タイトル | 銀のヴァルキュリアス |
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原作・漫画 | さちみりほ |
出版社 | 秋田書店 |
目が覚めたら、女性が男性を
徹底支配する世界にいた!?
内気な女子校生ルカが、
自身に眠る力と意志力で、
非情極まる社会を生き抜く、
行きたいと思えないほど硬派で
容赦のない世界での奮闘を描く、
異世界逆転ストーリーです。
銀のヴァルキュリアスのあらすじ紹介
内気で大人しい女子高生、ルカ。
今まで彼氏ができたことがなく、
そのことを親友に心配されたりと、
平凡な学生生活を過ごしていましたが、
彼女の日常は同級生たちが
次々と眠ってしまった
「魔法石」に触れたことで、
女性が男性を支配する
異世界に飛ばされ、
恐るべきサバイバルを行うことに
なっていくのでした。
ルカは双子の男子と出会い、
機転と秘められた力で
彼らを守り抜き、
二人と行動を共にすることに
なっていきますが、
ルカを取り巻く運命の過酷さは、
どんどんと増していくのでした。
銀のヴァルキュリアスのネタバレと今後の展開は?
大人しい女子高生、琉花(ルカ)。
十七年の人生の中で一度も
彼氏ができたことはなく、
男子に幻滅しかけてもいました。
しかし、他の女子高生たちが、
路上で売っている「魔法の石」、
イケメンの夢が見られるという
不思議な石にハマっていく中、
ルカの親友の奈美が、
ルカに会いたいという男子を
連れてきてくれました。
彼は天文部の柿沢君で、
文化祭の時喋ったルカと、
話したいとのことで、
二人きりになると照れながら、
プラネタリウムに行かないかと
誘ってくれました。
しかしルカは返事もせず、
走って逃げてしまう始末で、
これには奈美も呆れてしまいますが、
挽回チャンスのバレンタインの
チョコ選びに誘ってくれました。
しかしその途中でルカは
魔法石を見つけ、
買ってはダメだと反射的に
理由も分からないまま
止めに入りかけてしまいます。
そうしたことがありつつも
迎えたバレンタインデー、
ルカは再び柿沢君と顔を合わせますが、
またもそのまま逃げ去ってしまいます。
するとそんな柿沢君に、別の女子が
勇気を振り絞って告白するのを
目撃してしまいます。
誰が悪かったのでもない、
ただ自分に勇気がなかっただけの
ひどい結果にルカは心底後悔しますが、
そんな「日常」は魔法石を買った
女子たちが次々に倒れるという
事件にかき消されてしまうのでした。
銀のヴァルキュリアスの読んでみた感想・評価
絶対に行きたくない、体験もしたくない、
しかし「本気度」の非常に高い
良い異世界ものを見ることができました。
昨今の「異世界転生」ものは、
多くの場合現実で今ひとつ冴えない、
主人公やヒロインが逆転していくという、
全体の流れがある関係上、
転生先はどうしてもどこか楽というか
イケそうな感じがあったりしますが、
本作は女性が、相手が男性という理由で、
つまり人類の半数を服従させ
こき使っているという危険社会です。
男性ならば絶対に勘弁願いたいはずの、
そして女性でも嫌だという感じの
超強力な修羅場が待っているんですね。
こうした「無調整」な世界観は
近年の作品では珍しく、
だからこそかえって新鮮で、
絶体絶命のピンチをどうやって
やり過ごすのかというルカの
必死の頑張りが映えている感じです。
とは言え、本質的に非民主的と言うか
相当にヤバい世界であることは違いなく、
冤罪で処刑されかけたり、
人の死を平気で見世物にしたり、
「男」というだけでまともに
扱われなかったりと、
どこまで行っても安らぎ切れず、
あらゆる理由で命を狙われる
状況は変わらずと、絶えず
ハラハラ、ドキドキを
味わうことにもなりましたね。
銀のヴァルキュリアスはこんな方におすすめな作品!必見
異世界ものや転生ものなどの架空物語は
様々なジャンルがありますが、中でも
ダイナミックなのが、「異世界逆転」です。
主人公が現代とは異なる世界に行き、
そこは現在の価値観とは真逆な価値を
持っているというものですが、
ほとんどの作品は「異世界」か「逆転」の
一つだけを選ぶものです。
しかし本作は中世ファンタジーを
思わせる異世界を舞台に男女逆転を
見事に描き切っています。
何重にも折り重なった架空を描くだけの
想像力と構成力、破綻を生まない
感覚力は、類似ジャンル好きなら
きっとツボに入るところが
あるのではないかと思いますし、
主人公であるルカの、
現代的な優しさや柔らかさが
かえって周りを引きつけている所も、
単に「弱点」を描かない気配りを
感じることもできます。
ついつい若さや勢いに任せて
突き進みたくなりがちな
この種のジャンルで、
冒頭の導入部から相当に
厄介でヤバい敵との対峙や
困難を暗示させる丁寧さや、
ついつい日常のハードルを
「悪」としてしまいがちな中で
ルカ自身の責任に帰結させたりと、
公平な視線を感じられる部分も
目立たないけれども必見のシーンです。