タイトル | 栄光なき天才たち1 |
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原作・漫画 | 森田信吾 |
出版社 | 集英社 |
アベベがかつての敵国、
ローマの地を裸足で
誰よりも速く走破していた頃…
後に日本の英雄となる男は
国内レースで頭角をあらわしつつあった…
様々な分野で戦い抜き、あるいは勝ち、
あるいは敗れ去った者たちを描いた
伝記漫画シリーズ。
2017年にはアニメ化がなされるなど、
再評価の動きが高まってもいます。
栄光なき天才たち1のあらすじ紹介
勝者の影には敗者があり、また、
勝者もいつまでも勝ち続けてはいられない…
一見華やかに見える世界にも、
恐るべきほどの苦悩や怒りが含まれている…
本シリーズで紹介されるのは、
まさに戦い抜いた人々の人生であり、真実。
アベベと円谷のマラソンに賭けた人生…
映画を変えた男、グリフィス…
セクシー女優として世界的に有名になった
マリリン・モンローのもう一つの顔…
…等々
各界の著名人たちの生き様や苦悩が
リアリティのあるタッチで描かれています。
栄光なき天才たち1のネタバレと今後の展開は?
貧しさから抜け出し土地を持つために
親衛隊員となったアベベと、
自衛隊に入ってから頭角を表した円谷。
しかし当初二人の差は大きかった。
アベベが素足で表情すら変えず、
自らの国、エチオピアを武力で支配した
イタリア・ローマを先頭で走破していた
その頃、円谷はまだ無名のランナー。
しかし、必死の猛練習によって
頭角をあらわした円谷。
自国開催である東京オリンピックにおいて
驚異の粘りを見せ、
日本にとって悲願のメダルを手にします。
一方アベベははるか前方で東京を駆け抜け、
絶対王者の地位を確固たるものとします。
オリンピック二連覇を達成し、
立派なチャンピオンとして君臨したアベベと
メダリストとなり日本の英雄となった円谷。
しかし、その後の二人を待ち受けていたのは
勝利ではなく悲劇でした…。
周囲からの大き過ぎる期待や種々の圧力、
重圧に耐えかね、自ら命を絶った円谷…。
事故によって走れなくなってしまったアベベ
その姿が、物悲しいほど似ており
上手に表現されています。
栄光なき天才たち1の読んでみた感想・評価
後々に至るまで極めて優れた伝記物語を
ものにしてきた名コンビによるものだけあり
圧倒的な描写力と構成力が光ります。
日本において馴染みの薄い人物も
多数登場しているシリーズ…。
彼らが紙面を通じてみせる
強さや不屈の闘志…
敗北した後の
えもいわれぬ物悲しさ…
それらに心を動かさずにはいられません。
とりわけ、私の心に刺さったのは誰よりも
美しく強い、寡黙な戦士、アベベと円谷の
全く澄み切ったような戦いぶりであり人生
コーチに疑問を差し挟むことのないアベベ
模範的過ぎるほどの軍人であるアベベ
彼が
祖国を侵略したイタリア・ローマを走破する際、
どんな思いを抱いたのか…
後ろを振り向くことさえ許されなかった円谷
あの東京オリンピックで感じていた重圧は
どれほどのものだったか…
それらを考えていると、もはやこれは単なる
スポーツではないのだという感想に
至らざるを得ませんでした。
そして本書はその異様なまでの迫力を、
あますところなく描写できています。
最近になってアニメ化されるなど、
再評価の動きのある本作。
ぜひとも漫画版という原典にあたることで、
各方面に存在した素晴らしい先人達の歩みを
より熱く再確認していただけたらと思います。
栄光なき天才たち1はこんな方におすすめな作品!必見
本物になるには一体どれだけの
努力をしなければならないのか…
本物であり続けるには
どれほどの実力と幸運が必要なのか…
世の中に多数存在する成功者たちや、
その影に隠れた実力者達の重みのある人生を
追体験するには打ってつけのシリーズ。
堅苦しくなりがちな偉人たちの伝記を
漫画に仕立ててみるという形式は
もはや定番とも言えるほど。
ですが、本シリーズの「重み」と「痛み」を
伴う表現は、
類書とは一線を画すものがあります。
まったく娯楽的ではないにも関わらず、
読む人の心を惹きつけてやまない
仕上がりになっています。
多くの強者たちを描いてきたこのシリーズ、
時には一巻の数分の一以下の分量しか
一人に割いていない…。
中だるみとはまったく無縁ですが、
情報の不足と思うことはないのも
特筆に値するでしょう。
この構成の巧さによって、短時間で、
しかも充実した読書体験が得たいという方
に最適な一作となっています。
読了時間の若干の差は出てくるもの…
この点は小説やドキュメンタリーでは
真似できない部分だとも言えます。