タイトル | 藤子不二雄物語 ハムサラダくん |
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原作・漫画 | 吉田忠 |
出版社 | 小学館 |
ドラえもん、オバケのQ太郎、怪物くん
といった数々のミリオンヒットを
生み出してきた「藤子不二雄」。
藤本弘&安孫子素雄両氏による
共同ペンネームであることは
広く知られているが、
この伝説のユニットは
いかにして誕生したのか?
「神様」手塚治虫との出会い、
プロになる決意のもと上京、そして
個性的なライバルとの切磋琢磨と友情。
長らくアシスタントをつとめてきた
吉田忠氏の描く、青春まんが道!
藤子不二雄物語 ハムサラダくんのあらすじ紹介
オバケのQ太郎、ドラえもんと
出す作品の大ヒットが続く、
藤本弘と安孫子素雄のユニット
「藤子不二雄」。
売れっ子となった2人は、
漫画を描き始めたころのことを懐かしむ。
転校してきた安孫子が
藤本と隣席になったことから
物語が始まる。
無口な藤本に安孫子は
真面目くさったやつ、との第一印象を抱く。
しかし、2人とも授業中に隠れて
先生の似顔絵を描いていたことがわかり、
一気に打ち解ける。
学校帰りに寄った藤本の家で
漫画家を目指していることを告白される。
共に漫画を描かないかと誘われ、
2人は自分たちの手作り雑誌を
つくることになる。
安孫子は野菜が好きで、それ以外、
特に肉は苦手。
一方の藤本は肉ならハムでもなんでも
大好き、ということで、
それぞれ「サラダ」「ハム」と呼び、
共同ペンネームとして
「ハムサラダ」が誕生する。
ある日2人は手塚治虫の「新宝島」を
手にしてその作風・内容に衝撃を受ける。
ファンレターを投函し、返事がくる。
そして憧れの手塚宅訪問で
その制作姿勢に感銘を受け、
プロとして漫画家になる決意を固める。
熱意をもって上京した2人であったが、
プロの道は厳しかった。
描いても描いても採用されず、
さらにライバルとなる新人漫画家たちが
続々と上京してくる。
様々なトラブルに見舞われ
くじけそうになることも。
しかし困難を乗り越え、ライバルたちと
切磋琢磨しながら着実かつ一歩ずつ、
ハムサラダはプロ漫画家の階段を
上っていく。
藤子不二雄物語 ハムサラダくんのネタバレと今後の展開は?
2人が上京後原稿を持ち込んだ
出版社の一つ、
少年まんが出版社の編集長から
目をかけてもらえるようになる。
連載にはなかなかつながらないが、
2人の今後に大きな期待をかけていた。
単発でいくつか掲載されるように
なったころ、
故郷から一通の封書が届く。
漫画家を目指すことを後押し
してくれたゴリラ先生が
異動になるということ、
漫画家としてデビューした2人が
来てくれればきっと
喜んでくれると書かれていた。
描きかけの作品もあり躊躇する
2人だったが、恩人でもある
先生のため一時帰郷しよう、
そして漫画は故郷で描いて
送ろうと決める。
到着した駅では地元総出で大歓迎。
2人は宴会に次ぐ宴会に
引き回される。
なかなか落ち着いて
描くどころではなかった。
作業は遅れ、ついに
締め切りを過ぎてしまう事態に。
帰京したのち、原稿依頼のあった
複数の出版社に謝罪に向かった2人。
しかし、
ことごとく追い返されてしまう。
少年まんが出版社でも
編集長から罵声を浴びせられる。
「締め切りを守る、
内容が優れている、そのどちらかが
欠けてもプロの漫画家にはなれない」
潔く謝りに来たことは認めたが、
そのような甘さではこれからの
漫画界では生き残っていけないと説く。
その席上でライバルとなる新人漫画家、
畑大輔、ミスター竜と、帰り道に寄った
竜の家では風車かん平に出会う。
アメリカ生活で受けた刺激をもとに
多くのアイデアノートをしたためた
ミスター竜、
態度はへらへらしているが
その指には努力の跡である
ペンダコをもつかん平の姿に、
ハムサラダは新たに闘志を燃やし、
次の漫画に取り組むべく
急ぎ帰宅する。
藤子不二雄物語 ハムサラダくんの読んでみた感想・評価
1977年「月刊コロコロコミック」で
連載されていたが、
そのころから好きな作品だった。
当時漫画家志望だった自分にとって、
漫画の神様といえば
(年代的なものもあるのかもしれないが)
手塚治虫先生ではなく
藤子不二雄先生だった。
その藤子不二雄先生の青春時代を
描いたこの作品は、まさに漫画の
プロを目指すための指標だった。
最近復刊して読み返してみると、
当時見えなかったことも
改めて見えてくる。
舞台は漫画界だが、すべての職業に
共通する教訓などが
散りばめられている。
「締め切りを守る」
「内容がいいこと」
「相手の目線にたって作品をつくる」
などなど。
ハムサラダを取り巻くライバルたちの
スタンスはそれぞれで、
必ずしもハムサラダのような
「熱血」を持ち合わせている
わけではないが、
それでも内に秘めた「プロ意識」は
共通するものがある。
要はどんな仕事においても、
仕事をするからには
「プロ」でなくてはならない。
プロになる道は厳しいものだが、
それを通過しなければいいものは
できない、ということなのだろう。
物語としては実際にはなかった
エピソードも加えられて
構成されているが、
それはそれでまとまっているので
よしとしたい。
惜しむらくは、もう少し
近年に至るまでのエピソードまで
欲しかったところ。
青春時代のエピソードも面白いが、
ある程度売れてきてからの
エピソードまでは
話が続いていればもっと良かったと思う。
ただ「漫画家青春白書」として
みるところでは、
十分完成していると思う。
藤子不二雄物語 ハムサラダくんはこんな方におすすめな作品!必見
漫画家を目指す人は
たいてい目標となる作家がいると思う。
いわゆる自分の中にそれぞれに
「漫画の神様」を持っている。
藤子不二雄先生らの青春時代は
いうまでもなく「手塚治虫」先生である。
現在でも手塚先生を目指している人は
多いと聞くが、これだけ漫画市場が
拡大していることからも、
その対象人物は
多様化していると思われる。
藤子先生や手塚先生を
目標としていなくても、
過去に同じようにプロ漫画家を目指した
青年がどのような青春を送ってきたかは、
漫画家志望者には
参考になるのではないだろうか。
藤子不二雄伝については、
安孫子素雄先生が自伝的に描いた
「まんが道」シリーズがあり、
本人が描いていることからも
エピソードがより詳しく描かれ、
フィクションの割合も少なくなってはいる。
それでも、藤子不二雄先生の
一ファンとしては、
「藤子不二雄史」入門編として
お勧めできるのがこの作品である。
これを読んだうえで、「まんが道」に
行けばより先生の生涯について
理解が深められるのでは
(フィクションがどのあたりなのかを
見極めるのも楽しみの
一つかもしれない)。
漫画家志望でなくても、
ファンでなくても、
仕事をするうえでどういう心構えをもって
どうすればいいか、という
ビジネス目線でみることも可能である。
ビジネス入門書の一つとしての
見方もできると思う。