タイトル | 銀曜日のおとぎばなし |
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原作・漫画 | 萩岩睦美 |
出版社 | 集英社 |
1983年から84年にかけて
「りぼん」で掲載された作品。
英国調の雰囲気で語れる
優しく幻想的なファンタジー。
イギリスの森深くに住む小人族のお姫様
ポーと絵の教室の先生をしている
心優しい青年、スコットとの物語。
銀曜日のおとぎばなしのあらすじ紹介
イギリスの森深くに住む、
小人族のお姫様ポーは大切な友達で
鳥のリルフィーと出掛けたある日、
人間の世界に迷い込み、
心優しい絵画教師スコットと出会います。
ところが毛皮商のスコットの父親は
小人族の反感を買い、
いけにえになってしまいます。
この事件をきっかけにスコットは
小人族にまつわる
「銀曜日の言い伝え」に触れ、
父親とポーの両方を救おうとします。
また物語の後半ではポーが
母親思いの少年シャーロットと出会い、
この少年とのふれあいを軸に
物語が進んでいきます。
銀曜日のおとぎばなしのネタバレと今後の展開は?
物語の鍵となるのは「銀曜日」に
まつわる伝説です。
銀曜日とは人間界でいう金曜日のことで、
昔は必ず銀の雪が降っていたとされます。
小人族では、新月の銀曜日に生まれた
1000人目の女性が死ぬときが
部族の絶えるときであるとされていました。
ポーがそれにあたります。
部族が助かるには2つの方法があり、
一つは10年ごとに
人間を生贄にささげること。
これにより永遠の命を授かることが
できるのですが、そのかわり
「心のない抜け殻」となるといいます。
もう一つの方法は、銀曜日だけに発現する、
互いに信じあう者にしか見えない
「虹の玉」を見つけること。
しかしポーの実の母である女王は
「虹の玉などはじめからない」と言い張り、
あくまでもいけにえをささげようとします。
ポーはこれに反発し、
あくまでに虹の玉を探そうとします。
しかし「虹の玉」にも代償があったのです。
虹の玉を使い、村が救われるのと
引き替えに、ポーが消えてなくなるという
代償です。
母親である女王はこのため、
虹の玉をポーの帽子の中に
隠していたのでした。
銀曜日のおとぎばなしの読んでみた感想・評価
まるで良質な映画を見たかのような
読後感があります。
美しいイギリスの町並みや森の描き方には
心が洗われるようです。
絵柄も大人が見ても絵画作品として
楽しめるほど繊細で緻密です。
娘であるポーに冷たく接していると思えた
女王の態度は、ポーを失いたくないという
思いの裏返しであったり、
当初は冷たい毛皮商として描かれる
スコットの父親もこの事件をきっかけに
自然の美しさや大切さにめざめるなど、
ひとりひとりの登場人物の優しさが
描かれているように思いました。
またどこまでも優しいスコットですが、
ポーを守るために彼なりに戦うなど、
芯の強さを感じさせるなど
登場人物の魅力がそのまま
この作品の魅力になっています。
漫画作品ではありますが、
そのタイトルどおり、まるで
イギリスに古くから伝わる
「おとぎばなし」を読んでいるかの
ような気持ちになります。
また大きく分けて3部構成になっており
大河ドラマのように長く
楽しめるのも特長だといえそうです。
銀曜日のおとぎばなしはこんな方におすすめな作品!必見
まず、リアルな日常の中で暮らす人間と、
森の中の小人や妖精が出会って、
徐々に理解しあっていく物語は
ディズニーのリトルマーメイドシリーズ
などにも通じるものがあります。
リアルな社会との幻想世界の交流は、
むしろ子供よりも大人を癒す物語と
いってもいいかもしれません。
またストーリーは全く違いますが、
ハリーポッターシリーズにも通じる
空気が流れています。
スコットなど登場人物の見た目の美しさは
耽美で、イギリスの
ロックアーティストのようでもあります。
スコットは、当時作者の萩岩さんが
大好きだったというジャパンの
デビッド・シルビアンがモデルとの説も
ありますが、確かによく似ています。
その意味ではブリティッシュロックが
お好きなかたにも
おすすめかもしれません。
かわいらしいキャラクターを描く
萩岩睦美さんの作品では、
おへそのないエスパーの女の子が
主人公の「小麦畑の三等星」や
人魚姫の物語「パールガーデン」なども
おすすめです。