タイトル | 風と木の詩 |
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原作・漫画 | 竹宮惠子 |
出版社 | 小学館 |
薄幸の美少年・ジルベールと、
その出自から差別を受ける
心優しい貴族の少年・セルジュ。
立場は違えど、周囲の大人達の勝手な
欲望に翻弄されていく2人が、
運命的な出会いを経て、
美しくも悲しい恋を
紡いでいく珠玉の名作です。
風と木の詩のあらすじ紹介
舞台は、名門の子弟が集まる
ラコンブラード学院。
ここに、1人の転校生がやってきます。
セルジュ・バトール子爵。
その肌の色から皆の好奇の目に
されされます。
彼の母親は、ジプシーだったのです。
そんな彼と同室になるのが、
ジルベール・コクトー。
その妖艶な容姿に惹かれる人々と
次々に関係を持つ、娼婦のような
性質を持つ、異質の少年です。
運命の出会いを果たした2人は、
反発しながらもやがて
お互いの存在を認め合い、
求め合っていきます。
世間は容赦な く2人に
試練を与えますが、
それでも止めることのできない
想いを貫いてゆくのでした。
風と木の詩のネタバレと今後の展開は?
世にも美しき少年・ジルベールの
生い立ちには、驚愕の事実が
隠されていました。
幼いころから、ただ一人心を許した
存在である、叔父のオーギュストが、
実の父親だったのです。
オーギュストが忌み嫌うボナールに
ジルベールが凌辱されたことを知ったあと、
怒りにまかせてジルベールの全てを奪い、
支配しようとしたオーギュストの行為を、
愛として受け止めるジルベール。
そして、心優しく誇り高いセルジュにも、
両親の悲恋が大きく影を
落としていました。
ただ、彼は、父からは愛情深く
優しい心を、母からは誇り高く
強い心をそれぞれ受け継いでいました。
それが、セルジュの心の支えとなり、
世間からの冷たい仕打ちにも
ひたすら耐えることができたのです。
そんなセルジュであっても、
ジルベールという少年の複雑な心と
その行動を理解することができず、
心を痛めます。
そして、やがてそれが彼への
愛へと変化していきます。
一方、ジルベールも、この世の全てである
オーギュスト以外に、
初めて感心を抱いた人間が
セルジュでした。
そして、セルジュがこの上なく
大切な存在になっていくのは、
彼にとっては必然のことなのでした。
風と木の詩の読んでみた感想・評価
“風と木の詩”という作品は、
元祖ボーイズラブを描いた
漫画の代名詞のような印象を
持っている人も多いでしょう。
しかし、読み進んでいくうちに、
主人公の1人であるジルベールの、
幼子のように愛を求める手段として、
自分の美しい体を利用する危うさなど、
あまりにも悲しい性に、
まるで自分の子供のように
胸を痛めてしまいます。
単なる、少年愛を描いただけの
作品ではなく、人が人として
本当の愛を求めるが故に、
苦しむ姿を美少年ジルベールの姿を
借りて表現しているのではないかと
感じます。
ここまで繊細で美しく、
壊れやすい心をもった人物像が
描かれた漫画は、他にはないでしょう。
そして、もう1人の主人公、
セルジュは、冷たい月の様に
頑なで神秘的なジルベールの心を、
温かく照らす太陽として
存在するのです。
セルジュ自身も、愛する両親との別れや、
不当な差別や偏見をもたれ、
つらい過去を経験していますが、
強靭な精神力で、清く正しい
心を保ち続けます。
そんな2人が、寄り添いながら
生きていく姿は、涙なしでは
見られません。
風と木の詩はこんな方におすすめな作品!必見
妖しく、耽美的な少年愛をテーマにした
漫画が好きな人にとっては、
この作品は、古典的名作と
いってもいいでしょう。
今でこそ、ボーイズラブは
ポピュラーですが、
この作品が発表された当時は、
まだまだ同性愛をタブー視するむきがあり、
問題作として注目されたほどです。
普通の男女の恋愛物語では物足りない人に
おすすめです。
ちょっと刺激が強いかもしれないけど、
一度読んでみることをおすすめします。
ありきたりのボーイズラブとは
一線を画した、まるで芸術作品を
鑑賞するような、
また一流の名画を目の前にした時の
ような世界観を堪能することが
できるでしょう。
同じくヨーロッパを舞台にした、
萩尾望都の“トーマの心臓”も
おすすめです。
多少ソフトで健全ではありますが、
“風と木の詩”と同じ雰囲気を
楽しめる作品です。
思春期をやがて迎えるであろう時期の、
少年達の一瞬の輝きが凝縮された
この漫画は、ボーイズラブと一言では
いいあらわせない、
新たなジャンルとして
確立しているように感じました。