タイトル | SP 警視庁警備部警護課第四係 |
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原作・漫画 | 金城一紀 灰原薬 |
出版社 | 小学館 |
テレビドラマから
劇場公開作品ともなった『SP』。
VIPの傍に常に立ち、時にはその
盾となることも厭わない
セキュリティポリスを題材にし、
細かな部分まで追求した
ストーリーと鮮やかなアクションが
高い評価を得ている。
その『SP』を劇画にした本作品は、
SPワールドを踏襲しながらも
オリジナルストーリーを交えて
新たな魅力を見せる。
SP 警視庁警備部警護課第四係のあらすじ紹介
新人SPの井上は、女性SP笹本と
ともに与党政調会長警護の任に
あたるが、警護対象者(マルタイ)で
ある政調会長に予定外の行動を
取られてしまう。
マルタイが向かった先は愛人を匿う
リゾートマンション。
井上は現着した直後何かに気づき
マルタイに覆いかぶさる。
そこに、多数の銃弾が。
林道にマルタイを連れて逃げ込んだ後、
井上は笹本にこの場に留まって
囮になれと言い残し消える。
3名の襲撃犯がマルタイと笹本に
目をつけた瞬間、井上が単独で
犯人らを制圧する。
笹本は1分程度で武器を携行した
3人のテロ犯を倒した井上に驚く。
その後、井上らも不可解に思う
事件が連続するが、四係は
傷つきながらも任務を遂行していく。
井上は特殊な能力を持っていた。
周囲の空気感、音、匂いなど諸々の
要因を感じ取る過敏すぎる感覚を
有しそれは人の悪意さえにも
反応できる、にわかに信じ難いものだ。
おそらくは彼が子供の頃に目の前で
両親がテロの巻き添えで殺害された。
それが能力発症の原因と考えられる。
現総理の麻田を昔襲撃しようとして
別人を殺害した男・山西が出所する。
その山西に麻田サイドが接触、何かを
頼もうとするも山西はそれを拒む。
新たな任務で麻田を警護する井上たち。
スピーチする麻田を見た井上は、自分が
麻田を射殺する場面を想像し混乱する。
その時、麻田が狙撃される。
麻田への狙撃はペイント弾によるもので
麻田の生命に別状は無かったが
会場は大混乱。
そこでようやく井上は異変を
感じ取りはじめる。
それは山西だった。
麻田に付くSPを次々銃撃する山西は、
ペイント弾狙撃そのものが
麻田の狂言であることを口にする。
山西を確保しようとした石田、笹本、
山本らが銃弾に倒れるが、井上と
尾形が壇上に辿りつき、山西を
挟み撃ちにする。
山西は、嘗ての麻田襲撃をも
麻田のシナリオであることを
暴露するうち、井上がその時の
子供であることに気づく。
麻田が暴漢から子供を守った体
(てい)にする為に襲撃犯役に
された山西は流れの中で井上の
両親を刺殺してしまう。
殺人は予定外とは言え、子供を
庇うことで英雄視されるだろうと
麻田はそこで笑みを浮かべていた。
その笑みを間近に見ていた井上は、
両親は猿芝居の犠牲にされたと
知るや、麻田に殺意を抱く。
山西が自分を使い捨てにした
麻田に襲い掛かるが、尾形が
彼を射殺する。
翌日、日本警察の優秀さを雄弁に
語る麻田の姿に尾形は怒りを募らせる。
SP 警視庁警備部警護課第四係のネタバレと今後の展開は?
第四係に新人4人名が配属される。
井上は彼らに嫌な感じを抱き、更には
尾形にも不穏なものを感じていた。
尾形は与党幹事長・伊達と繋がって
いて、新人らも含めて何かを
企んでいる。
井上は尾形に呼び出され、
ある公園に向かう。
そこは井上の両親が殺害された現場だ。
父が麻田の策略で死に追いやられ
その復讐を遂げにこの公園に来た
若き尾形も、井上の両親が絶命した
場面に遭遇していた。
特殊能力を腐ったこの国を変える為に
使えと“悲願達成”の仲間に誘う
尾形を、井上は“正しさ”から拒む。
尾形は関わるなと言い残して立ち去る。
衆議院本会議開催の日、尾形や
井上らは議員警護の任にあたる。
議員警護の為に集まってきたSPは、
井上たちを除いて、本会議開会後
すぐ衛視らを拘束していく。
他にも関係業者やマスコミに偽装した
不審人物がおり、たちまち議事堂は
占拠されてしまう。
尾形の命令により議事堂内にあっても
遠くにいさせられた井上は、特殊能力により
危機を感知するがそれは一足遅く、
尾形らは本会議場に乱入しこの場を
占拠したことを内外に宣言。
国会内で発生したテロをテレビが
生中継することで国民の多くが
注目しはじめた。
反逆の首謀者と目される尾形を
井上は思う。
尾形は自らの行いを止めてほしくて
自分たちが議事堂内に入れる任務を
与えたのではと。
井上たちは反逆者らを倒し続け
本会議場入口に辿りつく。
次々と麻田内閣の閣僚達の
不正を白日の下にしていく尾形。
最後は麻田の番だ。
成瀬という嘗ての政治家を死なせた
原因は麻田の策略によるとして
詰問する尾形。
それを眺める伊達。
実は伊達と尾形は兄弟だった。
麻田への復讐を誓って麻田に
近づける立場の人間に生まれ変わった
兄弟が積年の恨みをここで晴す、
そう思っていたのは弟の尾形だけだった。
突然、テロ犯らを説得しだした
伊達を見た尾形は、国の新しき
リーダーになる為に伊達が別の計画を
持っていたことに気づく。
尾形はテロ犯らに裏切られ
銃口を向けられた。
その時、井上らが乱入する。
彼らの適確な発砲と格闘術、
そして尾形もそれに加わることで
テロ犯らは続々と倒された。
尾形に詰め寄られた麻田は、その
反逆SPの男が成瀬の息子だと
いうことに気づき、観念して
罪を認める。
井上がそこに現れ、尾形に投降を
呼びかけるが、尾形は拳銃自殺する
素振りを見せる。
井上が発砲してこれを止めた。
解決した国会テロはいくつかの
謎を残すも、井上は今日もまた
警護任務にあたる。
SP 警視庁警備部警護課第四係の読んでみた感想・評価
この作品はテレビドラマや劇場公開された
岡田准一さん主演の『SP』に
おおまかには準じた内容ですが、
若干設定や時系列を変えている所が
あります。
この劇画版には、映像版に無い
オリジナルストーリーがあります。
警護中のSPが狙撃される事件が
2つ連続して発生。
しかも、同じ部位を遠距離から
撃ち抜くという正確な射撃。
たったの2件だけですが、記憶力も
驚異的な井上は膨大な資料の中から
共通項を見い出し、笹本ともに訓練日なのに
無断で犯人確保に向かいこれに
成功するという話。
このエピソードには、笹本がSPになった
理由が語られています。
笹本が射撃のオリンピック代表候補で
あったことはドラマの設定にも
ありましたが、詳細は一切
不明でした。
それを笹本本人の口から
知ることができるのです。
また、マルタイが厚生労働大臣の
エピソードでは、マルタイとSPとの
関係に葛藤する石田の姿を
細かく描写しています。
テレビドラマの最終回では
管理官・西島が自殺
(おそらく偽装)してしまい、
彼が警護情報を漏洩させていたと
睨んでいた公安がその逮捕に
失敗するシーンがありましたが、
劇画版では公安がいかに西島を、
そして尾形を怪しんでいたかの
過程にも触れています。
映画にあった官房長官襲撃事件を
この劇画版でも読めますが、笹本に
ガードされて「官房長官、羨ましい!」と
思ってしまいそうなコマもありますよ。
特に笹本は、映像版で彼女を
演じた真木よう子さんにそっくりな
クールでカッコいい姉御肌の
女性SPそのままです。
他のキャラは山本が似ている
程度で井上らは見た目や
喋りなど、部分部分で違った
印象を持ちました。
それでも、この劇画版は映像版よりも
第四係のキャラの内面を詳しく
描いているなと思います。
SP 警視庁警備部警護課第四係はこんな方におすすめな作品!必見
ドラマと映画のファンには
「どうせ同じもの」と思わずに
読んでいただきたいです。
この劇画版は映像版と似て
非なるものであり、映像版では
描かれなかったことに触れられる
かも知れない作品だからです。
映像版はいくつかの謎を残して
終了しており、視聴者にはそれ以外にも
各自いろいろな疑問を持つ内容で
あったと思います。
この劇画版は映像版と全く同一の
ストーリーではありませんが、
例えば感想でも述させていただいた、
笹本が華やかそうなオリンピック選手
ではなくSPを選んだのは
何故なのかという点は私が知りたかった
ことの一つでした。
それをこの劇画版で知れたのです。
また、公安の田中や井上の主治医が
井上への期待あるいは心配をする様子、
そういった周辺キャラについて
映像版よりも掘り下げた場面もあります。
全話を読み通すことで映像版では
感じなかった『SP』の新たな
発見があるかも知れません。
そういった点では他作品で同様の
期待ができそうなのが
『相棒 たった二人の特命係』です。
これは人気ドラマ『相棒』の初代
相棒・亀山薫版を劇画化していますが、
今でも支持者の多い、杉下右京と
亀山薫のコンビ。読み手によっては
『SP』のように新しい魅力を
発見できるのではと思います。
『SP]』に話を戻すと、映像版を
知らない層にもこの劇画版単体で
楽しさを充分に満喫することは
可能です。
組織の裏、闇の存在、そういった
敵と対決するストーリーは昨今の
刑事モノの人気を支えている
一因ですが、この手の話が好きな人にも
読んでいただきたい作品です。