タイトル | つぶつぶ生活 |
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原作・漫画 | 栗原まもる |
出版社 | 小学館 |
デビュー作以来数年も
新作を描けなくなっている
絵本作家のところに、
絵本のキャラそっくりな猫がやってきた。
しかもその猫は、事故死した作家の彼女が
転生した姿でもあり……
説得力あるテーマを、個性の強いキャラを
うまく活かして丁寧に描き切った、
面白可愛い系業界漫画です。
つぶつぶ生活のあらすじ紹介
「一寸キャット」でデビューし、
大ヒットした絵本作家、
米田 コウジ。
しかしそれ以来作品が描けず、
時間を無駄に浪費しては、
夜になると飲み歩いてしまうほど
米田は自分を見失っていました。
そんな中、米田の同居人である
豆木が拾ってきた、
「一寸キャット」に良く似た
猫の「みるく」は、
実は人間が転生した姿であり、
しかもその正体は
米田の彼女の胡桃だったのです。
しかし、猫の正体をまだ知らない
米田は相変わらず作品が描けず、
熱意ある担当者の来訪に、
屋根に登って逃げるほど
自信をなくしてしまっていました。
つぶつぶ生活のネタバレと今後の展開は?
デビュー作「一寸キャット」で、
大ヒットを記録し、一躍有名になった
絵本作家、 米田 コウジ。
遊び好きの彼は、入ったお店で
女の子を口説き、
部屋に入れようとしますが、
髪もヒゲもぼうぼうの男性と
美しい猫が出迎えてきたため
女の子は逃げ帰ってしまいました。
ヒゲの男性豆木とと米田は同居中で、
豆木は猫を飼うと言います。
不満を述べながらも受け入れる米田ですが、
豆木が猫に「くるみ」と名付けると、
米田はそれは駄目だと拒絶します。
そんなことをしている中、
料理の得意な豆木がご馳走を作ります。
今日は新担当を迎える日だったのです。
入社二年目という白花 貴恵さんは、
「一寸キャット」のファンだという女性で、
とにかく熱意の塊のような感じです。
明日また来るという白花さんの言葉に、
机に向かい合う米田。
しかし彼が書いているのは新作ではなく、
アイディアが浮かばない言い訳でした。
それを見た猫は、よりによってノートに
「粗相」をしてしまうのでした。
一方、米田は豆木に、くるみという
名前を嫌う真相を明かします。
米田にはかつて、「胡桃」という
彼女がおり、デビュー前から支えてくれ、
「一寸キャット」誕生にも、
多大な貢献をしてくれた人でしたが、
米田が忙しくなるとすれ違うようになり、
大喧嘩した直後に事故死してしまった
悲しい過去があったのです。
真相を知った豆木は「くるみ」でなく、
「みるく」と
猫に名付けることにしました。
つぶつぶ生活の読んでみた感想・評価
デビュー作を描いたところで
うまく筆が進まなくなってしまった、
つまりプロとして最初の「壁」に
悪戦苦闘している作家という、
非常にあるある感の強い、定番的な
業界漫画としての下地を置きつつも、
色々とクセがあり面白い登場人物の
ドタバタを髄所に交えつつ、
主人公の恋人がいきなり猫に転生し、
ちょっとしたことで人に変わったりと、
とてもバラエティ豊かな面白さを
満喫することができました。
いきなり大々的なデビューを飾り、
しかし描けなくなった米田さんの
強がりとその裏返しの弱さや、
豆木さんの外見とは裏腹の優しさ、
「復活」した胡桃さんの奔放さなど、
表情豊かで個性的な各人の動きや、
様々な人が重なり合うことで、
予期せぬ変化が生まれそうな雰囲気、
作品を生む中での苦しさなど、
細部に至るまでの丁寧さと、
それを一気に吹き飛ばすような
ハイパワーを持ったキャラたちの動きが、
非常に痛快で心地良く、
一気に読み進めることができました。
分かりやすく明確な筋がある一方で、
それが予期せぬ行動で崩れ、
やり直しになってしまうような、
現実的な不規則を、計算された
世界である作中で、実にうまく
盛り込んでいるのが素晴らしいですね。
つぶつぶ生活はこんな方におすすめな作品!必見
作家はデビューするのが簡単だが
作家であり続けるのは難しい、
といった感じの格言を良く聞きます。
実際のところ、一般企業に就職するよりも
ずっと狭き門なのが作家の世界なのですが、
作家という「状態」を続けていくのは
本当に大変なことで、こうした言葉が
ひとり歩きしているようです。
本作は絵本作家を主人公にした、
広い意味での「業界漫画」であり、
米田さんが詰まってしまっているのも、
「デビュー作の次が描けない」という、
作家として極めて良くある段階であり、
リアリティがある設定とも言えます。
作家の海の苦しみを表現する一方で、
どうしても物を壊してしまう豆木さんや、
熱意満点だがおっちょこちょいな
担当の白花さんなど、
個性豊かな登場人物が多く、
コメディとして非常に練られた
うまい構成が光っています。
何より、家に招いてもらった
猫のみるくちゃんが
非常に面白い役どころ。
人間の食事を採ると姿を変え、
米田さんの恋人だった胡桃さんに
なっていくわけですが、
人間のまま生活を満喫していると、
「猫」を拾ってきたはずの
豆木さんが心配してしまいますし、
猫のままだと当然人として
思うようにいかなかったりと、
転生後なのに思うようになりません。
こういった細やかさが全体に見られ
勢いだけの大味な感じがしない本作は、
動物好きにもラブコメ好きにも安心して
読み進めていける、非常に丁寧な
一作になっていると言えます。