タイトル | 文豪の食彩 |
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原作・漫画 | 壬生篤 本庄敬 |
出版社 | 日本文芸社 |
本社からの転任組記者である川中。
文学者たちの実像に、
「食」を通じて迫るという
新連載を開始させます。
徹底した研究と取材…。
誰もが知っている文学者たちの、
今まで知られてこなかった
実像が明らかになってくるのでした。
文豪の食彩のあらすじ紹介
本社から支局に転じた記者、川中は、
上司の理解を得て、
新企画「文士のお取り寄せ」をスタート。
誰でも知っているような文学者たちの
「食」に迫った連載です。
しかし、本人はもちろん、
関係者もこの世を去っている
歴史上の人物の実像を探る作業。
時には思いもよらなかった本当の姿を、
記者たちの前にさらすことになるのでした。
太宰の実像と作り上げられたイメージとは?
夏目漱石のニセ西洋批判が
形になったようなお菓子とは?
永井荷風が晩年愛した食事とは?
文学者たちの「食」が
リアリティをもってよみがえってきます。
文豪の食彩のネタバレと今後の展開は?
本社から深川支局に配属された記者、川中は
新企画として「文士のお取り寄せ」と称した
食事ものの連載を始めることになります。
もはや実像を知る人がほとんどいないような
文学者達の本質の一端を探る長い旅のような
仕事に取り組んだ川中たち。
徹底した資料の分析と
取材の定番である足を使った調査
その結果、一つ、また一つと
彼らの愛した食べ物の魅力と文学者たちの
本質に迫っていくことになります。
「ニセの近代」を嫌った夏目漱石が
登場人物に好ませたお菓子の秘密とは?
太宰治の作られたイメージと
実相に迫る料理とは?
永井荷風が晩年、若者並みの食欲を発揮して
外食に趣いていた理由は…?
取材が進むにつれて明らかになっていく真実
そこには、作家たちの等身大の実像が
垣間見えていました。
実際に舌を通じて記者たちが味わう
大作家たちの実相の一端…。
それには作家たちの知られざる姿とともに、
作品の解釈を改めるような
要素も含まれていることもあります。
記者たちは常に難しい仕事に
身を投じていくことになるのです。
文豪の食彩の読んでみた感想・評価
非常にコンパクトな短編集です。
伝説的な作品を数多く作り上げ、
また自身も波乱万丈な
人生を送ることになった日本の文学者たち。
そんな大作家たちを評するには、
いささか分量が少ないかな、
と感じる方もいるかも知れません。
しかし、徹底した情報と考察によって、
本書は極めて充実しています。
作家たちの「食」に踏み込むことを通じて、
彼らの「職」に、
そして人生に近付いているようでした。
やはり、いかなる実力がある作家でも
物を食べれなければ書くことは難しいもの。
ハードな生活の中で何を選ぶかには
当人たちの好みや
生き方が否応なしに反映されていきます。
ですから、
その結果は妥当なものだともいえます。
漫画の間に挟まるコラムも非常に面白く、
上質なTV番組を観ているような
面白さがありました。
何度かドラマ化されているようです。
納得の完成度で、しかもただ知識として
学習するだけでなく、私達が店におもむいて
追体験できるのも嬉しいところだといえます。
少し古い料理だけに素朴で、
今風とはちょっと違いがあるのもいいです。
文豪の食彩はこんな方におすすめな作品!必見
短いながらも
とても丁寧に作り込まれていています。
登場人物の設定にも考察にも
無理がありません。
文章のコラムと合わせる形で
理解を深めることができます。
そういう点、ドラマ仕立てで進みながらも、
要所要所で専門家の解説が入るTV番組に
構成と完成度が非常に近いといえます。
ですから、そうした番組が好きという方には
無条件で紹介することができます。
食を通じて文学者たちの知られざる姿を
垣間見ることができるという点で、
文学好きにはたまらない一冊ともいえます。
また、かつて彼らが食したものを、
私たちが追体験することができます。
それについては、グルメ好きも
思わずうなってしまう嬉しさがあります。
教科書的な切り口ではありません。
ですが、ある意味教科書以上に、
日本が誇る大文学者たちを
知るきっかけになるかもしれません。
そうという点では教育的でもあり、
大人の学習漫画としての側面も
強く含んでいるといえるでしょう。
芥川龍之介がどうして
子供っぽいお菓子を熱心に求めたのか?
永井荷風がどうして
あそこまで食にこだわったのか?
読み進めていくうちに本書とは異なる結論が
得られるかも知れませんが、
それもまた楽しみというものです。