タイトル | PEACE MAKER |
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原作・漫画 | 皆川亮二 |
出版社 | 集英社 |
伝説の拳銃使いの息子であり、
自らもずば抜けた銃の腕を持つ、
ホープ・エマーソン。
決闘を嫌い、無益な殺生を嫌う彼が、
男の勝負の尊厳を損ねる悪漢や、
人の命を奪う襲撃者たちを前に、
超絶的射撃技術を見せていく。
技術の描写も的確で、
登場人物も極めて熱い、
和製ウェスタン漫画の傑作です。
PEACE MAKERのあらすじ紹介
伝説の拳銃使いの息子にして、
「ピースメーカー」を操る男、
ホープ・エマーソン。
博打も弱く、世渡りも下手な彼は
街での成功など望みようもありませんが、
ずば抜けて優れた銃の腕と、
徹底して無益な殺生を嫌う
優しい心根を持っていました。
流れ着いた村で、深紅の処刑人と
処刑人に殺された村から来た少女、
ニコラと出会った彼は、
そのまま旅を続けることに。
しかし、元々甲斐性がなく、
しかも追っ手に狙われる生活では
面倒を見続けるのは無理だと思い、
一旦はニコラと別れる決心をしますが、
そのニコラが入っていった銀行に、
強盗たちが入るのを目撃します。
そこでやむなくホープは、
丸腰で犯人の説得を試みますが、
襲撃者たちは非道にも
人質を撃つという行動に出ます。
しかしホープは投げ入れられた
拳銃を使うことで危機を脱出、
犯人は制圧されることになりますが、
ホープに勝利の笑みはありませんでした。
PEACE MAKERのネタバレと今後の展開は?
荒くれ者が集うとある街。
早撃ちの決闘の結果、
チャンピオンであるグレッグ・リバーが
勝利を飾りました。
賭けた相手が勝ち熱を帯びる観客たちを、
旅人であるホープは醒めた目で眺めます。
王者の勝利や近隣の村の全滅など、
様々なニュースで盛り上がる酒場に、
青年、カイルが、村の生き残りである
一人の少女を連れてきました。
するとグレッグは身銭を切って
彼女の身柄を引き取ります。
一方のホープは賭け金もないのに
博打に負けてしまい、
ひどい目に遭うことになりますが、
手持ちの銃は使わず売らず、
助け舟を出してくれたグレッグにも
触らせない妙なこだわりを見せます。
そんな時、生き残りの少女を狙い、
「深紅の処刑人」がやってきます。
身柄を預かるグレッグは
彼を強力に牽制しますが、
処刑人ハンスも一歩も退かず、
決闘が行われることになりました。
グレッグとハンスの動きは同時ながら、
ハンスは防弾着を装備しており、
グレッグは一方的に撃たれます。
しかし、グレッグが倒れたその時、
制裁を受けていたはずの
ホープが現れ、
防弾着付きのハンスと
撃ち合いで勝負を始めるのでした。
PEACE MAKERの読んでみた感想・評価
シビれた、の一言ですね。
昔からの西部劇ファンとしては、
こんな熱い新作を待っていました。
まず、戦いに臨む銃士たちがいいです。
ある人は金のため、ある人は他人のため、
あるいは名誉のため、自分のため、
様々な理由で戦うわけですが、
その考えが明確で迷いがなく、
自分ならばこうするという
真の意味での個性が見えるんですね。
悪役たちは徹底的にワルく、
しかし悪を働く理由や美学もあり、
仕事に対してはまっすぐな、
「悪」としての魅力と自覚を
たくさん持っている連中ですし、
そんな「悪」と対峙する
ホープにも確固たる信念があり、
自分の流儀に常に従っています。
その頑固さは今風ではありませんが、
恐らく人として大事なものであり、
だからこそ感動を呼ぶのでしょう。
数十年以上もの「路上の実戦」で
磨き上げられてきた西部流の
銃技の数々も驚異的な技巧で、
それを引き出す描写力も見事、
あらゆるところに「プロ」を
感じることができる一作でした。
極めて殺伐とした世界観の割に、
当事者たちが「仕上がって」いるため、
過度に悲惨になっていないのも特徴です。
PEACE MAKERはこんな方におすすめな作品!必見
優れた才能を持つ男たちが技を磨き上げ、
正々堂々とした決闘の場でそれを見せる、
勝敗も生死も覚悟した名手たちの勝負が、
観客を熱くさせ感動を生み出す。
そうした点において、日本時代劇の決闘と
西部劇の撃ち合いは似たような要素を
含めていると言えます。
しかし、大人気のジャンルながら、
日本の本格西部劇はは少なく、
漫画で描かれたケースも希少です。
しかし、数々の名作を描いてきた
皆川氏による本作は、圧倒的な描写力と
科学的な説得力と技術、そして、
男たちが銃を取る「動機」が、
紙面にとてつもないほど強烈に
叩きつけられており、
まさしく日本発西部劇として
胸を張って言えるほどの
仕上がりになっています。
深い歴史や文化を持つイタリアが、
自国文化とは関係ない西部劇を
「マカロニウェスタン」として
ジャンル的に確立させたような、
革命的な匂いすら本作は
漂わせていると言えます。
単に痛快なだけではなく、
しかも妙に内向的でもない、
迫力と男気が伝わる作品として、
本作は後々まで
語り継がれるのではと思います。