タイトル | 美食のお時間 |
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原作・漫画 | 酒川郁子 |
出版社 | 集英社 |
ホテルに特別な感情を持ち、
見習いハウスキーパーとして
働き始めた山田美々子。
彼女はホテルで出てくる
数々の美食を前に、その特技を発揮して、
様々な事件を解決していくことに……。
見た目からもシチュエーションからも
本当においしく美食を味わえる、
新感覚のグルメ漫画です。
美食のお時間のあらすじ紹介
見習いハウスキーパーとして
ホテルで働き始めた山田美々子。
明るくて正義感が強く、時には
まだ若いオーナーにも正論を
述べてつっかかるほどで、
本採用を保留にされても
まったくめげるところはありません。
そんな彼女には、祖父と
ホテルに対する特別な感情が
根強く宿っており、
極めて敏感な味覚という
特技をも持っていました。
直接的な業務とは関係がない要素ですが、
ホテルで次々と起こる事件に際して、
この特技が大活躍していきます。
美食のお時間のネタバレと今後の展開は?
ホテルの見習いハウスキーパーとして
研修に励む山田美々子。
豪華な部屋に調子に乗って
先輩に怒られたりする
今時の女の子ですが、
仕事に入ってから三日目、
部屋に流血し倒れている女性を
目撃してしまいました。
人が死んでいると思って
大騒ぎしてしまう美々子でしたが、
幸い女性は無事でした。
しかし、当初「男がいた」と話した女性は、
時間が経つと自分で転んだと、
発言を転じさせていきます。
そんな中美々子は、部屋に落ちていた
ショコラを手がかりに、被害者が
佐伯さんというパティシエだと知ります。
佐伯さんは日本でも少ない
チョコレートを専門にする職人で、
コンクール参加の準備をしていました。
被害者の素性を知って美々子は
彼女に会いにいくことに。
元気に仕事をしていた佐伯さんでしたが、
美々子から現場の様子を聞くと態度を一変、
「犯人」が盗んだ新作と似たものを
きっと作ってくると涙を流します。
そこで美々子は佐伯さんの類似品が
受賞するのを妨げるべく
コンクールに潜入して、
その優れた舌で見事、
「犯人」を見つけますが、
そのチョコを作った足利には
かつて佐伯とともに歩んだ過去と、
ある感情が存在していたのでした。
美食のお時間の読んでみた感想・評価
昔は家族旅行などで頻繁に
ホテルに行きましたが、
いざ自分が大人になってみると、
どうしても休みは寝て過ごす感じで
遠出すらしなくなっている私にも
本作はとても満足でしたね。
まず、ホテルの「特別感」が
非常にいい感じです。
最近は一流レベルのホテルでも
一万円程度で宿泊と食事が
楽しめたりリーズナブルですが、
数ヶ月働いてやっと行ける、
そんな価格設定だからこそ、
宿泊客はホテルに「何か」を
期待してしまうものです。
その漠然とした期待感が
本作ではがっちり形となって
具体化されているのですから、
宿泊してはいないものの
読み手としては胸が
ときめいてしまいましたね。
また、祖父との記憶を色濃く持つ
美々子自身も良い意味で、
かなり昔カタギのホテル観を
受け継いでいるタイプの人情家で
見ていて好感が持てます。
また、若く生意気な点を感じる
オーナーにしても、
まだ見習いキーパーに過ぎない美々子と
正面から対峙できるだけの度量がありと、
登場人物がいい感じなのも嬉しいですね。
物語の中心をなす各種事件も、
単純に死体が出るという感じではなく、
職人の意地や思いが絡んでいるものが多く、
とても「らしい」感じであったことも
個人的には好感度が高かったですね。
美食のお時間はこんな方におすすめな作品!必見
最近はどこでもおいしさをを楽しめますが、
やはりその中でもホテルで食べる美食は
絶品という感じがするものですね。
単に料理の出来栄えだけではなく、
特別な場所にいるという非日常感覚や、
リラックスしたムードまで全てが、
人においしく感じさせるのかも知れません。
とは言え、高級な部屋に泊まったり、
美食を味わうのを自慢するだけというのも
接する側としては虚しいものですが、
本作では料理が仕上がるまでの過程や
そのメニューや背景にかける思いなどを
存分に味わうことができる上、
話の中心にいる美々子さんが、
普通の見習いハウスキーパーなので、
「上から目線」感がないのがいいですね。
そして、美々子さんの舌や
料理に対する知識の確かさ、
ホテルにまつわる様々な物語など、
主役であるところの料理を
より楽しませる演出が効いていて、
読んでいて飽きることがありません。
真面目で熱い美々子さんや
まだ若く有能だが少し世間知らずな
オーナーなど、各キャラも定番の
立ち位置を崩すことはなく、
全体の流れを乱すことがないのも、
非常に好感が持てます。
ただおいしいだけではない
ホテルならではの美食を
目で存分に味わいたい方には、
本作は大変良い作品だと思いますし、
近年の大衆化の波のためか、
施設に重点を置く中で、
どうしても食事がおざなりに
なってしまいがちな一部のホテルに
満足できないという方にも
不満解消という意味で
極めてフィットする一作だと思います。