タイトル | 薔薇のために |
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原作・漫画 | 吉村明美 |
出版社 | 小学館 |
祖母と二人暮らしだったゆり。
大学受験に落ち、彼氏にふられ、
その上たった一人の
肉親だった祖母を亡くす。
住むところもお金もなくなり
困り果てていたゆりの所に、
死んだ祖母からの手紙が届く。
そこには、死んでいると教えられていた両親のうち、
母親はまだ生きており、
しかもその母親はあの有名な女優、
花井しょう子だというものだった。
行くあてのないゆりは、
母を頼りに札幌を訪れる。
そこで美しい腹違いの姉、兄、弟と出会い、
そこで愛を知り幸せをつかもうとする。
が、そこには色々な
困難が立ちふさがっていた。
薔薇のためにあらすじ紹介
祖母と二人暮らしだった、ゆり。
大学受験に落ち、彼には
他に好きな人ができたとふられ、
これ以上不幸はないと思った時
……たった一人の肉親だった
祖母が亡くなってしまう。
住むところも身寄りもなく、
祖母の葬儀費用で貯金も底をつく。
どうすればいいのかと
途方に暮れていたゆりに、
祖母からの手紙が届く。
そこには、今まで両親は
死んでしまったと教えられてきた。
しかし父親は死んでいるが、
母親は実は生きていると記されていた。
しかもその母親は、祖母いわく
「悪たれの押しかけ女房だったくせに、
他に男をつくって出て行ってしまった」
しかも「その母親はテレビや映画でよく見る、
大女優・花井しょう子」
だというのだ。
そしてその母親は札幌におり、
さらに兄弟までいるというのだ。
行くあてのないゆりが、
母の家を訪れるとそこには、
みんな父親の違う兄弟達が待っていた。
チビで太目でソバカスで
剛毛なゆりとは正反対な、
美しい大女優の母・花井しょう子。
出戻りでぐうたらだが美しい姉・芙蓉。
ハーフで酒を飲むと人が
変わってゆりに優しくなる兄・スミレ。
超ブラコンの女と見間違えるような
長髪美男の弟・葵がいた。
美しい家族の中で、
自分だけが醜いことに
コンプレックスを抱くゆり。
だが、兄弟達は外見でなく、
ゆりの内面の優しさ、
明るさに癒されて惹かれていく。
そしてゆりも、毎晩酒をのんでは
記憶をなくしてゆりのベッドに
やってくる兄スミレ。
普段のゆりには見せない
優しい態度を見せるうちに、
心惹かれていく。
だが、スミレが毎晩酒を飲んでいたのは、
これ以上はない大恋愛をしていた彼女を
病気で亡くしたためだったと知る。
心も姿も美しい彼女を
どうしても忘れることのできず
苦しむスミレ。
そしてそんな兄を心配し、
兄に密かに禁断の心をよせる弟の葵。
だがそんな兄に想いをよせていた
葵も同じだった。
いつしかゆりの内面の美しさ、
優しさに惹かれ、
本気でゆりを愛しはじめる。
しかし、ゆりの心はスミレから
離れる事ができない。
けれどまた、スミレと死んでしまった
彼女との美しい愛を何より守りたいと
思っているのもゆりだった。
だから、スミレへの気持ちをスミレには隠し、
ゆりは妹として生きていくことを誓う。
だが、そんな時、ゆりは兄弟で訪れた
別荘で遭難してしまい、
命の危機に陥ってしまう。
ゆりが死んでしまうかもしれない、
そんな時スミレは自分の
ゆりに対する気持ちに気づいてしまう。
が、ゆりとスミレは兄妹。
結ばれない間柄。
と思われたが、実は……。
薔薇のためにネタバレ・今後の展開
お互いに惹かれあっていく
ゆりとスミレ。
血のつながりがある故に、
結ばれないと思っていた。
実はゆりは花井しょう子の
娘ではないとう事実を知る。
今まで父親と思っていた人も、
戸籍上だけの父親で、
実の父親は戸籍上の父親の友人だった。
その友人夫婦から赤ん坊だった
ゆりを預かっていた際、
両親夫婦は事故にあい
この世を去ってしまったのだった。
そんなゆりを不憫に思った父が、
ゆりを実の娘として引き取ったのだった。
そして、その届出の際に、
父を愛していた花井しょう子は、
父の愛を得ようとゆりの母親として
届出書に名を記しただけったのだ。
スミレとゆりには、
全く血のつながりがないことが分かり、
結ばれることに障害はなくなったと思われた。
だが父の愛を失いたくないと
思うしょう子が、ゆりを実の娘ではないと
認めてくれない。
しょう子が認めない限り、
ゆりは戸籍上ではスミレと
兄弟であり結婚することができない。
そんな時、しょう子に新たに
子供を授かったことが判明する。
いくら若く見えても、
高齢出産で危険であると皆に止められるが、
どうしても子供を産むといって譲らない。
子供を無事産むことはできるのか、
ゆりを娘ではないと認め
スミレとの結婚を認めるのか。
もめている間に、しょう子は子供を流産し、
危篤状態に陥ってしまう。
薔薇のために読んでみた感想・評価
チビで太目でソバカスで剛毛なゆり。
しかし、そんなゆりを
家族みんなが血のつながりではなく、
一緒に暮らすことで愛を深めていく。
愛してしまったスミレとは兄妹故、
結ばれないとけなげに、
家族としての愛で満足しようとするゆり。
そんなゆりをいつの間にか
愛してしまった、葵。
目の前に愛しいゆりがいるのに、
家族としての愛しかもらえず苦しむ葵。
そんな中、実はゆりはしょう子の
娘ではないことが判明。
スミレと血のつながりもない為
結婚できることがわかる。
そんな事実を知り、
ゆりとスミレは結婚へと心が揺れていく。
だが、ゆりは家族の誰とも血の
つながりがないと思っていたが、
実は葵とだけは血がつながっていた。
父親の親友がゆりと葵の父親だったのだ。
この世でただ一人愛した女は、
この世でただ一人結ばれることの
叶わぬ相手である。
そのことに葵は苦しむ。
スミレの死んだ彼女への深い想い、
ゆりへの愛情。
叶うことのない
ゆりへの想いを抱き、苦しむ葵。
愛を感じられないしょう子への
愛憎に苦しむ姉、芙蓉。
皆口は悪いけれど、決して冷たいわけでも、
非情なわけでもなかった。
ただ、自分の気持ちを
正直に言葉にするだけなのだ。
みんながゆりを愛し、
ゆりも血のつながりのない家族を
本物の家族以上に愛していく。
そんなゆりに、どこか飄々と生きていた
花井家の人々は癒され、幸せになっていく。
それぞれの優しさ、切なさに胸が痛み、
胸が温かくなる。
そして最後、しょう子は助かるのか、
ゆり、スミレ、
葵の恋の行方はどうなるのか。
美しい人間ドラマ。
心がほっとなる、
温かい大好きなお話しの一つです。
温かく深いヒューマンドラマを読みたい人は是非
人の心の奥に潜む、醜い心。
それを知りながら尚、
それを包み込む大きく強いゆりの優しさ。
色々な登場人物が登場し、
それぞれの人生に大きな悩みを抱えて
生きていることが描かれている。
人は幸せだけに包まれて
生きていけるわけではない。
けれど、不幸の中にも幸せは存在するのだと、
愛しい存在に人は救われ
生きていくことができるのだと
感じさせてくれる、深いお話し。
ちょっとふくよかで、チビで、美しくないゆり。
しかし、家族の中で最も美しい存在として描かれ、
本当に美しくなっていく。
そこには、読んでいる本人もゆりと自分を重ね、
姿が美しくなくとも、
美しく幸せに生きていくことが
できるのだと語りかけてくれる。
求めても得られなかった母の愛に、
もがき苦しむ姉、芙蓉。
そんな芙蓉を愛し、狂気とまで思える
母の愛に辟易している漫画家の男と
親しくなっていき、二人は愛し癒されていく。
求めていたゆりの
愛を得ることはできなかった。
けれど、この世でたった一人、
ゆりと血のつながりがあるという絆を得る。
それを幸せに感じて生きていこうとする葵。
病気で亡くしてしまった彼女を忘れない。
ゆりは亡くなった彼女を二人で
愛しながら生きていくのだと、スミレに語る。
またスミレをその大きな愛で癒していく。
恋人や夫は山のようにいたにも関わらず、
最も手に入れたかった
ゆりの父親を得られなかった、しょう子。
だが、血のつながりのないゆりによって、
そんなしょう子の心の傷をもゆりは癒していく。
こんなに温かく、
深い話しはなかなか
めぐりあえないのではないでしょうか。
美しい人間ドラマを
求めている人におすすめする漫画です。