タイトル | 達人伝~9万里を風に乗り~ |
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原作・漫画 | 王欣太 |
出版社 | 双葉社 |
古代中国を舞台に、
任侠たちが紡ぐ壮大な人間の物語。
秦という史上最強の国家に、
既存の力では対抗できない!
ただ兵力を集めるだけでは、
ただ堅牢な城を築くだけでは
勝てないという窮地。
光明となるのは個人の持つ力。
個人と個人の輪。
どこまでも人間の可能性と向き合う、
異彩の歴史ドラマ。
達人伝~9万里を風に乗り~あらすじ紹介
紀元前、中国。
後に戦国時代と呼ばれる頃。
ある小さな国に荘丹という若者がいた。
特技のようなものはないが不思議な魅力があり、
壮大なウソやハッタリを並べていないと
落ち着かないという変わった青年。
荘丹の祖父も不思議な言葉を紡ぐ人で、
他国へ渡り仙人になったという。
狼に例えられる貪欲な国・秦によって
故郷を滅ぼされた時、荘丹は持ち前の
ハッタリを並べて虐殺を防ぐ。
時代に屈しない達人たち、
侠客・名人・盗賊・美女を
集めて秦に対抗してみせると。
秦の将軍たちは荘丹を殺害しようとするも、
何かを感じて放免する。
9年の猶予をやる、
ハッタリを本当にして見せろと。
かくして荘丹は旅に出る。
彼こそは歴史に名を残す
人生の達人・荘子の孫であった。
達人伝~9万里を風に乗り~ネタバレ・今後の展開
あてもない旅を続ける内に高熱を出し
寝込んでしまう荘丹ですが、
その際にウーミン(無名)と
名乗るお喋りな若者と出会います。
講談師の仕事を奪ってしまうくらい
次から次に話題が尽きないウーミン。
彼の頭の中には中華全土の
様々な達人の情報が入っているのです。
また、伝説の料理人・包丁の甥とも出会い、
激励の意味も込めて荘丹はその青年を
包丁と呼ぶことにしました。
荘丹・ウーミン・包丁の3人は
『丹(あかし)の三侠』と
呼ばれるようになる。
秦に抗う人と人との輪を
作り上げていくことになります。
秦という国家に人の輪で対抗できるのか?
その答こそ当時、戦国四君と
呼ばれた多数の食客を抱え、
個人で国家と並んでいた巨大な人物たちです。
その1人、孟嘗君と会う
機会がいきなり訪れます。
緊張しながらも伝説級の偉人と
会えること興奮する3人。
孟嘗君は病に倒れ
余命いくばくもない状態でした。
孟嘗君の口から荘丹の
祖父・荘子の話を聞かされる3人。
孟嘗君が一芸さえあれば誰でも
招き入れ歓待するのは、
まさに荘子の助言に従った結果。
その結果として孟嘗君歯様々な罠や計略を
乗り越えて生き延びることができたというもの。
またそれは単なる処世術を超えて、
偏れば貧するという
人生の教訓が含まれた話でした。
達人伝~9万里を風に乗り~読んでみた感想・評価
秦の圧倒的な組織力に対し、
個人の持つ無限の可能性を
歌い上げる物語です。
理屈を情熱で吹き飛ばす話、
と考えてもいいでしょう。
秦の強さは徹底的な恩賞必罰、合理主義。
頭で考えるなら素晴らしい文句のない国家です。
が、その影には理屈では
割り切れない人の心を踏みにじり続ける、
どうしようもない現実があります。
楚の王墓が秦の武将・白起によって焼かれる
という事件が起きた時。
ウーミンが悶えながらも
恐るべき未来を
誰よりも早く予見し、戦慄します。
甘ったるい幻想が許されない世界。
SFに出てくるような
無機質な世界が秦という
歴史上の国を借りて襲いかかります。
人間というものの本質・可能性が
個の力がもっとも輝いた
戦国の達人たちの姿で描かれるドラマ。
これはもはや単なる
歴史ドラマではありません。
しかし単なる夢想の物語でもなく、
戦国四君と呼ばれた国家に対抗できる個人が、
この時代には実在しています。
人の持つ情熱が、人と人とのつながりが、
大きな渦となって巨大な国家さえも
動かしていた時代の物語なのです。
だからこそ夢を語っているようで、
非現実でもない。
私たちが生きていく上で、
知らず知らず捨ててしまっていた何か。
古代を舞台にしながら
読者である私たちもまた、
忘れていた熱を取り戻すのです。
またこの物語は、歴史上の偉人たちの
ドリームチーム作りという
側面も持っています。
荘子の孫や包丁の甥など、
時代が明らかに違う人物は
血縁関係ということにして。
だからこそ作中で荘丹はわざと
包丁の名を呼び続けるのでしょう。
歴史に名を残す侠客たちのドリームチーム、
どんなものになるかは今後のお楽しみです。
中国戦国時代の熱い生き様を描いた作品!
キャラクター1人1人の持つ
『熱』が段違い!
歴史ものだからと難しい、
堅苦しい話だと思っていたら大間違い!
敵も味方もナイスガイ!な作品なんです。
物語を進行させるための都合のいい
キャラは誰ひとりとして存在しません。
誰もが自分の信念を持ち、
自分の生き様をまっとうする
ことだけを考えています。
その熱にぜひ触れてみてください。
小さい頃、確かに心の中に持っていた
大きく輝くものを思い出すはずです。
今の世の中で生きていくのに、
それは必要ないかもしれません。
しかし捨ててしまうにはあまりにも
惜しいものではないでしょうか?
個人が国家に対抗する話、
人の情熱が組織を覆す話、
そんな風に聞いて冷たく笑うあなた!
そんな人こそ1度は読んでほしいのです。
これは単なるご都合主義の物語ではないし、
単なる過去に終わった物語でもありません。
あなた自身が普段自覚してこなかった、
あふれるほどのエネルギーに気付く物語です。
もちろん歴史好きな方も、戦国時代・・・
特に始皇帝の前となると
資料もなかなか見つからず、
魅力を感じることもなかったと思います。
実はこんなにも面白い中国戦国時代、
今からでも一緒に体験していきませんか?
荘子や包丁、盗蹟に信陵君、
名前しか知らなかった
偉人たちに会いにいきましょう!