タイトル | 解決はしません |
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原作・漫画 | 内田春菊 |
出版社 | ぶんか社 |
仕事もオシャレも、そして「男」もと、
充実した毎日を送るOL繭子。
しかし彼女はある日突然、自宅で
耐えられないほどの苦しさを感じ……。
治しづらい病気の恐ろしさだけでなく、
怖いと知りつつも診察を遅らせてしまう、
患者の心理まで鋭く描き切った、
新感覚にして人間ドラマ的にも秀逸な、
医療系患者漫画です。
解決はしませんのあらすじ紹介
外見から華やかに彩り、仕事もこなし、
男性との「夜の付き合い」も
充実しているOL、繭子。
しかし彼女はある日突然、
自宅で我慢できないぐらいの
強烈な息苦しさに襲われてしまい、
たまらずに救急車を呼び、
病院に担ぎ込まれることに。
しかしそれほどの苦痛にも関わらず、
症状はすぐに治まってしまい
医学的に異常を見つけることもできず、
そしてその発作は以後もふいに現れ、
繭子にもの凄い苦痛を
もたらしていくことになるのでした。
解決はしませんのネタバレと今後の展開は?
OLとして仕事をこなす城下繭子。
派手なほどに外見を彩り、
デキる感じで仕事をし、夜は、
手頃な男性とも遊ぶという、
非常に多忙かつ充実した
社会人生活を送っていました。
しかし、バーで飲んでから、
帰宅してお風呂に入り、
その後シャンパンを楽しむという、
リラックスしたひと時を過ごしていると、
突然繭子は、我慢できないほどの
苦しさに苛まれました。
居ても立ってもいられなくなり、
たまらず救急車を呼んだ繭子ですが、
ほどなくして容態は一気に回復、
医学的にも異常は見つからず、
同僚にも調子が良いと言われるほど
普段通りになっていました。
しかし、周りにまったく本気で
心配されなかった繭子は、
秘めた不満を晴らすかのように、
激しいセックスに没頭しますが、
終わった直後再び発作が起こり、
激しく動揺することになります。
幸いまたも発作はすぐに
治まってくれたのですが、
先ほどまで交わっていながらも、
露骨に邪険にする男性や、
世の中の風潮に対して、
繭子は強い不満を抱くのでした。
解決はしませんの読んでみた感想・評価
難しい病気と向き合うだけでなく、
そこに医療者側ではなく、
患者側の抵抗感や偏見を盛り込み、
他の医療系漫画とはまた異質の
強烈なリアルを示している、
野心的な一作でした。
本作のポイントは、登場人物と
病の立ち位置の独特さです。
過去の多くの名作でもそうですが、
基本的に医療系の作品は、
問題の提起と解決によって、
話が進んでいくことが
非常に多いですね。
名医のもとに担ぎ込まれた患者が
抱えている症状という問題を、
手を尽くして回復するという、
ある意味非常に明快な図式です。
しかし本作の場合、活動的で
自由奔放な繭子は、明らかに
「何か」が起きているのに、
静養や根本的な解決ではなく、
人に依存したりして問題を
先送りにしてしまうんですね。
作品的には極めて矛盾していて、
スッキリしない感じですが、
ただ実際のところを考えると、
体調が悪いことが分かっていて、
しかも病院の医師なら、かなり
治してくれそうな場合でも、
病気と言われるのが怖くて、
ついつい医師を敬遠する人が
多いだけにあるある感全開でした。
また、肉体的にも精神的にも
ギリギリまで追い込まれる中、
結局繭子はあれだけ距離を、
うまく取ってきた「男」に
頼ってしまうなど、人が
依存に至る経緯もリアルです。
恋愛漫画っぽい距離感はないですが、
その分濃密な人間ドラマが
楽しめる一作だとも思いました。
解決はしませんはこんな方におすすめな作品!必見
外傷でも細菌からくる病気でも、
その多くは症状が分かりやすく、
病院に行くのもあまり抵抗がありませんが、
メンタル系の場合はいきなり、
せきを切ったように症状が出ることが多く、
その変化は強烈だと言うこともありますね。
実際本作の繭子のように、自由奔放に
人生を満喫していると思っていても、
いきなり症状が出てくることも多く、
だからこそすぐに診察を受け、
対処するのが最善なわけですが、
なかなかそうもいかないのが現実です。
ただでさえ病気と診断されるのは、
まさにレッテルを貼られた感があって、
なかなか辛いものがありますし、
本作のようにイケイケ系の人ですと、
なおさら拒否反応が強く、
治すチャンスを逸する危険があります。
本作はそうした、患者側の心理や
都合の面を全面に出した上での
病気の厄介さを描いていますので、
サクッと問題解決とはいかない分、
病気へと付き合い方を知りたい方に
オススメの内容になっていますね。
また、基本的な構成からセリフ、
セクシーなシーンの扇情感など、
すべての部分のレベルが高く、
教訓的な部分以外でも、
人間ドラマを楽しめるという
優れた点もあります。
ヒロインの性格のアクは強いですが、
その要素があることを踏まえても、
幅広い層に読んで貰いたい、
意欲的な一作と言えるでしょう。