タイトル | マンガギリシア神話1オリュンポスの神々 |
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原作・漫画 | 里中美智子 |
出版社 | 中央公論新社 |
とても有名で、しかし内容は案外知らない、
「ギリシア神話」が、大家 里中 美智子氏の
筆によって活き活きと描かれる。
日本神話や各種の民話ともまた違う、
強烈なほどに自由奔放な神々の姿が、
読者に新鮮な驚きをもたらす。
今後のギリシア文化研究にも有用な、
非常に優れた一作と言えるでしょう。
マンガギリシア神話1オリュンポスの神々のあらすじ紹介
最初に混沌だけがあった世界に、
様々な存在が生まれ、
クロノスやその子ゼウスが、
力を発揮していく中、
様々な能力のある神々により
秩序だった世の中が作られていきます。
しかし、権力の座についたゼウスは
父、クロノス同様に絶大な権力を
好きなように振るっていき、
プロメテウスが生み出した人間にも、
成約を課そうとしてきます。
牛肉に関する選択で、プロメテウスの
機転にしてやられたゼウスは、
今度は人にとって生命線でもある、
「火」の力を取り上げようと試みます。
マンガギリシア神話1オリュンポスの神々のネタバレと今後の展開は?
自分の子供たちをも地下に追いやる、
傲慢な父王、ウラノスを撃退した、
王子クロノス。
しかしクロノスは末弟の身ながら、
王を倒した功績をアピールし、
自ら王の座へと座ってしまいます。
その選択は、母ガイアの
望みではありませんでしたが、
クロノスはどんどんと突っ走り、
王として世界を支配していきます。
しかし父を追い落として
王になったクロノスは常に
恐れを抱いており、
他の神々が子を育てていく中、
クロノスは生まれた子供を
飲み込み続けていきました。
そこで彼の妻は、
自分の父祖でもある
ガイアたちに相談し、
クレタ島の洞窟で
ゼウスを出産します。
妖精たちの庇護のもと、
すくすく育ったゼウスは
クロノスに対して憎しみを抱き、
彼を倒すことを決意します。
しかし、まだ年少のゼウスには
クロノスを真っ向から破る力はなく、
そのために彼の母は一計を案じ、
吐き気を催す薬を酒に混ぜ、
クロノスに飲ませました。
気付かず飲んだクロノスは
激しく嘔吐し、彼の腹の中で育った、
子供たちを世に出すことになります。
マンガギリシア神話1オリュンポスの神々の読んでみた感想・評価
お堅いお話が続くのかと思いきや、
ドキドキとビックリの連続でした。
神々が現在の我々からすれば
至って身勝手な理由で争うのは、
神話では割とお馴染みですが、
戦いに至る前や後の平時でも、
女性問題がまずすぎて
揉めに揉めまくる男神たちや、
足跡を偽装して証拠隠滅という
現代犯罪小説にも通じるような
大胆かつ巧妙な手口で
他者の牛を盗んだヘルメスと、
ヘルメスのずる賢さを有用として
罰も与えず水に流させるゼウスなど、
とにかく人の上に立つには
色々とまずそうな感じの
神々が満載なのが斬新でした。
特にゼウスは色々と問題があり、
傲慢な父、クロノスを
破ったところまではともかく、
その後はまさにやりたい放題、
お妃にも呆れられるのが納得の、
ダメ君主ぶりを発揮しています。
どうしても多くの神話では
悪神はいても、一番上の
神ともなれば品格貫禄ともに十分で、
率いるにふさわしい好人物が
座についているものなのですが、
このギリシャ神話に限って言えば、
そういう装いが一切なされていないのが、
かえって清々しいほどです。
本作は女性漫画の大家として知られる
里中 美智子先生の筆によりますが、
極めて高い画力構成力はもちろん、
その美しく完成された世界の中で、
しれっととんでもないことを
神々がやり続けるものですから、
神話の大胆さがいっそう強調されています。
マンガギリシア神話1オリュンポスの神々はこんな方におすすめな作品!必見
日本国内、あるいは世界中の神話や民話は、
昔から言い伝えられてきたからか、
非常に興味深いものが多いですが、
一方、大人が子供に語るといった
お話の性質上もあるからか、
教訓的なお話もまた多く、
現代風の創作にそのまま活用するのは
盛り上がり等々の面で難しい側面も
否定できません。
しかし、メジャーな神話の中でも、
古代ギリシア神話は、その自由さと
奔放さで群を抜いており、
現代に照らし合わせると、むしろ
一般的なお話としては強烈過ぎる
ハードなエピソードが満載です。
時代背景的にキリスト教の
倫理的影響を受けていないからか、
それとも神々が特別に自由なのか、
とにかくあらゆる悪徳を、
サラっとやってしまう神々の
行動が濃密かつ鮮烈ですが、
特に男神たちの行動が凄く、
特に父との対立を経て
大神の地位についたゼウスは、
色々とやりたい放題の極致で、
有能で決断力があるだけの人が
国のトップになるとまずいのが
痛感できてしまうレベルなのは
神話としては本当に珍しいですね。
退屈でない神話をお探しの方には
まず本作をと言うことができますし、
どこかが不自由でも見捨てられず、
役割を得ていく部分には、
ハンディに関する古代ギリシア人の
現代にも通じる進んだ考え方を
垣間見ることもできるかも知れません。