タイトル | モンスターキネマトグラフ |
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原作・漫画 | 坂木原レム |
出版社 | 徳間書店 |
怪獣化できるために、
軍の秘密兵器的位置にあった女性、マミヤ。
戦後役目を終え、
社会で生き抜かなければならない彼女に
ふりかかってくる現実とは?
怪獣であり人間である彼女の生活とは?
ハートフルな怪獣ものです。
モンスターキネマトグラフのあらすじ紹介
戦時中、女性でありながら
怪獣になれるという特性によって、
日本軍の秘密兵器という
役割を担っていたマミヤは、
戦後任務を解かれ社会の中で
暮らしていましたが、周囲からの
冷たい視線に晒されていました。
戦前の社会が否定される中、
女性であるにも関わらず
「兵器」であった彼女には、
どうしても冷ややかな好奇が
注がれていたのでした。
そんなある日、
彼女の能力を聞き付けた映画制作者から
「怪獣役」としてスカウトされることに。
作品のコンセプトと
スタッフの真摯な姿勢に惹かれて
次第に撮影を楽しみ始めたマミヤでしたが……
モンスターキネマトグラフのネタバレと今後の展開は?
戦時中、「女性」でありながら
日本軍の兵士として前線にあったマミヤ。
彼女には、
「怪獣化」できるという特性があり、
それ故に秘密兵器としての
役割を与えられていました。
敵が襲来していく
極めて危険な状況下で
戦力だったのです。
そして、戦後。
居場所をなくしたマミヤは
市民として生きながらも
冷たい視線に晒される日々を
送っていましたが、
そんな彼女に映画制作者が目をつけます。
見世物になるのを
嫌がっていたマミヤでしたが、
監督たちの情熱に惹かれ、
いつしか撮影を楽しむように
なっていきました。
しかし、お目つけ役のナカジマさんに
「兵器なんだから行動を慎め」
と言われてしまいます。
悪気がない発言ではあるとしても、
散々意に染まぬ戦いを
強いられた彼女にとっては
まさに禁句と言えるものでした。
結局マミヤは
ナカジマさんの発言をきっかけに檄高し、
衝動のままに街を壊してしまいます。
落胆しきるマミヤは、
映画のお蔵入りを覚悟します。
しかし映画のスタッフは
何とか完成させ、マミヤも
作品を見る機会に恵まれるのでした。
モンスターキネマトグラフの読んでみた感想・評価
戦時中という情勢での緊迫したシーンから、
マミヤさんが冷遇されていた戦後へと続き、
シビアな作品かと思いましたが、
その後の展開がハートフルで、
良い意味で裏をかかれました。
怪獣が、それもきっちり「イメージ」に
かなう形で暴れているのに
まったく暴力的な展開にはならず、
むしろ心が温かくなる展開に
なっていく部分は極めて独特ですし、
冒頭を除くとマミヤさんが
「正義」を背負って怪獣化するという
面が少なく、大義名文抜きで
怪獣がどうやって
人間と共生していくのか、というテーマが
垣間見えた感じもありました。
もちろん、マミヤさんをはじめとする
登場人物の面々もとても魅力的で
好感が持てます。
例えば、政府側の関係者である
ナカジマさんです。
いかにも神経質な事務方といった彼は、
敵役にするには
もってこいのルックスであり、
災難の引き金になったこともあります。
多くの作品ではそれで
「終わり」になるところですが、
本作では、マミヤさんと
ナカジマさんの距離が縮まり
絆が生まれるまでの変化が
丁寧に描かれています。
こうした細やかな温かさは
本作特有の素晴らしい長所だと
言えるのではないでしょうか。
モンスターキネマトグラフはこんな方におすすめな作品!必見
いわゆる「怪獣もの」は
戦後を通じて娯楽の大定番ですが、
本作は有名な映画作品等々とは
かなり毛色が違います。
作品のジャンル的な性質上、
どうしても怪獣化してのドタバタ、
騒動、アクションが
作品の山になってきますが、
本質はむしろ静かな人間模様であり、
そうした日常的な作品を好む方に
向いていると思われます。
なお、基本的な画力も高く、
登場する人物は表情豊かに実感があり、
怪獣たちは迫力があり、作中の町並みは
いかにも戦後的な匂いが漂っています。
当たり前のようでいて、
こうしたことを徹底できる作品は
希少であり、そのため本作は
細かなディテールを追求する方にも
向いていると言えるでしょう。
また、作中の登場人物が
何だかんだでいい人揃いで、
当初は嫌な人っぽかったナカジマさんとも
心が通じ合い、マミヤさんのところに
同居人の女の子が来るなど、
話が進むごとに温かさが増してくるので
安心感があります。
「普通」の怪獣映画が苦手でも
無理なく読み進めることができるでしょう。