タイトル | ハル |
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原作・漫画 | 綾瀬羽美 |
出版社 | 集英社 |
恋人を飛行機事故で亡くし、あまりの
衝撃に心を失い、世界のすべてを
捨て去ってしまった少女・くるみ。
恋人そっくりに作られ、少女の心に
光を取り戻そうと、ぎこちなくも
奮闘するロボット・ハル。
そんなこじれた二人が、未来の
京都を舞台に絆の強さを確かめ合う、
ぬくもりと愛情にあふれた
SFファンタジーです。
ハルのあらすじ紹介
世界のすべてから心を閉ざした少女。
恋人のハルを飛行機事故で亡くした
くるみは、ショックで精神が
崩壊してしまい、あらゆる人との
つながりを断ち切り、押し入れに
閉じこもりっぱなしの世捨て人。
ロボットのQ01(キューイチ)は、
くるみを苦しみから救い立ち直らせるため、
ハルそっくりな姿に自分を作り変え、
とざされた心を必死にこじ開けようと
献身的にくるみと関わり、
打ち解けようと奮闘していく物語です。
パズルを解くと願いが叶うという
キューブ(架空の玩具)にくるみが
書き込んだ夢
「キリンを飼いたい!」
「ゆかたを着て祭りに行きたい!」……
くるみが引きこもりになる前にキューブに
託した願い事を、まるでパズルを
解くように、ひとつひとつ叶えて
いくことで、ハルは信頼の絆を
築いていきます。
突然現れる謎の男・リュウ。
生前のハルと親友だったというリュウの語る
二人の過去は、ハル(ロボット)にとって
信じられない世界の現実をつきつけます。
はたしてハルとくるみは、その心に
光あふれる世界を
取り戻すことができるのでしょうか?
ハルのネタバレと今後の展開は?
実は、飛行機事故で恋人を
失ったのはハルのほうだったのです。
事故でくるみが死んだのは自分との
喧嘩に責任があると思い込んだハルは、
後悔の念に耐えきれず、自分のことを
ロボットだと思い込み、完全に
心を失い廃人となってしまっていたのです。
逆にくるみは、死んだくるみの容姿に
作り変えられたQ01(キューイチ)が、
ハルの心を回復させるために
ロボットによる治療(ロボット療法)を
施していた姿だったのでした。
ちょっとややこしいですが、自分のことを
ロボットと思い込んでいる人間(ハル)が、
自分のことをロボットと思い込んでいる
心の病の患者を救うために人間の
ふりをして治療を施しているロボット
(キューイチ)の演じる心をとざした
人間の少女(くるみ)を
立ち直らせるために、人との関わりや
絆を通じて人間性を復活させていくという
お話だったのです。
キューブに託されていた願い事は、
引きこもりには手の届かない憧れ
なんかではなく、死んでしまったくるみの、
けして叶うことのない夢だったのです。
ハルの読んでみた感想・評価
ロボットが登場してストーリーの重要な
部分に関わってくるので、科学知識が
要求される肩肘のはったSF作品と
思ってしまうかもしれません。
でも、ロボットの存在をそのまま
「宇宙人」や「妖精・妖怪」といった
非科学存在に置き換えても、違和感なく
ストーリーが通じてしまうので、童話とか
寓話といった、かなりファンタジー寄りの
カテゴリーな作品なのだと思いました。
実際、とても気楽に
あっという間に読めてしまいました。
むしろSF的なカラクリとしては、
モノにかざすとそのモノの価値が
画面に金額表示されるスカウターに
興味が湧きました。
空は0円なのに山はウン億円とか、
当たり前に見えていた風景を違った
視点角度で切り取る着眼点は、
とても新鮮で面白かったです。
あとイケズで有名な京都の人達が、
皆優しく描かれています。
というか、いい人ばかり過ぎる!
きっと未来の京都は、とても住みやすい
街なのかもしれません
(とはいえ、作品中に京都と
確認できる描写は
祇園祭くらいしか無いのですが)。
ハルはこんな方におすすめな作品!必見
この作品は同名アニメ映画
「ハル」の漫画化(コミカライズ)
作品です。
アニメのキャラクターは漫画家の
咲坂伊緒(アオハライド・他)先生が
担当されています。
なぜ漫画版も咲坂先生が
描かなかったのだろう?
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
アニメも漫画もキャラクターにそれぞれ
独特の魅力があって、どちらも十分に
楽しめるよう考えられたメディア
展開なんだと思っています。
あと漫画版には、巻末にオマケの
外伝として前日談&後日談が
描かれていますので、映画を見た方も、
まだ見てない人にも、ちゃんと
楽しめる作品となっています。
また、アニメの脚本は佐藤健さん
主演で話題になった、これまた
ロボットの登場するTVドラマ
「Q10」(キュート)の木皿泉先生です。
コミカライズなので、漫画版もほぼ同じ
脚本ストーリーになっています。
ラストのどんでん返しからの余韻が
ずっと残りつづける読後感は、
木皿作品ならではと思います。
ですから当然ロボットの名前
Q01(キューイチ)の元ネタも
そのあたりから来ているのではないかと
思ってます。
ドラマ「Q10」ファンだった人、また
木皿作品の独特な世界観や
プロット構成が好きという人にも
超オススメの漫画です。