タイトル | 透明なゆりかご |
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原作・漫画 | 沖田×華 |
出版社 | 講談社 |
産婦人科で見習い看護師として働く
高校生の沖田×華。
母が勝手に決めてきたという理由で、
この産婦人科で働き始めるが・・・
そこでの様々な妊婦や
その家族との出会いで命に対する意識が変わっていく。
授かった命の価値は平等ではないのか。
実際に作者の沖田×華が経験した実録ストーリー。
透明なゆりかごのあらすじ紹介
沖田×華は准看護学科に通う高校三年生。
母に勝手に決めてこられたことから、
産婦人科で見習い看護師として働き始める。
まだ准看護師の資格をもっていないことから、
させてもらえる業務は限られているが、
少しずつ様々なことを学んでいく。
産婦人科とは命の産まれる場所だけではない。
日々、人口妊娠中絶の手術が行われ、
透明な命が消えていく。
失われた小さな命を見送る仕事を任された×華は、
意味のないことかもしれないが、
一人一人に優しい言葉をかけて見送るのであった。
その後、初めて分娩の場に立ち会った×華は、
分娩室に流れるハッピーバースデーの歌を聴くと、
感動のあまり泣き出してしまった。
産婦人科とは、
毎日が喜びに溢れている場所だとおもっていたが、
様々な事情によりそうではないことを知っていく×華。
輝く命と透明な命。
その重さは彼女には同じに思えた。
ここではいろんな命のあり方が見られる。
そう思った×華は産婦人科での仕事を続けていくのであった。
透明なゆりかごのネタバレと結末(最終回)は?
見習い看護師として、産婦人科で働き始めた×華は、ここで様々な事実を知ることになる。
例えば、90年代の日本の死亡原因、第1位。
本当の第1位は人口妊娠中絶であるということ。
毎日の様に中絶のために訪れる患者。
日に何体もの遺体を見送ることもある。
この世に「おめでとう」
と言ってもらえない子かこんなにいるとは思わなかった….
あまりにヘビーな毎日に、
3日目にして辞めようかと悩む×華。
しかし、その翌日、
初めての分娩に立ち会うことになる。
新しい命の誕生に感動し、
この仕事を続けていくことをきめる×華であったが、
その後も様々な事情を抱えた人たちと知り合っていくこととなる。
不倫の末、未婚で産むことになり、
分娩まで一切検診にこなかった野良妊婦。
こっそり子どもを産み、
病院の前に赤ちゃんを捨てていった高校生。
父親に性的虐待を受けていた小学生。
双子を出産後、
そのまま亡くなってしまった母親と突然妻を失い、
子どもだけを遺された父親。
年上の男に騙され
妊娠してしまった中学2年の女の子。
干渉しすぎる姑のせいで、
出産を楽しみにすることができなくなってしまった妊婦。
色々な患者と関わることにより、
様々な命のあり方を知っていく×華。
まだまだ見習いで叱られることも多い×華であるが、
少しずつ楽しくなってきた新生児のお世話。
いつか助産師になりたいと
思い始めた×華の心の成長を見守ることになる。
透明なゆりかごの読んでみた感想・評価
第一子の出産を控え、
漠然とした不安の中、
インターネットでいろいろと検索していくうちに見つけた漫画でした。
実際に産婦人科に通う人々には、
それぞれの事情があり、
けして幸せばかりではないという事実を知ることができました。
また×華の子ども時代の話も時折挟まれており、
その頃に知り合った透明な子どもたちの話も衝撃的でした。
家族に無視されている子どもや夜の仕事をしている外国人の子ども、
不幸な生い立ちの子どもがたくさんいることに驚き、衝撃をうけました。
その子たちにとって、
分け隔てなく一緒に遊ぶ×華の存在はとても大きかったことでしょう。
しかし、そのような様々な事情がある中でも、
多くの人が前を向いて力強く生きている。
その事実にとても励まされました。
望まれない妊娠をしてしまい、
中絶を選ぶ人もいれば、つらい不妊治療の末、
ようやく授かった人もいる。
同じ命なのに平等ではないのか、
命のあり方について、強く考えさせられる漫画でした。
授かった命は決して当たり前ではなく、
大事に育てていかなければならない!
と強く思わせてくれる作品でもありました。
作品のテーマ上、重い内容が続くこともあります。
しかし、少しうっかり者の×華のキャラクターや、
温かい周囲の人たち、また可愛らしい絵柄によって、
そこまで暗くならずに読み進めることができます。
最初は母に勧められたからという理由だけで
働き始めた×華でしたが、
色々な人々と出会ううちに考えが変わっていきます。
今は正看護師になったあと、
助産師になる為の専門学校へ進むのか悩んでいる×華ですが、
これからどのような人たちと出会い
どのような進路を選んでいくのか?
今後の×華の成長が気になる漫画です。
こんな方におすすめな作品!必見
妊娠出産を控えている人はもちろんのこと、
若い女性や、妊娠中や、
子育て中の妻をもつ男性にもぜひ読んでもらいたい作品です。
妊娠出産がけして当たり前に行われることではなく、
妊婦は命をかけて出産に臨むこと、
妊娠中の経過も人によって様々であることを学ぶことができます。
また若い女性は、望まない妊娠をしないためにも、
人工妊娠中絶の重さを知ってもらいたい。
中絶が必ずしも悪いことだとは言いません。
誰もが悩みに悩んだ末の結論なのだと思います。
しかし、少しでも望まれない妊娠を防ぐため、
また今後、結婚し妊娠の可能性がある人は、
たくさんの知らなかった事実を知ることができるので、
ぜひ読んでもらいたいです。
また、妊娠は相手の男性がいないと成立しないことです。
男性側の意識を高めてもらうためにも、
ぜひ読んでもらいたいです。
また、妊娠中、子育て中の妻を持つ男性は、
出産がどれだけ大変なことなのか知ってもらいたい。
そして産むだけではなく、
その後の子育ての大変さや、
夫の協力がなければどれだけ辛いか
ということを知ることもできると思います。
男性にはあまり関わりの少ない
産婦人科でのお話ではありますが、
決して関係のない場所ではありません。
少しでも色々な意識を高めるため、
また知識を深めるためにも
この漫画を読んでみるのはいかがでしょうか?