タイトル | ラーメン発見伝 |
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原作・漫画 | 河合単 |
出版社 | 小学館 |
遅刻の常連で必ず定時退社、
絵に描いたようなダメ社員の藤本は、
「ラーメン」には強烈なこだわりがあり、
会社が終わった後も公園で屋台を開き、
常に腕を磨いていました。
どっしりとした説得力がある、
正統派のラーメン漫画で、
奇をてらっていないのが嬉しい一作です。
ラーメン発見伝のあらすじ紹介
仕事はまったくできず、風貌も冴えず、
しかも遅刻やズル休みの常習と、
完璧なダメ商社マンの藤本。
もちろん残業などもせず、
課長からは将来を心配される始末。
しかし藤本には「ラーメン」への
情熱や技術がありました。
舌は飛び切り確かで、しかも正直。
課長の送別の場にご馳走した店で、
「まずい」と絶叫してしまうほどの
こだわりの強さで、
会社が終わってからは、
公園でラーメン屋台を引く生活を、
送り続けてもいます。
素人離れした生活を送り、
単なる職人とも違う見識を活かす
藤本は、今日も麺と向き合うのでした。
ラーメン発見伝のネタバレと今後の展開は?
会社を終えてから屋台をしている藤本。
しかし、ここ最近はまるで客が入りません。
すぐ裏の札幌ラーメン屋が
ハンバーグ味噌ラーメンなる
新メニューを登場させ、
それを情報誌が取り上げたことで
客足がぱったり止んでしまいました。
食べてくれる客も、裏のラーメン屋の
行列に新メニューを食べるのを諦め、
止むなくといった感じであり、
仕事が終わってからもラーメンを出す
強烈な熱意の持ち主の藤本としては
気が収まりません。
しかも、翌日にも別のラーメン屋が
TV中継付きの大行列なのを目撃、
藤本も佐倉も食べることにしました。
その店は鮎の煮干を使った
新感覚ラーメンがウリで、
その味に佐倉も大満足、
ただその新メニューは、
濃厚さと引き換えに
鮎の風味を飛ばしてしまったもので、
藤本を満足させるレベルでは
残念ながらありませんでした。
そうした不満等々も絡み、
報道からマイクを向けられた藤本は、
マニアっぽい客と
味を巡って大喧嘩してしまいます。
この騒動には店主も寛容でしたが、
藤本が素人でないと分かると
いきなり態度を一変させ、
お前は何も分かってないと
事実を突きつけます。
弱点を熟知した上で、
あえて濃口を選び大繁盛させた店主は、
「客は情報を買っているんだ」と
大上段から割り切ってしまいます。
濃口を選ぶお客は「本物」である
薄口を好む客を活かすための
「働きバチ」のようなものという、
店主の強烈なビジネス至上主義に
ぐうの音も出ずに引き下がり、
気の抜けた日々を送る藤本ですが、
かねてから知り合いのラーメン店
「こいけや」の食へのこだわりを知り、
リベンジしようと動き出すのでした。
ラーメン発見伝の読んでみた感想・評価
料理漫画は、リアルさと、相反する
ファンタジー的な部分をうまく
ブレンドできるかどうかが肝です。
どんな展開にしてもOK、というのが
漫画の常識というものですが、
料理に限っては大仕掛け過ぎると、
説得力がなくなり、作品全体の
クオリティにも関わるのが難点です。
しかし、本作は、この種の作品の
命と言っても良い料理のチョイスに、
かなりリアル路線を貫きつつ、
商社マンの傍らラーメンを作り、
プロをも唸らせる藤本をメインに
据えていくことで、
絶妙なバランスを完成させました。
プロ顔負けの腕と知識を持ちつつも、
やはり他に仕事をしていないために、
どこかで「職人」になれない、
一方で商社マンであるために、
店に一日詰めている職人とは、
また違う見識や発想を得られる。
そういう藤本を「勝ち役」にすることで、
問題点の指摘やまとめる言葉も
説教臭く感じず聞けるんですね。
また、ラーメン店が抱える問題や
その対処法、ラーメンのレシピ等は、
極めて本格志向で、説得力があります。
料理漫画、特にラーメンが題材ですと、
相当強烈なアレンジが出てくることも
珍しくなく、賛否両論もありますが、
少なくとも本作に登場するラーメンが
本当においしいという部分は、
多くの人に支持されることと思います。
ラーメン発見伝はこんな方におすすめな作品!必見
和食、中華、フレンチにイタリアン、
一口に料理と言っても様々ありますが、
歴史あるジャンルには形式があります。
一方ラーメンというジャンルは、
きっちりとしたひな形がありつつ、
現在に至るまで進化と変化を繰り返し、
また、極めて大胆なアレンジにも
対応していけるだけの
「器量」を持ち合わせてもいます。
それだけにラーメン漫画は
作者の知識や哲学を自由に発揮でき、
まさに腕の振るい甲斐がある、
面白みのあるテーマであり、
一方で作者の想いが問われる、
難しい題材だとも言えます。
本作の思想は至って明快、
「漫画的」な演出や展開を抑え、
代わりにリアル路線に寄せています。
その上で、商社マンをしながら、
趣味のラーメンを屋台で売るという
ファンタジックな生き方をしている、
藤本を主人公に据えて、
独特かつ一生懸命に
ラーメンに向き合っています。
インパクトやインフレがある
創作作品の世界では、
ついつい凄すぎる料理を出して、
現実離れしてしまいがちですが、
本作の地に足のついた感は
かなり徹底しており、
そこが他にはないリアル感と
説得力につながっていますね。