タイトル | 港町猫町 |
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原作・漫画 | 奈々巻かなこ |
出版社 | 小学館 |
どこにでもあるような港町、
でもそこには、猫と意思を
疎通させることができる魔女と、
気まぐれだが可愛くて
ちょっと寂しがりな
猫たちが住んでいました。
ほっこりと心が温かくなる、
日常にちょっぴりの魔法が加わった、
猫と人がつむぐファンタジー作品です。
港町猫町のあらすじ紹介
「最初の魔女」と「最初の猫」が
出会いを果たしてから、
その港町にいる猫と人には、
特別な「魔法」がかかっています。
別に何か大掛かりなことが
できるわけではなく、
呪いがあるわけでもないけれど、
猫が人の形になって、
思いを伝えてくれるという、
穏やかで素敵な魔法です。
どこにでもあるような、
でもちょっと普通とは違う
静かな港町で、
仕事を失った元女優のスタアも、
行き場をなくした女性も、
「魔女」として受け入れられ、
魔女と意思疎通ができる
猫たちは今日も、
のびのびと暮らしています。
港町猫町のネタバレと今後の展開は?
港に来て猫と出会い、
「魔女」になったカノさんですが、
彼女も元は東京の歌劇団の
スタアだったために、
当時のファンがやって来ました。
一見ヤクザじゃないかというぐらい
ラフな格好をしたその男性も、
杉村 カノの大ファンらしく、
ソラさんとの口喧嘩から、
ドント節を怒りに任せて歌う、
カノさんに苦言を呈しました。
もちろん、今のカノさんが
そんな意見を聞く義務はなく、
凄い目力で男性を黙らせます。
とは言え、男性としては、
カノさんが東京から消えた
理由が納得できませんでしたが、
山が鳴ったために、
「よそ者は外に出ない方が」と
釘まで刺されてしまいます。
一方のカノさんも、自分に
好意を抱いてくれる人を
ぞんざいに扱いたいわけではなく、
家事ができず歌もまずいと
指摘されたことも含めて、
気持ちをへこませてしまいますが、
彼女に寄り添う猫たちは、
山から降りてきた
鼠の大行列を追って、
勝手に進んでいってしまいます。
そして、海に落ちた鼠たちですが、
溺れて死んでしまうのではなく、
トビウオに姿を改め、
新しい命を生きるのでした。
思いのたけをカノさんに伝えた
ヤクザっぽい男性も、
一晩経つと穏やかになり、
今までとは違う生き方を選んだ
カノさんとその歌声を
受け入れたようでもありました。
港町猫町の読んでみた感想・評価
静かですが温かく、心に染みる物語でした。
動物全般好きですが、
やはり一緒に暮らすなら、猫か犬だなと
考えている私にとって、
気まぐれで可愛い猫たちが、
少年の姿になって一緒にいてくれる、
本作はまさにストライクゾーン、
しかも単に「猫という設定」ではなく、
人間とはちょっと違う性格や
猫ならではの気まぐれさ、
そして、本当は人が大好きで、
寂しがったりもする、
「人間と近しい猫たち」の、
実像が再現されているのが、
本当に嬉しかったですね。
そして、猫に選ばれたという
「魔女」たちも、
何か恐ろしい背景があるわけでなく、
人より少し寂しくて感受性があり、
正直なところがある、
愛すべき不器用さを持った人たちです。
その両者が、寂れてはいるものの
温かな雰囲気に満ちた港町で、
それぞれの幸せを掴んでいくのは、
読んでいて実に心地良かったですし、
お話全体としても不自然でなく、
たとえ猫の天敵である鼠でも、
無下には扱わないような優しさが
心に染みましたね。
港町猫町はこんな方におすすめな作品!必見
洋の東西を問わず、猫は気まぐれで、
どこか不思議な力を持っていると
認識されてきました。
そして港は、常に人や物が行き交いますが、
多くの場合港町や島は、猫を大切に
扱ってきました。
古来、多くの船にとって食料を奪い
病を広める鼠は大敵で、だから猫が
大事にされた部分はありますが、
自由な海の男たちの気質が
どこか猫に似ていたからかも知れません。
本作は、静かで温かく、色々な
猫が集う港町であり、
化け猫たちは魔法を使って、
心が通う人と、同族として
暮らしていくことができます。
猫と喋れればどんなに良いかと考える
多くの人にとっても、
素敵な魔法に憧れる人にとっても、
本作ののんびりとした港町の光景は、
憧れに値するものですし、
その正直過ぎる性格から、
他人となかなかうまくやれないソラや、
港から渡ってきた魔女たちの話は、
現代の私たちにもつながる辛さと、
そこからの救いを描いているように
私には感じました。
猫やのんびりとした港が好きな方、
日常的に大変さを感じている方に、
本作の光景や可愛くて気まぐれな猫たちは
温かい何かをもたらしてくれるのではと
私は思います。