タイトル | 町医者ジャンボ!! |
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原作・漫画 | こしのりょう |
出版社 | 講談社 |
ロン毛で髭で口が悪く、
おまけに態度も特大サイズ。
馬場医院の主である鶴田の
深い知識と行動力が、
患者自身をも治していく。
身近であり、目立たないものの、
今や暮らしに必要不可欠な
町医者の仕事に焦点を当てた、
社会派医療漫画です。
町医者ジャンボ!!のあらすじ紹介
馬場医院の院長、馬場先生の死後、
主のないクリニックに、
長髪髭面の医師が現れます。
彼の名前は鶴田、
ジャンボというあだ名を持つ
実に態度の大きな男です。
彼はかつて恩義のある病院を
金のチカラでもって実権を握り、
院長として仕事を始めていきます。
しかし、ジャンボの仕事は的確、
しかも患者本人ですら気付かない、
厄介な原因すら探り出し、
あるいは、病気を治しただけでは
対処しきれない家族関係を
修復していくなど、
並大抵の医師ではできない難題にも
ズバリと対応していくのでした。
町医者ジャンボ!!のネタバレと今後の展開は?
高校最後の大会が終わり、
今度は受験に集中するべく
予備校に通い詰める石野君。
しかし、野球の夏の大会で、
予期せぬ落球をしたことを引きずり、
ずっと調子は最悪のままです。
模擬試験の結果もとても悪く、
家にいても気は晴れません。
気遣ってくれる父親との関係も
ギクシャクした感じになってしまい、
さらに気分が悪くなっていきます。
一方、その石野君の親友、瀧君は、
体調不良から馬場医院を訪れ、
不安な気持ちでジャンボと会いますが、
慢性的な肘の故障を一目で見抜かれ、
石野君のことを託します。
一方石野君は心療内科で、
「うつ病」と診断されます。
やる気には溢れているのにと
抗議する石野君ですが、
先抜きの見えない状況は変わらず、
ついに瀧君に北海道行きを
話すことにします。
しかし、煮え切らない態度に
ハッパをかけた瀧君の提案を受け、
石野君も馬場医院に向かいます。
自分がうつ病だなんて
とても信じられないという石野君に、
ジャンボは過去の行動を調べ上げ、
そして意外な「原因」を
発見することに成功します。
町医者ジャンボ!!の読んでみた感想・評価
読めば読むほど味が出る作品ですね。
「ブラックジャック」を筆頭に、
素晴らしい医療漫画は数多くあります。
普通の医師ではとても手が出せない、
難しい症例に、大胆な発想で挑み、
神業的な技術で手術を成功させる、
あるいは、どこの辞典にもない
原因不明の病気の原因を解決し、
一気に治療に導いていく……。
領域の区別はあっても、
皆とても頼もしい先生方ですが、
実際に我々が向き合う病気は、
本作にあるような、
いわゆる典型的な症例で、
しかもなかなか難しい状態です。
そして、症状が治ればそれでよし、
ということはあまりなく、実際には、
リハビリや日常への復帰に向けた
いくつもの山を超えねばなりませんし、
もしそれができても、患者側の
問題が解説するわけでもありません。
本作は町医者の日常を描くことで、
そうした個々人の現実をも示し、
読み手に様々な感想をもたらします。
設備も人材も限られていて、
常に手を尽くせるわけではないからこそ、
ジャンボ的な医師が必要なのでしょう。
乱暴で粗野ではあるものの、
様々な過去や断固とした意思を持つ彼は、
表面的な部分を除けば確かに医者であり、
それも相当にタフな意思で、
読んでいて頼もしさを感じましたね。
町医者ジャンボ!!はこんな方におすすめな作品!必見
一口に病院や医者といっても様々ですが、
地域の方々の暮らしを一手に支える、
町の病院は本当に大変ですね。
大学病院に比べて、どうしても
設備的に難しい部分がある中でも、
的確な診断を下さねばならないし、
人間的にも町の人たちに
愛され信頼されるような
人柄でなければならない現実があります。
にも関わらず本作の主人公のジャンボは、
豪快といえば聞こえがいいですが、
粗野で乱暴、しかも金で恩のある
馬場医院を奪い取りに来たりと
万事無茶苦茶です。
闇医者系のキャラも多くいたのが
医療漫画ですが、ジャンボのような
型破りさを持った主人公は、
決して多くなかったのではと思います。
それでいて医者としての腕は抜群で、
お年寄りの容態の急変を見抜いたり、
復帰した病院がリストしている
患者のカルテを頭の中に叩き込んだりと、
根っこの部分は真面目かつ勤勉で、
しかも度胸の強さがあるんですね。
決して日本一の医療を受けられない、
厳しい状況を前提にしつつも、
その中でも必死に最善を模索する、
現代のリアリティが背景にあり、
構成もテーマも明確と、
非常に良く描かれていると思います。
お年寄りが増加するということは、
ジャンボたちが診ているような
厄介なケースが増えることでもあり、
社会的リアリティの面からも
本作は有意義と言えます。