩の方が早くこの世を去ったり、
直接的な嘘によって不利益を被ることが
なかった代わりに、相手をおとしめるような
発言には強烈な代償があったりと、
どこに危険なツボがあるのかが
分かりにくいのもぞくりとした恐ろしさを
倍増している感じがあります。
どこにでもいるような平凡な人たちが、
ミスとも言えない行為をきっかけに
理不尽に転落していく感じは、
サスペンスや犯罪ものとも違う
ホラー特有のものですが、そうした
ジャンルならではの特質を
「満喫」することができるでしょう。
禁忌はこんな方におすすめな作品!必見
いわゆる「怖い話」の中でも、
○○をしてはいけない、といった
エピソードは多いですが、本作は
そうしたオーソドックスな怪談を
巧みに練り上げているので、
「期待」通りの怖さを
味わうことができます。
救いがない点に関しては評価が
分かれるところかも知れませんが、
王道の怪談はまさにこうした形であり、
恐怖がコンセプトに
なっているのが分かります。
一方で、嘘をついたことがすぐさま
不利益にはならなかったり、バイクを
乗り回し、追い越しただけでキレる
河童が登場したりと、かなり捻りが
効いていたり、オリジナリティ溢れる
キャラが出てきます。
また、元々から妖怪だったという
ケースもありますが、何らかのきっかけで
友人や家族といった身近な人たちが
妖怪化したという話、さらには家庭内で
凶行が起こり、妖怪出現以上の
事態に至ってしまった事件など、
日常と非日常、人間と妖怪の境目が
かなり薄いという独特の世界観が、
実際に遭遇するのは嫌ですが、
ホラー作品としては非常に魅力的です。